三浦市立病院
(神奈川県 三浦市)
小澤 幸弘 総病院長
最終更新日:2025/10/15


地域医療の充実を図り住民の暮らしを守る
神奈川県南東部にある三浦半島のさらに最南端を占める三浦市。東京湾と相模湾に囲まれ、豊かな自然に恵まれる一方で、人口減少と少子高齢化などの社会課題も抱えている。そうした三浦市でも住民が身近な場所で必要な治療を受けられるよう、地域医療の充実に努めるのが「三浦市立病院」だ。小澤幸弘総病院長は「新型コロナウイルスの感染拡大以降、当院の診療体制も変化し、以前よりもさらに地域全体で患者さんを診ていく連携に力を入れています」と話す。「近隣のクリニックや介護施設との連携はもちろん、今後は三浦半島に点在する基幹病院とその周辺の中小病院との連携など、三浦半島全体での地域医療も考える必要があります」。また疾患には診療体制を充実させ、24時間365日対応の救急医療、内科・外科による幅広い診療のほか、婦人科をはじめ各専門分野の診療科も備え、消化器がんの早期発見と治療、リハビリテーションなども行っている。「地域の皆さんが安心して暮らすための病院であり続けたい」と語る小澤総病院長に、同院の診療や地域連携での取り組みなどを聞いた。(取材日2025年9月4日)
地域の基幹病院としての役割をお聞かせください。

私は病院長・総病院長を20年近く務めていますが、就任当初から地域に必要な医療は病院完結でなく「地域完結型」でないと維持が難しいと考え、地域の医療機関・介護施設との連携を積極的に進めてきました。もちろん疾患はカバーできるよう内科・外科で幅広く診療し、近隣のクリニックや介護施設からのご紹介も多く受け入れています。救急医療に24時間365日対応し、整形外科と内科の両分野にまたがる患者さんもしっかりと全身管理して退院支援へとつなげます。さらに婦人科といった診療科も備え、消化器がんの早期発見と治療、リハビリテーションによる病気・ケガからの回復支援も行っています。また、より高度な治療が必要な場合は、横須賀市の3つの病院や横浜市の横浜市立大学附属市民総合医療センターへの紹介や移送を行うなど、連携し対応しています。
地域完結型の医療に向けてどう取り組まれていますか?

一つは前述した近隣のクリニックや介護施設からの患者さんの受け入れで、詳しい検査や入院治療が必要なときにご紹介いただいて地域完結をめざします。誤嚥性肺炎、心不全などによる高齢の方の救急搬送も増えていて、当院では24時間対応で治療にあたっています。さらにほかの急性期病院で治療を終えた患者さんが三浦市にお住まいだった場合、身近な当院でご自宅や施設で暮らせるように、理学療法士・作業療法士によるリハビリテーションも提供。47床の地域包括ケア病床はこうした急性期治療後の患者さんのほか、機能強化型在宅療養支援病院として在宅療養の患者さんの容体が急変したときの一時入院などにも活用しています。近年は訪問看護ステーションや在宅医療を行うクリニックも増えましたが、市内の施設や医療機関は以前から顔なじみのところも多く、三浦市医師会を通して関係づくりも進めてきたため、連携は非常にスムーズだと思います。
そうした地域連携で特に力を入れている点は何でしょうか?

すぐに医療DXとはいきませんが、可能なところから患者さんの情報を効率的に共有する仕組みづくりに着手しています。例えば当院の高齢者救急は介護施設からの搬送が多いため、施設に入所された方に事前に了解をいただいて、普段の健康状態などをまとめた冊子を施設から当院に毎月届けてもらい、電子カルテに入力する取り組みを始めました。これがあれば救急搬送された患者さんの状況を判断しやすく、適切で迅速な対応が可能になると考えるからです。退院カンファレンスでは、三浦市医師会が使っている多職種連携情報共有システムで共有した患者さんの情報を参考に、当院の地域連携室と病棟の看護師、地域のケアマネジャー、訪問看護師などがオンラインで話し合うことも多くなっています。今後は三浦半島にバランス良く点在する基幹病院と、その周囲の中小病院が連携し合い、各地域で医療・介護が完結できる協力体制も病院同士で考えていきたいですね。
看護師の人材不足対策にも地域で協力されると伺いました。

高齢の方が三浦市内に住み続けていただくための医療・介護の連携で、多職種をつなぐキーになるのは看護師だと考えています。ですから看護師に地域の事情や各職種の視点を学んでもらうことは大切で、当院では神奈川県の「かながわ地域看護師」の養成事業により、病院や訪問看護ステーション、介護施設などで働く看護師の人材交流を図り、現在は横須賀市の基幹病院の看護師が当院に出向してきています。こうした経験をもとに急性期から在宅医療まで幅広い領域に対応でき、多職種連携に強い看護師の養成をめざしています。一方、当院も所属する三浦市医師会では地域のクリニックや病院など多様な職場で働く看護師が交流し、知識をブラッシュアップして視野を広げ、互いが「顔の見える関係」をつくるクリニックナース事業にも取り組んでいます。今は看護師の職に就いていない潜在看護師にも参加を呼びかけて、地域で働くきっかけの一つになればと期待しています。
最後に三浦市の皆さんにメッセージをお願いします。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、以前のような診療体制への復帰はまだ途上ですが、当院がめざすのは従来どおり「地域の皆さんが安心して暮らすための病院」です。地域ニーズの高い高齢者救急、在宅療養支援、急性期病院からの受け入れなど、患者さんが必要な時に迅速に入院できる体制を整え、今後も地域包括ケアの中核となる機能を充実させます。加えて病気の予防や早期発見にも努め、高齢の方にはエックス線で骨密度を測定するDEXA法の検査結果などをもとに、骨密度不足の場合は運動や食事、筋力トレーニングの指導、薬の処方を行います。さらに特定健診、がん検診、人間ドックの拡充も検討中で、三浦市が運用するSNSアカウントでも健診・検診の重要性をアピールしてもらっています。当院の医師やスタッフは複数の病気がある高齢者の患者さんを包括的に診て、生活支援まで考える診療を心がけ、安心して暮らせる地域づくりに貢献していきます。

小澤 幸弘 総病院長
1981年新潟大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院で初期研修後、同大学医学部第一外科に入局、神奈川県内の病院を中心に消化器がんの治療に従事。神奈川県立がんセンターでは食道がんを専門とし、多数の症例を経験。1994年から横浜市立大学医学部救命救急センター(救急医学教室)講師を務め、1996年に三浦市立病院外科医長に就任。診療部長、副院長、病院長を歴任し、2010年より現職。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/国民健康保険特定健康診査とセットの場合1万7000円、後期高齢者健康診査とセットの場合1万4000円、一般的な人間ドックの場合4万4530円





