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公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院

(神奈川県 横須賀市)

沼田 裕一 管理者

最終更新日:2023/12/12

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地域に不足する医療分野を担う総合病院

未知の感染症だったCOVID-19が猛威を振るう中、「横須賀市立うわまち病院」では患者とその家族、医療従事者による退院セレモニーが行われていた。回復の喜びを分かち合うことで、心に希望の火を灯し、未来に向かって前進していくための取り組みだ。病院を後にする患者の背中を、しみいるような温かな拍手と優しいメロディがそっと包む。3年におよぶコロナ禍における同院の在り方と、コロナ禍以前から職員の心に息づくホスピタリティーが詰まっていた。通常診療とCOVID-19の治療の両立に奔走する職員の姿からは、「病院は病院らしく、専門医療と救急を重視する」とのモットーで病院運営をけん引してきた沼田裕一管理者の思いが院内に浸透していることもうかがえる。「市民が安心して暮らせる街」の一端を長年担い続ける同院について、沼田管理者に話を聞いた。(取材日2023年3月6日)

貴院の成り立ちと、地域における役割から教えてください。

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国立病院の統廃合を経て、2002年に「横須賀市立うわまち病院」が誕生しました。旧病院は経営難で廃院も検討されましたが、地域の強い要望で再スタートを切ったのです。私は開設前から管理者として着任し、運営を軌道に乗せるべく尽力してきました。院内のデジタル化を皮切りに、先進設備を積極的に取り入れ、診療科も開設時の14科から28科へと拡充しています。こうした取り組みは、すべて病院運営のモットーである「病院は病院らしく」に基づくもの。一次医療を担う診療所と、専門的かつ高度な治療を担う病院では、地域の中で果たすべき役割が異なります。当院の使命は、病院だからこそできる検査、治療、手術に特化し、地域に不足する医療分野をカバーすること。連携の要として、紹介、逆紹介の数を増やすべく努力してきたのはそのためです。しかし、近年、患者と医師の高齢化に伴って、数から質への転換が求められていると強く感じています。

数から質への転換とは、具体的にどういったことですか。

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これまでのように、紹介数・逆紹介数で病院の実績を判断するのではなく、急性期から慢性期までの患者さんに外来でも入院でも対応できる医療体制の有無で判断するのが望ましいということです。高齢化の波は開業医の先生方にも及び、引退される方も少なくありません。病院と患者をつなぐ一次医療機関が減るということは、患者さんにとって身近なかかりつけ医が減り、適切な紹介が受けられなくなります。また、患者さんも高齢化し、複数の疾患を合併している方が増えました。こうした背景を鑑みると、専門を超越し、一人を総合的に診る医師の存在がますます重視されるようになるでしょう。そこで私たちは2019年に総合診療センターを開設し、疾患や病態はもちろん、臓器も重症度も問わない総合診療を行う医師を育成してきました。手術中心の医療から患者さん中心の医療への転換を図り、すべての方が適切な医療にアクセスできる仕組みを作ってまいります。

総合診療部門と連携する各診療科の強みもお聞かせください。

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私の専門でもある循環器においては、心臓血管外科とハートチームを組み、虚血性心疾患をはじめとした心疾患に対して内科的・外科的な観点から治療方針を検討しています。これにより、薬、カテーテル、手術といった選択肢から個別最善の治療を選ぶことが可能になります。また、近く起こるといわれる「心不全パンデミック」への備えも進めています。心不全は、服薬と生活習慣を管理できずに再入院を繰り返しながら悪化していくため、多職種がそれぞれの視点で早期介入を図り、再入院を未然に防ぐことが重要なのです。運動療法や学習活動、生活指導に加え、福祉的・社会的な相談に対応するカウンセリングを含めた包括的心臓リハビリテーションにもより力を入れていく必要があります。また、心臓血管外科は、カテーテル治療が難しい閉塞性動脈硬化症に対する手術治療、QOLを著しく低下させる下肢静脈瘤に対する治療など、足の血管の治療も得意分野です。

高齢化に伴って懸念されるその他の疾患についてはいかがですか。

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がんは各診療科での手術をはじめ、抗がん剤による化学療法、高精度放射線治療のすべてに対応できる高度集学的治療が特色ですね。泌尿器科では、早期に手術支援ロボットを導入し、低侵襲で精度の高い治療を実践してきました。また、当院には放射線腫瘍治療を専門とする常勤医が2人おり、GRT(画像誘導放射線治療)、IMRT(強度変調放射線治療)、脳や肺・肝臓などへの定位照射といった多様な放射線治療を駆使した治療を行うことができます。高齢の方に多い膝や股関節の痛みには整形外科が人工関節手術をはじめとした治療を実施。関節リウマチを中心とした膠原病の治療も得意としています。リハビリテーション科では整形外科との連携による運動療法、各診療科と連携した手術後のリハビリを提供し、早期社会復帰をサポートしています。なお、100床ある回復期リハビリテーション病床では、急性期後の生活能力回復に向けて180日の入院が可能です。

ありがとうございました。最後に今後の展望をお聞かせください。

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まずは、2025年3月1日に予定している新病院「横須賀市立総合医療センター」の移転・開設に向けて、鋭意準備を進めてまいります。新病院は、現在の28診療科はもちろん、地域医療支援病院、救命救急センター、地域周産期母子医療センターといった主要機能を受け継ぎ、ハイブリッド手術室、PET-CT、ドクターヘリが離発着するためのヘリポートなどを備える予定です。今まで以上に急性期病院としての機能を強化し、地域医療機関との連携を密にして地域完結型医療の充実を図っていきたいですね。また、さらなる高齢化の進展、医療コストの増大、医師の働き方改革といった複合的な要因が重なれば、従来ほど気軽には専門医師にアクセスできなくなる可能性があります。総合診療の医師を含めた複数の医師によるチーム医療、入院管理の向上に力を入れ、問題に立ち向かっていきたいと考えています。

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沼田 裕一 管理者

1982年自治医科大学卒業後、熊本赤十字病院で研修を受けた後、7年間熊本県のへき地医療に従事。1991年から熊本赤十字病院循環器内科で冠動脈インターベンションを中心に診療を行う。2002年に横須賀市立うわまち病院の管理者に就任。医学博士、日本循環器学会循環器専門医。診療連携に関する論文、著書も多い。

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