医療法人社団葵会 AOI国際病院
(神奈川県 川崎市川崎区)
古川 良幸 病院長
最終更新日:2024/12/04
地域に必要な医療をワンストップで提供
京急大師線の終着駅、小島新田駅近くにある「AOI国際病院」は、前身となる病院から数えて70年以上もこの地で診療を続けている。地域の医療ニーズの変化に合わせて診療分野や設備もアップデート。現在は急性期医療に加え、回復期リハビリテーション、医療療養病床での長期ケアなど、地域の多様なニーズに応えるケアミックス病院となっている。古川良幸病院長は「救急から看取りまで、地域医療のほとんどをワンストップでまかなえる病院でありたい」と話す。「もちろん、より高度な治療が必要なら他の病院に紹介するなど地域連携も大切にしています。ただ、当院の南側は工場地帯で病院がないという立地条件を考えると、ここである程度の医療を提供することは重要と考えています」。事故などに対応する救急医療のほか、循環器内科および脳神経外科では心臓や脳の血管内治療も行い、消化器分野ではがんの早期発見・早期治療に努める同院。現在の診療面での特徴、今後の展望などを古川病院長に詳しく聞いた。(取材日2023年9月12日)
ケアミックスという機能も含め病院の特徴を教えてください。
当院の理念として「地域の皆様に信頼していただける、質の高い医療を提供します。」を掲げています。基本方針の一つに「救急医療から、一般急性期、回復期、慢性期、緩和ケア期までのシームレスな総合医療を提供します。」があります。多様な病状に合わせて、ICU6床、一般病棟114床、回復期リハビリテーション病棟60床、医療療養病床60床、障害者病棟60床、緩和ケア病棟28床を備え、地域にお住まいの患者さんをトータルに診ていくのがケアミックス病院としての当院の役割です。診療面でも救急車の受け入れ、脳や心臓の血管障害に対する血管内治療、ご自宅で自立した生活を送るためのリハビリテーション、長期療養を目的とした入院など、幅広く提供できるのが強み。近年はアクアラインを使った千葉県方面の救急車受け入れにも対応しています。また、当院は川崎市南端の海近くに位置し、近隣に多い工場からも多くの患者さんが来られています。
救急医療や急性期医療ではどのような強みがありますか?
当院の救急は中等症から重症の患者さんが対象で、各診療科担当医師により救急車に24時間365日対応し、ICUによる集中治療も可能です。同じ川崎区にある救命救急センター、隣接する幸区で多数の救急車を受け入れる病院と連携を図り、川崎市南部の救急医療の充実をめざしたいと思います。急性期医療では循環器内科は大学の専門の医療チームが担当し、不整脈と虚血(血液が十分に供給されない状態)、それぞれの治療に特化した部門があります。不整脈は薬および血管内から不整脈の箇所を治療するカテーテル・アブレーションによる治療が中心となり、虚血は心筋梗塞、狭心症、心不全などをカテーテルで治療します。また、脳神経外科も脳梗塞・脳内出血などの脳血管障害が主な対象で、カテーテルによる治療から開頭手術まで行っています。これらの血管内治療のために、当院では血管造影室を2室、外科手術と連携可能なハイブリッド手術室を1室設けています。
がん治療やそのほかの診療科についてお聞かせください。
当院では併設の健康管理センターと協力して、肺がん、消化器がん、乳がんなどの早期発見に力を入れています。さらに消化器内科と消化器外科は一体的な診療体制により、「的確な診断、適切な治療」をめざしています。大腸の内視鏡検査ではポリープなどを同時に切除するほか、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)により以前は開腹手術になっていた早期がんも内視鏡で治療可能です。また、当院には緩和ケア病棟もあり、がんが進行して有用な治療法がない場合も病気や治療に伴う苦痛の緩和に努め、在宅の患者さんのサポートも行っています。そのほか整形外科は大腿骨頚部骨折などの治療に加え、膝関節・股関節の軟骨がすり減って痛みを生じる変形性関節症の治療として人工関節置換術も得意としており、形成外科では良性・悪性皮膚腫瘍、熱傷、瘢痕(傷跡)、湿面外傷の治療に加え、眼瞼下垂、原発性腋窩多汗症にも対応しています。
リハビリテーションと療養はどんな方が利用されますか?
回復期リハビリテーション病棟は、脳神経外科や整形外科での治療後、自宅・施設に戻る前に身体機能の回復や日常生活動作の改善を図る目的で入院されます。院内だけでなく、近隣の病院からも患者さんをご紹介いただき、脳血管障害や大腿骨頚部骨折などの治療後の方が多くを占めています。リハビリテーションは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、管理栄養士など多職種が連携。退院後の生活を念頭に患者さんごとにプログラムを組み、365日トレーニングをサポートします。また、当院では心筋梗塞、狭心症、心不全などの治療後に行う心臓リハビリテーションにも力を入れ、体力回復や病気の再発防止にも努めています。医療療養病床は、脳血管障害による後遺症などで長期の入院加療が必要な患者さんが入院され、栄養管理や日常生活動作の維持・向上をめざすリハビリテーションを行います。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
前身の川崎社会保険病院から2013年に経営を引き継いだ際、当院は行政の要望を受け、急性期医療だけの病院から一般病棟と療養病棟を持つ病院に生まれ変わりました。その後も病床の追加や目的変更により、地域と時代の変化に応じた医療を行っています。さらに、昨年12月より、地域の高齢化に対応する為に医療療養病床120床の半数を障害者病棟に転換し、より重症の患者さんの長期入院を可能としています。川崎市の南端にある地域密着の病院として、この地に必要な医療を提供し続けたいですね。また、基本方針の「職員が誇りを持てる働き甲斐のある病院を目指します。」にあるように、看護師や医師にとって魅力のある「マグネットのような病院」になることも目標の一つ。これは職員の仕事に対する意欲が高まり、医療の質の向上にもつながるはずで、患者さんにとっても大いにメリットのある取り組みだと思います。
古川 良幸 病院長
1982年東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。同大学第二外科(現・ 外科学講座消化器外科分野)に入局し、同大学附属病院消化器外科で診療に従事。同大学助手、講師、准教授を歴任し、2011年に同大学附属病院副院長に就任。2017年から現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。専門は消化器外科。特に消化器がんの治療、緩和医療、大腸肛門機能障害など。