独立行政法人国立病院機構 村山医療センター
(東京都 武蔵村山市)
谷戸 祥之 院長
最終更新日:2026/04/02


骨・運動器疾患を中心に専門的な医療を提供
武蔵村山市において、骨・運動器疾患を中心に専門性の高い医療の提供をめざしているのが「村山医療センター」だ。大きな特徴である脊髄損傷治療をはじめ、脊椎側彎症や腰部脊柱管狭窄症などの脊椎・脊髄疾患、膝や股の人工関節手術、手外科までに対し、高度な専門性を要する診断から治療、リハビリテーションまでを一貫して提供している。加えて、先進的な医療の研究にも力を入れているほか、地域の中核病院として健康に関する啓発活動にも取り組んでいる。そんな同センターの院長で「自分の体を大事にすることに一番の責任があるのは自分自身です。私たちはそのお手伝いをしますので、一緒に頑張って健康寿命を延ばしていきましょう」と話す谷戸祥之先生に、現在の診療や研究の取り組みについて聞いた。(取材日2026年1月26日)
最初に病院を紹介していただけますか。

1941年に陸軍病院として発足し、その後、国立村山療養所、国立療養所村山病院を経て、2004年に独立行政法人国立病院機構の一つとなり、「村山医療センター」としてスタートを切りました。骨・運動器疾患に強みを持ち、国立病院機構の中で当該分野をけん引する存在となっています。また、地域に求められる医療を提供する身近な病院として、骨・運動器疾患に対する専門の医療のほか、腹部外科、鼠径ヘルニアの内視鏡手術も行う外科、内科、歯科などの診療も提供しています。中でも、整形外科の医師は19人と多く、脊椎・脊髄、関節、手の外科の各分野でそれぞれを専門とする医師がそろっているなど、充実した診療体制を整えています。当院での治療を求めて地方から来る患者さんも少なくありません。また、東京都の「地域リハビリテーション支援センター」となっており、幅広い患者さんにリハビリテーションを提供しています。
脊椎脊髄疾患の治療について教えてください。

脊椎脊髄疾患の手術は、患者さんにどうしても大きな侵襲を与えてしまうことがありますが、そのような中で低侵襲の手術を積極的に取り入れています。その一つが、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対する「UBE」と呼ばれる内視鏡手術です。従来の手術では背中に4~5センチの皮膚切開で行うのに対し、「UBE」では5~8ミリの皮膚切開を2ヵ所で行います。切開したところの片方からカメラを入れ、もう片方から手術器具を入れて神経の圧迫の除去を図ったり、痛みの原因となっている骨の部分を削り取ったりします。この術式のメリットは、患者さんの体にかかる負担が少なくなることです。傷が小さいのはもちろん、背骨の周りの筋肉のダメージが少なくなることで、手術後の痛みが少なく、早期退院や早期の社会復帰が期待できます。同じ病気に対する治療で同じ手術成績が得られるのであれば、侵襲が少なく、入院期間も短いに越したことはないと思います。
ほかにも力を入れて取り組んでいることはありますか?

もう一つが、難治性慢性疼痛に対する「脊髄刺激療法(SCS)」です。これは、脊髄の近くに電極を設置し、微弱な電気刺激を与えることで痛みを和らげることをめざす治療方法です。この治療の良いところの一つは、いわゆるお試しができることです。患者さんには最初、1週間程度入院してもらい、細い電極を挿入します。その上で、体の外から実際に電気刺激を送り、この治療がその患者さんにとって適しているのかを評価します。適していれば刺激装置の本体を体内に埋め込み、適さなければ電極を抜いてほかの治療方法を検討します。これは、痛みの原因を根本的に治療するわけではないことに加え、痛みがまったくなくなるわけではありません。しかし、痛みの強さを半分程度に抑えることがめざせ、日常生活の質の向上が期待できます。例えば、高齢や病気などで全身状態が悪く、全身麻酔の大きな手術ができない場合には、とても有用な選択肢になると考えています。
研究にも力を入れていると伺いました。

今、一番力を入れているのが「iPS細胞を用いて脊髄損傷にアプローチする研究」です。これは慶應義塾大学病院と共同で行っています。脊髄損傷で動けなくなった患者さんは、「それでも歩けるようになりたい」「少しでも可能性があるのなら」と考える人が多くいます。そういう患者さんに希望を与えるためにも、こういった研究を進め、実用化をめざしていかなければならないと思っています。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

まず、骨粗しょう症予防の啓発活動ですね。武蔵村山市では、骨粗しょう症検診の受診率が1割に満たないんです。そこで近隣の病院と一緒に、大型ショッピングモールで10月に「2026世界骨粗しょう症デー」というイベントを行う予定です。加えて、骨粗しょう症予防に限らず運動は重要ですから、当院では近隣の一般の人を対象に「ピラティス教室」も計画しています。このような地域の活動には、今後もさらに力を入れていきたいと考えています。また、当院の建物はだいぶ老朽化していますので、建て替えに向けて計画を進めています。さらに、2030年代には近くにモノレールの駅ができることが決まっていますので、いずれは地域の健康増進の中心となるような施設にしていきたいと考えています。そして、自分の体を大事にすることに一番の責任があるのは自分自身です。私たちはそのお手伝いをしますので、一緒に頑張って健康寿命を延ばしていきましょう。

谷戸 祥之 院長
1989年医師免許取得。1993年7月から1年間、当時の国立村山病院で大谷清院長に師事。その後、慶應義塾大学病院、藤田保健衛生大学病院、防衛医科大学校などを経て、2013年に手術部長として再び村山医療センターに赴任した。2017年より副院長、2020年より現職。「自分自身がここで学んだように、技術の裾野を広げる教育機関としての役割も果たしたい」と話す。日本整形外科学会整形外科専門医。





