社会医療法人財団大和会 東大和病院
(東京都 東大和市)
野地 智 院長
最終更新日:2024/06/18
急性期医療で市民病院の役割を果たす
1951年の開設以来、東大和市の市民病院的な立場で地域の発展を医療の面から支えてきたのが、「東大和病院」だ。急性期医療を中心に提供している同院は、循環器疾患、消化器疾患、脳神経疾患を3本柱に幅広い診療科を備え、一般的な病気から高度で専門的な治療を必要とする病気まで対応している。脳や心臓・血管、消化器、呼吸器などには、臓器別の専門部門も設置している。「内科と外科の医師が密に連携して、一人ひとりの患者さんにとってベストとだと考えられる治療方法を決定しています」と野地智院長。また最近では新たに呼吸器外科の医師や不整脈専門の医師を迎え、地域の医療ニーズに積極的に応えている。24時間365日対応する二次救急や併設のクリニックでの一般外来診療、地域に必要な医療の提供に努めている同院について、野地院長に話を聞いた。(取材日2023年12月18日)
こちらは、どのような役割の病院ですか?
当院は1951年に開設されました。現在も東大和市内では数少ない急性期病院であり、地域の中核病院として市民の皆さまのための医療に取り組んでいます。隣の武蔵村山市にある同法人の武蔵村山病院と連携し、当院が急性期医療、武蔵村山病院が慢性期医療にも対応するケアミックス型と機能分担をしながら、両市合わせて約16万人が居住する地域の市民病院のような役割を果たしています。当院は、心臓血管センターや消化器センター、脳卒中・脳神経センター、呼吸器センターを設置し、ほかに整形外科、糖尿病・内分泌内科、乳腺外科、形成外科、泌尿器科などを中心に救急センターと協力し診療しています。一方で、当院にない眼科や耳鼻咽喉科、小児科、産婦人科などの診療を武蔵村山病院で行っており、両病院で補い合う形で協働しています。紹介状をお持ちでない患者さんには、目の前にある併設の東大和病院附属セントラルクリニックで外来診療を行っています。
特徴をお聞かせください。
先述しましたように、臓器別に内科・外科を統合し診療部門を持っていることが最大の特徴です。特に心臓血管や脳神経領域は24時間365日体制で対応しています。心臓血管センターでは、大動脈瘤に対するステントグラフト治療や低侵襲心臓手術、経皮的冠動脈インターベンション、不整脈に対するカテーテルアブレーション、末梢血管に対する血管内治療などを積極的に行っています。脳卒中・脳神経センターでは脳血管内治療を、また消化器センターや呼吸器センターでは内視鏡や腹腔鏡、胸腔鏡を駆使した低侵襲治療を積極的に行っています。整形外科では、特に外傷や手外科、脊椎・脊髄疾患に力を入れ取り組んでいます。乳腺疾患や糖尿病、ペインクリニックについても専門の医師が対応しています。
救急医療についてはいかがですか?
急性期病院である当院にとって救急は生命線です。当院は東京都の二次救急指定病院として24時間「断らない救急」を心がけています。昼間は救急を専門とする医師が初療にあたり、必要に応じて専門の各診療科に引き継いでいます。夜間は、当直制で各診療科の医師が担当しています。東京都CCUネットワークに参加しており、心筋梗塞の患者さんなども積極的に受け入れています。また、救急救命士を採用しており、病院救急車を利用した救急搬送のほか、救急科外来での診療補助や救急要請の電話対応などを担っています。病院救急車には、搬送依頼元のクリニックで測定した心電図のデータをリアルタイムで当院に転送できるモービルCCU機能が搭載されています。当院の循環器内科の医師が転送された波形を解析し、救急車が当院に到着する前に心臓カテーテル治療などの準備を行うことができるため、治療開始までの時間が短縮され、救命率の向上がめざせます。
病院を運営するにあたり心がけていることはありますか?
患者さんファーストを心がけ、どの診療科でも、できる限り低侵襲の治療を安全かつ安心に提供することをめざしています。加えて接遇も大切にしています。また、最近ではペイシェントフローマネジメントに注力しています。これは患者さんの情報を入院前に把握し、問題があれば解決に早期から取り組み、退院後までをマネジメントすることです。具体的には患者支援センターを中心に、医療ソーシャルワーカーや専任の看護師が連携し、患者さん一人ひとりやそのご家族をサポートしています。また、当院は東京都の紹介受診重点医療機関に登録されており、地域の医療機関との連携にも力を入れています。患者さんには、最初はかかりつけ医に相談してもらい、必要であれば当院を紹介していただき、治療が終わったら速やかに紹介元の先生に戻っていただく。そうすることで、当院を受診したときの待ち時間も少なくなるなど、患者さんにもメリットがあると思っています。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。
大きな動きとしては、2024年度よりロボット支援手術を開始します。手術支援ロボットの導入は済んでおり、5月以降に消化器のロボット支援手術から開始し、その後ほかの診療科にも広げていく予定です。これにより、より一層地域医療に貢献できる体制を維持していくことを重視しています。ハード面では、当院は開院から長い年月がたち、医療機器や検査機器などの急速に発展する先進医療への対応が困難になってきていることや、患者さんに不便をかけているところもあります。まだ構想段階ですが、近い将来の新築も視野に入れて検討していますし、同法人で現在シャトルバスでつながっている武蔵村山病院とのさらなる連携強化も図っていきます。今後も、高度先進医療を積極的に取り入れ、より良い急性期病院をめざし、地域の皆さまを支えてまいります。
野地 智 院長
1985年名古屋大学卒業後、東京女子医科大学心研循環器外科に入局。国立大阪病院(現:国立病院大阪医療センター)、山梨県立中央病院に出向後、 聖隷浜松病院心臓血管外科部長、 国立舞鶴病院心臓血管外科医長、東大和病院副院長などを経て、2015年より現職。日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医、日本外科学会外科専門医。医学博士。