医療法人社団共済会 共済会櫻井病院
(東京都 府中市)
櫻井 誠 理事長
最終更新日:2022/02/01
急性期と在宅を結ぶ地域医療の中心的存在
府中市をはじめ近隣の調布市、立川市、八王子市からも広く患者を受け入れ地域医療に貢献する「共済会櫻井病院」。1964年に櫻井誠理事長の父が立ち上げた「桜井医院」が前身であり、長く地域の人々の健やかな生活を支えてきた。内科を中心に整形外科、外科、小児科など広く診療を行うほか、一般病床78床、地域包括ケア病床18床、療養病床16床を用いた入院診療、さらには、健康診断や人間ドックを通じて予防医療にも注力している。また、大規模病院での急性期治療を終えて在宅復帰をめざす人に向けての回復期の入院や、在宅医療部門と訪問看護や訪問リハビリテーション、福祉介護の地域包括支援センター、居宅事業所等の法人内の関連施設との連携で、地域の人がその人らしく暮らせるよう適切なサポートを実践。「規模は拡大したが、当時の診療所マインドともいうべき診療姿勢は今も変わらず、心温まる安らぎの医療をめざしている」と話す櫻井理事長に、病院での取り組みについて聞いた。(取材日2022年1月4日)
地域における病院の役割については、どのようにお考えですか。
日々の診療や、スタッフの声からくみ取った地域のニーズに沿って、小規模なクリニックや大きな病院にできない部分を担っていくのが回復期・慢性期の中規模病院である当院の役割です。大きな病院で急性期の治療を終え、退院はしたものの家に帰るにはまだ不安がある、といった方を受け入れることが多いですね。自宅へ戻るプロセスや、必要な支援、望ましい介護のあり方は、患者さんの希望や生活環境によって大きく異なります。当院を含む法人内には地域包括支援センターや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などがありますので、当院渉外部スタッフや看護師などが患者さんやそのご家族のお話をじっくり伺い、当院での回復期や療養期の入院はもちろん、関連施設での医療福祉サービス、また、他医療機関での継続医療をしていただくなどの選択肢も視野に入れながら、その人に合わせたサポートを行っています。
今現在、新しく取り組んでいることはありますか?
循環器内科の医師である私の息子たちが特定機能病院で身につけたスキルを持って、リハビリスタッフとともに心臓リハビリテーションを提供できるように準備を進めています。脳卒中・心臓病後はリハビリをすることによって在宅療養に復帰できるようにすることが大切であり、そこを担っていくことが当院の責務だと思っています。今後、この地域では心不全パンデミックが起こることが予想され、私が会長を務める府中市医師会でも会員の先生とともに、多摩総合医療センターや榊原記念病院の先生によるセミナーや勉強会を開催しています。開業医だけではなく、訪問看護師、調剤薬局の薬剤師、リハビリスタッフ、ケアマネジャーなど多職種が集い、全員が心不全に対する認識や知識を持てるように、府中市医師会としても活動を行っていますので、その良い見本となるよう心臓リハビリにも力を入れていきたいと考えています。
在宅医療や認知症の診療にも力を入れているそうですね。
医療従事者として、当院を信頼して長く通ってくださっていた方を最後まで診ていきたいという思いから、開業医の先生方や訪問診療を専門とする施設の協力を仰ぎながら、当院もできる範囲でしっかり支えていきたいと考えております。また、在宅医療を受けられている方や当院に通院している方に専門的な医療が必要になった場合に備えて、近隣の病院との連携もこれまで以上に強化していく予定です。認知症については、まだまだこの地域はシステムができあがっておらず、ご家族の疲弊がかなりあるのが現状です。独居や老老介護も多い中、患者さんもご家族も無理なく生活できるようにご家族と話し合う時間を十分にとり、病院の持つ多目的な施設を利用して自分たちの思いを話せる環境をつくってあげたいですね。在宅医療も認知症も医療機関、行政、福祉事業者、訪問看護ステーションがそれぞれの責任を果たしつつ、地域全体での体制づくりをしていきたいですね。
地域医療を支えるにはスタッフの声が不可欠と伺いました。
病院は、ともすればトップダウン型の組織になりがちですが、それでは真に地域のニーズに寄り添った医療はできないと私は考えています。患者さんの話を直接聞く機会が多いスタッフの意見こそ地域の人の声を代弁するものであり、真摯に耳を傾けるべきです。トップの指示であっても臆せず「ノー」と言ってほしい、立場を気にせず意見を発信してほしいと日頃からお願いしています。実際、若い人の考え方はとても柔軟で、ハッとさせられることも多いんですよ。新型コロナウイルスの感染疑いがある発熱患者さんの受け入れに際しても、真っ先にスタッフにコンセンサスを取りました。全員が「地域のためになるならやるべき」と言ってくれて、非常にうれしく、誇らしかったですね。患者さんの安全と同じようにスタッフの安全に気を配り、「ここにいれば安心」と言ってもらえる病院にしていくことが私の使命です。
最後に今後の展望と地域の人へのメッセージをお願いします。
ここは交通アクセスは良いのですが多摩川が近く水害の可能性が非常に高いため、行政と相談をして、将来的には医療用施設だけでなく災害時に地域の人を受け入れることのできるスペースを確保した施設にしたいと考えています。それを実現するための移転・改築を計画中です。本来病院はそういう形であるべきだと思っているので、そういった形で自分がお世話になったこの地域の人々に恩返しすることが私の役目です。私はここで育って医師になり、子どもたちも同じ道を歩んできました。これは地域の人の支えがあってのことなので、その恩返しとして地域のお役に立てるような医療を提供していきたいのです。新型コロナウイルス感染症をきっかけに医療が大きく変わろうとする中で、新しい医療の形を模索するリーダーとして道をつくっていくことが重要だと考えていますから、そこの役目をしっかりと果たしていきたいです。
櫻井 誠 理事長
1980年杏林大学医学部卒業、1984年慶應義塾大学大学院を修了。翌年、杏林大学医学部付属病院の第3内科に入局し、糖尿病の治療をはじめ広く内科疾患の診療にあたる。1990年から共済会櫻井病院の副院長を務め、1998年に理事長に就任した。府中市医師会の会長として、地域医療の円滑化にも注力。「患者一人ひとりに手づくりの医療を」をモットーに、行政や医療機関、福祉事業所などの連携強化を図っている。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック(半日コース):4万638円(税込み)