医療法人社団共済会 共済会櫻井病院
(東京都 府中市)
櫻井 誠 理事長
最終更新日:2024/12/05
地域で果たす役割を考え、常に最善を尽くす
府中市医師会の理事としても活動する「共済会櫻井病院」の櫻井誠理事長。コロナ禍の前後を通じて地域医療の先頭に立ち、あるべき医療の姿を追求してきた櫻井理事長は、これからの日本で求められる医療体制について「地域が何を求めているか」をベースに自院の在り方を考えることが重要だと話す。実際、府中市では、医師会が先導する形で地域に必要な医療をピックアップし、各医療機関がそれぞれの特性と強みを生かして診療にあたる体制づくりが進んでいるという。地域医療への思いや、地域において同院が果たす役割などについて話を聞いた。
(取材日2024年11月14日)
まずは、病院の歴史から教えていただけますか。
1964年に私の父が立ち上げた「桜井医院」が前身で、私は副院長を経て1998年に跡を継ぎました。父の代から長いお付き合いのある患者さまも多く、私の子どもたちもここで生まれて育って医師になりましたから、「地域の皆さんのおかげでここまで来れた」という感謝の気持ちが非常に強いです。一般的な医師と患者は、「医師が患者を診る」関係性ですが、「患者さんを診させていただく」のが私のスタンス。当院を信頼して通院してくださっている患者さんたちのため、命を見落としてはいけないと考えて真摯に診療しています。医療者として自分に問い続けなければいけないのは、「誰がための医療か」ということ。患者さんがいてこそ自分たちが存在できていることを忘れてはいけません。このことは、折に触れてスタッフにも伝え、全員で常にベストを尽くしています。
地域における病院の役割については、どのようにお考えですか。
当院は回復期・慢性期の中規模病院で、1998年内科を中心に整形外科、外科、小児科など広く診療を行うほか、一般病床78床、地域包括ケア病床34床を用いた入院診療、健康診断や人間ドックを通じた予防医療にも注力しています。ただ、今後の地域医療は、各医療機関が自院の特性や機能によって診療する対象を制限するやり方では成り立ちません。地域で増えている疾患、今後増えていくであろう疾患を軸に、自分たちに何ができるかを考える必要があると思っています。高齢者が増加する府中市において、現在府中市医師会が重視している疾患は、心不全や認知症、慢性腎臓病(CKD)です。これらに対して、どの医療機関も一定の知識を持ち、早期発見と早期治療につなげていくことが、健やかな地域を守ることにつながると考えます。
心不全に対する取り組みを教えてください。
今後、この地域では心不全パンデミックが起こることが予想されています。府中市医師会では、会員の先生方とともに、多摩総合医療センターや榊原記念病院の先生によるセミナーや勉強会を開催して知識の啓発を図ってきました。開業医だけではなく、訪問看護師、調剤薬局の薬剤師、リハビリテーションスタッフ、ケアマネジャーなど多職種が集い、全員が心不全に対する認識や知識を持って対処できるようにする必要があるでしょう。その中で当院の責務は、脳卒中・心臓病後の適切なリハビリテーションによって、在宅療養に復帰できるようにすることです。循環器内科の医師である私の息子たちが、特定機能病院で身につけたスキルを生かし、リハビリテーションスタッフとともに心臓リハビリテーションを提供しています。
認知症やCKDについてはいかがですか。
認知症の進行を遅らせることや記憶障害や認知障害の改善を図れるような薬が出てきたことは福音ですね。ただ、現在の薬は、アルツハイマー型認知症で、かつ「MCI」とよばれる軽度認知障害の段階の人だけが対象です。しかも、MCIの段階では日常生活への支障が少なく、自分も周りも気づかないことが少なくありません。府中市では、自院に通院している患者のMCIの兆しを早期に見つけられるよう、MCIの診断につながる症状の事例を地域の全医療機関で共有する取り組みを進めています。CKDも同様に、増加が予想される中でどう専門の医師につなげていくかが問われる段階です。進行を遅らせて合併症に至らないようにするため、いかに兆候に気づいて専門の医師の受診を勧奨できるかがカギになるでしょう。当院も、これらの疾患に対する知識を深め、適切なアドバイスと的確な連携ができるよう努めてまいります。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
地域が必要とする医療の一端を担うとともに、法人内の地域包括支援センターや訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などと連携して急性期後をサポートしてまいります。当院を信頼して長く通ってくださっていた方を最後まで診ていけるよう、訪問診療にも引き続き力を入れていきたいですね。訪問診療については、この先院長職をおりる日が来てもできる限り続けていきたいと思っているんですよ。プライベートな空間に入ることを患者さんが許してくれるのは、長年にわたって築いてきた信頼関係の賜物で、とてもありがたいことです。開業医の先生方や訪問診療を専門とする施設に協力を仰ぎつつ、恩返しのつもりでできることをやっていくつもりです。規模が大きくなっても、診療所マインドともいうべき初心を忘れず、患者さんのために最善を尽くす病院であり、医師でありたいですね。
櫻井 誠 理事長
1980年杏林大学医学部卒業、1984年慶應義塾大学大学院を修了。翌年、杏林大学医学部付属病院の第3内科に入局し、糖尿病の治療をはじめ広く内科疾患の診療にあたる。1990年から共済会櫻井病院の副院長を務め、1998年に理事長に就任した。府中市医師会の理事として、地域医療の円滑化にも注力。「患者一人ひとりに手づくりの医療を」をモットーに、行政や医療機関、福祉事業所などとの連携強化を図っている。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック(半日コース):4万638円(税込み)