医療法人社団清智会 清智会記念病院
(東京都 八王子市)
横山 智仁 理事長
最終更新日:2025/07/01


高齢者救急を中心に患者と家族を支える
二次救急医療機関として、24時間365日体制で救急医療を行っている「清智会記念病院」。2024年1~12月には5300台以上の救急車の受け入れを昼夜問わず行った。いわゆるたらい回しになりやすい高齢者救急に注力し、独居、日常生活動作の低下、認知症などの患者もベッドに空きがある限り受け入れる。骨折、消化管出血、肺炎など幅広い疾患に対応。治療後は可能な限り元の生活に戻れるよう積極的にリハビリを実施している。外来通院が困難になった患者への在宅医療や訪問看護、レスパイト入院にも取り組む同院。救急を入り口にした急性期治療からリハビリ、在宅医療までの包括的な医療で患者や家族の不安がない状態で療養できる流れを作ることをめざしている。救急を入り口に外来、入院、手術、訪問診療まで包括的な医療を提供したいと話す横山理事長に、同院の取り組みについて聞いた。(取材日2025年4月8日)
力を入れて取り組む救急医療について教えてください。

当院の大きな柱である救急医療では、社会的にも問題になっている高齢者救急を中心に取り組んでいます。症状は、骨折、消化管からの出血、心不全、肺炎など多岐にわたり、整形外科、消化器内科・外科、一般内科など広い分野で、できるだけお断りすることなく対応し、独居、日常生活動作の低下、認知症に該当する方もベッドがある限り受け入れています。この地域の救急医療は、当院のような二次救急病院と三次救急病院である東京医科大学八王子医療センターが連携することで成り立っています。高齢の患者さんで、数値や状態から考えれば三次救急の対象になる場合でも、ご本人やご家族の意思で人工呼吸器などを含めた積極的な延命措置を希望しないときは私たちがお引き受けし、適切な処置にあたっています。三次救急病院が医療過剰になって疲弊してしまわないように、二次救急病院としてリーダーシップを発揮し、地域の救急医療で活躍していければと考えています。
高齢者救急だからこそ気をつける点はあるのでしょうか。

私が医師になった20年前と違うのは、高齢の患者さんが搬送されてきたら、「お一人暮らしですか?」「介護保険は持っていますか?」と医師が聞くようになったことです。入院の時点で、この患者さんは良くなったらすぐに自宅に退院ができそうとか、リハビリをしてから退院したほうがいいということを頭の中である程度想定するのが最近の医療です。高齢者救急では初動の段階でそこまで考えておかないとすべてが後手になり、すぐに満床になって必要な患者さんに必要な医療を届けられなくなってしまいます。なるべく多くの患者さんを受け入れ、自宅に帰れない人は早期のリハビリ介入や介護施設へつなげることも当院の重要な役割です。当院では、2025年の夏に向け18床の増床を計画しています。より多くの救急患者さんを応需できるようにするとともに、ご家族が安心して自宅で介護できるようレスパイト入院も積極的に行っていく予定です。
高齢の患者さんの受け入れ後はどのように対応していますか?

高齢者救急だけではなく、すべての医療は助けられる命を救うことが大前提になるわけですが、命を救ったとしてもいろいろな管につながれてただ天井を見て生きているというのは、生命として望まれる姿とは言えません。元の生活に近い状態に戻して差し上げることが一つの目標になる中で、大切になってくるのが看護師やリハビリスタッフの活躍です。外来、入院、高齢者救急に対応していると、やはり外来通院が困難になってくる人も出てきます。そこで、かかりつけの患者さんへのサービスとして、当院でも在宅診療や訪問看護も少しずつ始めており、将来的には訪問リハビリにも取り組めればと思っています。救急という入り口だけではなく、リハビリや在宅医療までつなげられる包括的な医療を展開することで、退院されるときに、清智会が何かあったらバックアップするから勇気を持って家に帰ろうねと、背中を押してあげられるようにしていきたいです。
そのほかの診療についての強みや特徴はありますか?

消化器内科は、私の専門である胆膵内視鏡によるERCPを含む処置を数多く行っています。高齢化に伴い総胆管結石からの急性胆管炎が増えていますが、当院では100歳の患者さんに対しても治療を行っていますので、胆膵内視鏡は一つの特徴になると思います。加えて、吐血や下血の患者さんはできるだけ断らないように、緊急の処置も含めて消化器系の医師全員で対応しています。また、2025年4月には糖尿病を専門とする医師が加わり、より専門的な入院中の合併症の管理ができるようになりました。今後は教育入院やインスリンへの切り替えのタイミングなど糖尿病患者さんのフォローにも取り組んでいきたいです。さらに耳鼻咽喉科では東京医科大学八王子医療センターの先生に毎日来ていただいており、近隣の病院やクリニックからのご紹介患者さんも増えてきました。何かあれば同センターにご紹介できる体制も整えている点も強みになっています。
最後に、地域の方々にメッセージをお願いします。

団塊の世代が高齢者になり、患者さんの高齢化は進みます。私たちにできることは限られていますが、引き続き丁寧に高齢者医療に取り組んでいきたいです。当院では新型コロナウイルス流行時も対面での面会を続けてきました。やはり患者さんと家族が実際に顔を合わせて、お話ししたり触れたりしていただくほうが、患者さんの家に帰りたいという意欲が高まると思います。病院のスタッフに大丈夫と言われるよりも、家族が直接会うことで大丈夫だなと感じてほしいと思います。これからも短い時間でも面会をすることにこだわりたいです。外科では、この春からスタッフが増えたので、今後はさらに多くの手術を行っていく考えです。地域の先生方におかれましては、特におなかの症状で入院や手術が必要そうな患者さんがいらっしゃいましたら気軽にご紹介ください。地域にお住まいの方でおなかに限らず気になる症状のあるときは、紹介状がなくても直接ご来院ください。

横山 智仁 理事長
2003年に東京医科大学を卒業。同大学八王子医療センター、杏林大学の高度救命救急センターで救急・麻酔分野を学び、消化器内科に転科し研鑽。2012年より清智会記念病院に勤務、2014年より現職。日本救急医学会救急科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本消化器病学会消化器病専門医。同大学八王子医療センター救命救急・消化器内科兼任講師。