医療法人社団 哲仁会 井口病院
(東京都 足立区)
勝又 健次 院長
最終更新日:2024/06/07
地域の消化器疾患診療と人工透析を担う
北千住駅から続く北千住駅前通りを歩くこと約3分。にぎやかな通りから少し入ったところにあるのが、「井口病院」だ。開院から70年以上にわたって地域とともに歩み、人々の健康を支えて来た同院は、時代の変遷に合わせながら地域に必要な医療を提供。現在は、消化器疾患と人工透析を中心に、住み慣れた地元で必要な医療を受けたいと希望する患者のニーズに応えることをめざしている。そんな同院の院長に2024年4月に就任し、「地域の方々に頼りにしていただける病院にしていきたいと考えています」と話す勝又健次院長に、同院のことや抱負などを聞いた。(取材日2024年5月8日)
先生が院長に就任してから、診療体制などに変化はありましたか?
私は今年の4月より院長を務めていますが、診療体制に変化がありました。これまで当院は、約70年にわたって地域密着型の病院として診療を行ってきました。もともと地元の人たちには整形外科の病院というイメージが強いですが、現在は整形外科の診療は大幅に縮小し、消化器系と人工透析の腎臓内科を中心に診療しています。これまでも消化器内科では、早期の大腸がんに対するポリープや内視鏡によるESD(粘膜下層剥離術)や、肛門外科では痔など肛門疾患の手術に取り組んできました。そして、4月より私を含め消化器外科を専門とする医師が2人加わったことで、鼠径ヘルニアをはじめとする良性疾患や、食道や胃、大腸などのがんの手術にも対応できるようになりました。整形外科やかかりつけとしての内科一般診療は、当院の外来と健診の機能を分離して昨年の11月に北千住駅西口のすぐそばのビルにオープンした系列のクリニックで対応しています。
どのようなことに力を入れていますか?
まずは、消化器の良性疾患の手術です。需要の多い鼠径ヘルニアの他、胆石や胆嚢炎などに対して、腹腔鏡で低侵襲手術を行うことで、できるだけ短い期間で退院していただき、早期に社会復帰してもらうことをめざしています。加えて、系列のクリニックでは胃や大腸の内視鏡検査を行っていますので、悪性疾患が見つかった場合には、当院で治療できるものに対しては受け入れてしっかり対応していきたいと考えています。私は、これまで大学病院で40年以上診療していましたし、消化器外科のもう一人の医師も25年以上のキャリアを持つベテラン医師です。それらの経験も生かして、大学病院と同等レベルの医療を提供していきたいと考えています。手術などは、やはり大きな病院を望む人もいると思いますが、逆に地域からあまり出たくないという患者さんもいますので、そういう方たちの受け皿としてお役に立ちたいです。
他に、地域の人たちに知ってほしいことはありますか?
私は潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患も専門としています。これらの病気も重症化すると手術が必要で、当院でも軽症から中等症程度までの患者さんの診療が可能です。痔ろうを併発する人も多いですが、その手術は当院でも受けることができます。さらに、憩室出血や腸捻転、慢性便秘で手術が必要になる場合専門的に診ることができる施設は少ないですが、それらの病気に対しても豊富な経験を持っています。他に、例えば消化器のがんが見つかったりそれが転移していたりという方の中には、いろいろと説明を受けて、自分でも情報を探して勉強して、それでもどうすれば良いのかわからないという方もいると思います。他施設で消化器の悪性疾患、転移や再発という診断を受けた際にセカンドオピニオンという形で診療を受けることも可能です。当院で治療を受ける、受けないにかかわらず、私の知識や経験を生かしてアドバイスもしていきたいと考えています。
病院の運営や診療を行う上で、大切にしていることは何ですか?
一番に考えているのは、患者さんの満足度を上げること。当院の建物は非常に古いですが、例えば、1階フロアなどはかなりきれいに改装しました。所々に絵を飾り、病気になるとトイレや洗面も非常に気になりますが、それらもきれいに改装。古い病院ではあるものの、患者さんに少しでも快適に過ごしてもらえるよう努力しています。また、診療では患者さん一人ひとりに合わせて話をすることを心がけています。病気についてスムーズに理解できる人もいれば、そうでない人もいます。また、100%のことを知りたいという人もいれば、70%くらいでよい、都合の悪いことはできるだけ聞きたくないという人もいます。それらのことも考慮して、患者さんやご家族の反応も見ながら話すようにしています。良性疾患であっても、手術を受けるのは患者さんにとって大きなことですから、できるだけ安心してもらえるよう心がけています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
まず、この地域の消化器疾患であれば、治療の難易度の高いものを除き、できるだけ広い守備範囲で対応し、地域の方々に頼りにしていただける病院にしていきたいと考えています。現在は手術が必要になると都心の病院に行っている人が多いと思いますが、そこまで行かなくても治療ができる病気もたくさんありますし、そのほうがご家族にとってもメリットが多いのではないでしょうか。同時に、在宅療養をしている方のレスパイト入院にも対応するなど、古くから地域に密着してきた病院としてのスタンスも大切にしたいと思っています。そして、繰り返しになりますが、当院は消化器疾患と人工透析を中心とした病院に生まれ変わりました。食道から胃、大腸、肛門、胆のう、肝臓、すい臓まですべての疾患に対応し、肛門は日帰り手術も行っています。おなかが痛い、下痢が治らないなどの症状でお困りであれば、しっかりと診察させていただきますので、ぜひお越しください。
勝又 健次 院長
1984年久留米大学卒業。国立がんセンター中央病院国内留学、帝京大学医学部附属溝口病院准教授、東京医科大学消化器・小児外科学分野教授、同大学炎症性腸疾患(IBD)・良性腸疾患センター長などを経て、2024年より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。医学博士。