侵襲を抑えて痛みの改善をめざす
脊柱管狭窄症のカテーテル治療
医療法人社団苑田会 苑田第三病院
(東京都 足立区)
最終更新日:2024/08/06
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- 保険診療
脊柱管が狭くなることによって手足に痛みやしびれが生じる脊柱管狭窄症は、加齢とともに増える疾患の1つだ。「年だから」と諦めてそのままにしていると、症状が悪化してあらゆる姿勢でしびれや痛みが生じたり、排尿・排便が困難になったりと、日常生活に大きな影響を及ぼすことがある。保存療法で効果が見られず、しだいに歩ける距離が短くなっていく場合、手術を検討したい。「苑田第三病院」に設置されている東京脊椎脊髄病センターでは、星野雅洋院長を筆頭に、脊柱管狭窄症に対する低侵襲なカテーテル治療「硬膜外腔癒着剥離術」に積極的に取り組んでいる。星野院長に、治療の特徴やメリットを聞いた。(取材日2024年4月1日)
目次
保険診療でできる低侵襲なカテーテル治療に注力。歩行障害の進行や、排尿・排便のトラブルは手術の検討を
- Q脊柱管狭窄症にはどのような症状がありますか。
- A
模型を用いて説明することも
脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなって中の神経が圧迫されて起こる腰椎疾患ですが、患者さんが腰痛を訴えて来院されることはまれです。お尻の辺りから下肢にかけて痛みやしびれを感じ、「足が痛んで歩きにくい」「立っていると臀部が痛む」といった主訴で受診される方が多いですね。歩き始めるとしだいに症状が強くなり、止まったり、座ったりして休むと症状が軽快して再び歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる症状が特徴的です。ひどくなると下肢の麻痺や排尿・排便障害が起こってくる場合があります。
- Q脊柱管狭窄症は、どのような治療が行われますか?
- A
診療放射線技師とも密に連携を取りながら治療計画を立てている
エックス線やMRI、CTなどで骨の変形や狭窄の程度を確認し、まずはブロック注射やお薬で症状の緩和を図ります。こうした保存療法で症状が改善されれば良いですが、歩行障害が進行したり、排尿・排便が困難になったりした場合は手術を検討する必要があります。手術では、推弓の一部と厚くなった靱帯を取り除き、狭くなった脊柱管を広げて神経の圧迫の解消につなげます。状況に応じて、除圧した部分に骨を移植して固定することもあります。当院では、適応がある方に対しては、小さい切開口からカテーテルを挿入し、神経の周りにある硬膜外腔と呼ばれる部分に薬剤を入れて癒着を剥がすことをめざす硬膜外癒着剥離術も積極的に行っています。
- Q 硬膜外腔癒着剥離術のメリットを教えてください。
- A
合併症やリスクについても語る星野院長
一般の脊椎手術では、神経に到達するために筋肉を剥離し、骨を削る必要があります。硬膜外腔癒着剥離術は、筋肉にダメージをほとんど与えることなく痛みの改善をめざせるのが最大のメリットです。わずか5mmの切開のため、基本的に術後の痛みが少なく、社会復帰できるようになるまでの回復期間も短いですね。加齢に伴って発症しやすい疾患ですが、比較的高齢の方でも体への負担を抑えて行うことができます。麻酔も局所麻酔で済むため、手術中も医師とコミュニケーションがとれるので安心してください。脊椎管狭窄症のすべての症例に適応があるわけではありませんが、低侵襲ですので、まずは受けてみる価値はあると思っています。
- Q硬膜外腔癒着剥離術には力を入れておられるそうですね。
- A
明るく開放的なリハビリテーション室
はい、これまで数多くの症例に対応してきました。また、保存療法から手術、リハビリテーションまで一貫して対応しているため、経過を見ながらそれぞれの患者さんに合った適切な方法をご提案することができます。 硬膜外腔癒着剥離術は、海外では長い歴史がある術式にもかかわらず、日本では実施できる施設が少ないとされています。当院では、硬膜外腔癒着剥離術に力を注いでいる病院としての自負をもって、手術の普及にも積極的に取り組んでいます。2018年からは日本でも保険適応になりましたから、より多くの方に知っていただきたいですね。
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星野 雅洋 院長
1983年日本大学医学部を卒業後、同大学病院整形外科に入局。その後、同大学医学部附属練馬光が丘病院脊椎診療チーフ、東松山市立市民病院整形外科医長、同部長、同院診療副部長を担う。そして2006年に苑田第三病院東京脊椎脊髄病センター長へ就任、2019年には同院院長となる。医師になり最初に配属されたのが脊椎に関する診療を行う班だったことをきっかけに、脊椎を専門に研鑽を積んできたベテラン医師だ。