医療法人社団苑田会 苑田第三病院
(東京都 足立区)
星野 雅洋 院長
最終更新日:2024/07/25
脊椎領域に特化した体制で地域医療を支える
足立区内だけでも10以上の医療関連施設を持つ、医療法人社団苑田会。その一翼として2005年に開院して以来、一般内科と整形外科を中心とした診療で、地域医療を支えてきたのが「苑田第三病院」だ。特徴の一つとして、東京脊椎脊髄病センターが併設されている点が挙げられる。星野雅洋院長をはじめ、脊椎疾患に精通する医師が多く在籍し、専門性が高い脊椎疾患の診療・研究を実施。日本ではまだあまり普及が進んでいない、低侵襲脊椎手術も院内で対応可能だという。また2020年4月からは回復期リハビリテーション病棟を開設し、十分な数のスタッフをそろえ、一人ひとりに寄り添った高品質なリハビリの提供に努めている。同院で手術を受けた患者はもちろん、他院で治療を受けた患者も、密度が濃いリハビリを継続して受けられるそうだ。「地域のニーズにお応えできるように、設備やスタッフの充実に力を注いでいます。患者さんの希望に沿った診療を提供できると自負していますので、何でも相談していただけたらうれしいです」と優しい笑顔で話す星野院長に、同院の特徴や注力している分野、今後の展望について詳しく聞いた。(取材日2024年4月1日)
まずは、苑田第三病院が担っている役割を教えてください。
当院は「地域とともに暮らす」という理念のもと、地域医療の提供に努めている医療法人社団苑田会の病院の一つです。苑田会の医療関連施設は足立区内だけでも10以上あり、それぞれが専門性を生かしながら、おのおのの役割を果たすために努めています。苑田第三病院では主に足立区民や埼玉県南部に住んでいる方々に対して、一般内科と整形外科を中心とした診療を提供しています。入院においては苑田第一病院の後方支援病院として、主に準急性期の患者さんを受け入れていますね。また脊椎の部門に特化しているのも当院の特徴の一つでしょう。東京脊椎脊髄病センターを併設し腰痛や坐骨神経痛、骨粗しょう症性脊椎圧迫骨折、頸椎椎間板ヘルニアなどの疾患に対して、早期の社会復帰をめざした専門性の高い診療と先進の研究を行っています。この辺りは公立病院が少ないのですが、苑田会がそれに代わる存在をめざしているので頼っていただけたらうれしいです。
強みとしている脊椎に関する診療について教えてください。
当院には私をはじめ脊椎を専門とする医師が多く在籍し、必要な設備・機器は先進の物でそろえてあるので、脊椎疾患のほとんどは院内で対応可能です。中でも低侵襲脊椎手術を積極的に実施しているのが、当院の特徴でしょう。低侵襲の手術は腰椎すべり症や腰部脊柱管狭窄症などの腰椎変性疾患と、頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症性脊髄症などの頸椎変性疾患を対象に提案させていただいています。骨粗しょう症性脊椎椎体骨折に対しても早期除痛を目的に行うことがありますね。従来の手術と比べると傷が小さく、筋肉へのダメージが少なく済みやすいので、早めの退院を望めるのがメリットです。残念ながらこの低侵襲脊椎手術は、まだ国内での普及が進んでいません。そこで当院では他の医療施設でも同じレベルの手術の提供ができるように、知識・技術の啓発と機器の開発に尽力しているのです。将来、さまざまな場所で低侵襲脊椎手術を行えるようになったら幸いですね。
リハビリにも注力されているとお伺いしました。
時代の変化に伴い、急性期医療の入院期間を短縮する方針が主流になってきました。しかし患者さんとしては、まだ退院は難しいというケースが少なくありません。そこで当院では、回復期リハビリテーション病棟を設けて、継続したリハビリを受けていただける体制を整えました。また、病床は一般病棟と回復期リハビリテーション病棟を合わせると117床あるのですが、それに対してリハビリスタッフの数は現在50人ほど在籍しています。勉強熱心で優秀なスタッフがそろっているので、専門性が高く、密度が濃いリハビリを受けていただけるでしょう。脊椎手術後や脳血管障害、運動器障害のリハビリの他に、心不全や心筋梗塞などの心疾患発症後のリハビリにも対応しています。ちなみに当院だけではなく、苑田会全体で回復期の病棟の充実に力を注いでいます。もしも当院での受け入れが難しい場合でも、他の苑田会の病院をスムーズにご案内できるのでご安心ください。
今後の展望・目標をお聞かせください。
平均寿命と健康寿命の差を縮める取り組みに、より一層力を入れたいです。近年医療が進歩し、平均寿命は女性なら88歳ほど、男性なら80歳ほどに延びたといわれています。一方、日常生活が制限されることなく過ごせる期間、つまり健康寿命は、平均寿命と約10年の差があるのです。日常生活に制限がかかってしまう原因として、2位は骨折や転倒によるけが、4位は関節疾患と、整形外科領域が上位に2つもランクインしています。しかもこの2つの割合を足すと、1位の脳血管障害を超えそうな勢いなのです。整形外科領域を得意とする当院では、この2つの原因に介入し、健康寿命を延ばしたいと考えています。健康寿命を延ばすことができれば、患者さん自身はもちろん、介護に関わる全員の気持ちが楽になるでしょうからね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
骨粗しょう症という病名を知る方は増えてきた印象があります。しかし病気の詳細についてはまだあまり知られていません。そのため多くの場合が重度になってからの受診であり、発症者に対する治療介入は2~3割程度といわれているのです。骨粗しょう症の早期発見・治療は健康寿命の延長にもつながるでしょう。ですから女性なら閉経する頃、男性なら男性ホルモンが落ちてくる70歳頃から、骨密度の定期検診を受けていただきたいですね。当院では、骨粗しょう症に限らず、ほとんどの症状に対して対応できます。さらなる高度医療が必要な場合は、提携先の病院をご紹介できるのでご安心ください。また精密検査は当院で受け、治療は自宅近くのクリニックで受けたいというご要望にもお応えできる体制を整えてあります。必ず患者さんにとって良い方向に導けると自負していますので、何でも相談していただけたらうれしいです。
星野 雅洋 院長
1983年日本大学医学部を卒業後、同大学病院整形外科に入局。その後、同大学医学部附属練馬光が丘病院脊椎診療チーフ、東松山市立市民病院整形外科医長、同部長、同院診療副部長を担う。そして2006年に苑田第三病院東京脊椎脊髄病センター長へ就任、2019年には同院院長となる。医師になり最初に配属されたのが脊椎に関する診療を行う班だったことをきっかけに、脊椎を専門に研鑽を積んできたベテラン医師だ。