医療法人社団関川会 関川病院
(東京都 荒川区)
新家 眞 院長
最終更新日:2021/08/03
専門性と温かなケアを重視。地元密着の医療
1967年に荒川区三河島に開設され、2000年に高齢化が進む社会に対応するため現在の西日暮里に移転した「関川病院」。長く地元に密着した医療に取り組んできた歴史を踏まえ、慢性期医療を担う病院として急性期の治療を終えた地域に住む高齢の患者を受け入れている。慢性期医療に対応する病院は郊外にあることが少なくないが同院は西日暮里の町中にあり、徒歩圏内にはJR常磐線三河島駅や京成本線新三河島駅が、近くにはJRおよび東京メトロ千代田線の西日暮里駅や日暮里・舎人ライナーの日暮里駅がある。交通の便に恵まれていることから、入院患者の家族が面会に訪れやすいことも大きなメリットと言える。神経疾患の治療と透析治療に特に力を入れているほか、呼吸器内科や循環器内科など高齢者のニーズが高い診療科がそろい、日常的な診療から専門的な治療まで幅広く対応している。「専門性の高さと温かなケアとのバランスが当院の特徴です」と話す新家眞院長に、病院の特徴や取り組みについて聞いた。(取材日2021年6月24日)
こちらの病院の地域における役割はどういったことでしょうか?
高齢になっても、認知症もなく介護・入院も不要で、定期的に健康チェックを受けつつ生活していて、最後に少し寝込んで大往生というのが、人生の理想でしょう。しかし、現実は多くの人が種々の介護を受け入院を繰り返しつつ最終的には亡くなっています。例えば、本邦死因の上位に入る脳血管障害では急性期で亡くなる人は全体の10%以下とされていますが、慢性期の経過中に誤嚥性肺炎等健康であればかからないような病気で亡くなることが多々あるわけです。長期にわたる慢性期状態の方の生活の質をいかに精神面も含めてケアしていくかということは避けて通れない問題であり、その対応は急性期医療と同様かそれ以上に大切なことと思います。当院は地域に密着した病院として、この地域で生まれ育った人が家族とも離れず時々会える距離で療養できる環境を提供し、慢性期病棟としての理想型に近い状況をつくることで、地域の皆さんのお役に立てると考えています。
介護施設との連携も密に行っていると聞きました。
当ビル内2、3階が介護老人保健施設です。この手の施設に多い誤嚥性肺炎などには、日本呼吸器学会呼吸器専門医の武内医師を中心に迅速に処置しています。彼はじん肺などの職業性肺疾患の経験も豊富で、その分野の専門的診療にも対応可能です。老健と病院が同じ建物内で連携できることで入居者や家族に安心感を与えられることはもちろんですが、老健入居者の方が育てた花を病棟に所々飾るなど、病院スタッフも癒やされています。また、院内には居宅介護支援事業所を開設しており、他の老健や在宅医療に移行する場合や在宅から老健への入所という流れにもスムーズに対応しています。慢性期の患者さんで、老健や在宅に移る人も何人かはいらっしゃいますが、そういうルートが間近に見えることで、ご本人も家族も将来に対する希望を持つことができれば精神的な支えにもなると思います。さらに有機的に結合して動けるようにしていきたいと思っています。
診療においての特徴を教えてください。
当院は一般病棟・療養病棟・障害者病棟からなっています。障害者病棟の約70%がパーキンソン病や進行性核上性麻痺等神経難病の患者さんです。慢性期神経変性疾患をきちんと診れる慢性期病棟は少ないと思いますが、日本神経学会神経内科専門医である太田副院長が、神経内科的疾患の患者さんを外来も含めて診療することで、病棟の質の担保と活性化につながっているのが、当院の大きな特徴だと思います。今後も専門の医師を増やして、行き場のない患者さんを受け入れればと考えています。もう1つの特徴は透析治療です。維持透析は通常外来で行う場合が多いのですが、当院は入院での維持透析も可能です。外来透析のみだと、もととなる病気の状況で要入院となった際に入院先を一から探さなければいけなくなりますが、当院では日本腎臓学会腎臓専門医の木村医師が透析治療の外来と入院を担当していますので、その点は安心と思います。
そのほか、先生の考えるこちらの病院の良さについて伺います。
診療面での良さは既に述べました。慢性期病棟では相対的に看護師の働きの占める比重がとても大きいのですが、私が感じたのは看護師の目が優しいということです。そして驚いたのが、食事時間です。一般的に慢性期病棟の患者さんで寝たままの人はベッド上で食事を取りますが、当院の看護師はできる限り患者さんを起こして食堂へ連れていき、食べていただくようにしています。効率的には簡単ではないのですが、そういったことを日常的に行えば患者さんへのメリットも大きいですし、また、そういう看護体制が当院の良さと思っています。慢性期病棟の重要課題である感染防止、すなわち誤嚥性肺炎や尿路感染症防止のための院内感染対策チームは、当院では大学院で感染看護を学び大学病院の感染対策チームで活躍していた看護師長が中心となって運営しています。看護師さんを束ねる看護部長がとても優秀であることも当院の強みでもあり良さでもあると思っています。
最後に院長としての抱負や地域へのメッセージをお願いします。
今後もこの病院の良さを継承しつつ、さらに発展させていくことに尽きます。四書五経の中の大学に「心を誠にしてこれを求むれば、当たらずといえども遠からず」という言葉があります。「一部の天才や才能のある人以外の凡人は、真面目に正道を歩んでさえいれば、そんなに間違った結果には決してならない」という人生の定理のようなものですが、これは病院経営にも医療にも言えることと信じています。価値観は人それぞれですが、人はお互いに助け合わないとうまくやっていけません。慢性期医療の中で医師・看護師が協力し合って患者さんを助けるというような環境をつくっていくことで、もっと地域の役に立てていければと考えていますので、ぜひ頼りにしていただければと思っています。
新家 眞 院長
1974年東京大学医学部卒業。1989年東京大学医学部附属病院分院科長、助教授、1997年東京大学医学部眼科学講座教授、2010年公立学校共済組合関東中央病院病院長、東京大学名誉教授を経て、2021年4月より現職。公立学校共済組合関東中央病院名誉院長でもある。趣味はスキー、カメラ、読書。愛読書は古代中国や古代日本や出雲の歴史関連本など。