公益財団法人がん研究会 有明病院
(東京都 江東区)
渡邊 雅之 病院長
最終更新日:2026/08/04


先進治療の開発と実践を両立する専門病院
がん専門医療機関としての長い歴史に基づくノウハウと、民間病院ならではのスピード感で、先進のがん治療の実践と研究・開発の両立をめざす「公益財団法人がん研究会 有明病院」。各領域でその分野の専門家を中心としたチーム医療、低侵襲治療の豊富な実績、そして先端の治験にアクセスできる環境は同院の大きな特徴となっている。がん治療に直面した患者やその家族が最初に訪れる場所としてトータルケアセンターを設け、経済的な問題はもちろん、仕事との両立、妊孕性温存、アピアランスケアといった相談を一元的に受けつけている点も特徴だ。「年齢や家庭環境、ご本人の希望を考慮した柔軟で最適な治療の提供をめざしたい」と話す渡邊雅之病院長に、病院の方針や強みなどを聞いた。(取材日2026年5月14日)
まずは、がん専門病院としての成り立ちからお聞かせください。

当院の歴史は、1908年設立の癌研究会を母体として、1934年に東京・大塚に開設されたがん専門研究所ならびにその付属病院にさかのぼります。その後、先進的な放射線治療施設を構え、臨床と研究の両面から日本のがん医療の発展を支えてまいりました。梶谷鐶先生が主導して確立した数々の外科手術の方式や、吉田富三先生が発見したがん細胞の個性から開発研究が進んだ化学療法などは、当院ががん医療の歴史とともに歩んできたことの証だといえるでしょう。2005年には、現在の有明の地に移転し、以来、「がん研有明病院」の通称で親しまれてきました。当時の武藤徹一郎病院長が掲げた「チーム医療」と「低侵襲治療」の二大テーマは、現在も病院の基盤となっています。
治療の特色を教えていただけますか?

胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・肝臓がんの主要五大がんを筆頭に、小児がん以外のほぼすべてのがんに対して、患者さん一人ひとりに最適な集学的治療を実践するためにチーム医療を行っています。また、治療の中心は、腹腔鏡や胸腔鏡による手術、ロボット支援手術といった低侵襲治療です。手術支援ロボットは、一般的な多孔式に加えて先進の単孔式も導入しました。また、新型の手術支援ロボットには、実現が難しいといわれてきた触覚機能が備わり、力のかかり具合が術者の手元にフィードバックされます。これにより、これまで以上に安全性に配慮した繊細な手術を行うことが可能になりました。さらに、新たな治療の開発も当院の重要な使命です。先進がん治療開発センターのバックアップのもと、新しい薬剤の治験も多く手がけています。
全国から患者さんが来院することでも知られていますね。

一都三県からの受診が多くを占めていますが、羽田空港に近い立地もあり、全国各地からご来院いただいております。一方、がんという病気の特性上、再診の患者さんが多いのもまた事実です。特定機能病院として期待される役割を果たすには、かかりつけ医との役割分担による外来の機能分化を進め、先進のがん治療を必要とする初診患者さんを一人でも多く受け入れていかなければなりません。幅広い地域から患者さんがいらしている点で難しさもありますが、地域連携室を中心に各地域の医療機関との連携を強化し、2人主治医制による適切な紹介・逆紹介のサイクルを回していきたいですね。
患者さんとご家族の支援にも力を注いでいる印象です。

従来は診療科や部門ごとに分散していた患者・家族支援の機能を一元化するため、2021年にトータルケアセンターを設立しました。地域連携室、診療予約室、国際医療室、ベッドコントロール室、入退院支援室から成る医療連携部と、がん相談支援センター、患者相談室、サバイバーシップ支援室などを集約した患者・家族支援部があり、患者さんとご家族のさまざまな困り事に並走しています。2026年には、病院の2階に移転・統合し、よりアクセスしやすくなりました。治療に伴う経済的な問題から仕事と治療の両立に関する悩み、妊孕性温存のこと、さらにはアピアランスケアまで、看護師やソーシャルワーカーが連携してワンストップでご相談に乗ることができるので、ぜひ頼りにしていただきたいと思います。
今後の展望と、患者さんへのメッセージをお聞かせください。

民間のがん専門病院ならではの自由度を生かし、さまざまな企業との連携による新薬開発や医療機器開発に力を入れていく予定です。また、治療の低侵襲化で在院日数の短縮が進む一方、外来化学療法の需要の増加に対応し、外来治療センターを拡充しました。今後1~2年かけて外来スペースを再編し、より利便性を高めたいと思います。患者さんにとってより便利で、移動の負担が少ない病院をめざして最適化を図っていきたいですね。治療面では、標準治療に限らず、個別の状況を考慮し、最適な治療を追求している点が私たちの特徴であり強みでもあります。専門病院だからこそキャッチできる情報や知見を地域に還元することで、「がん研有明病院に相談してみよう」と思ってくださる先生方を増やし、適切かつ迅速な紹介で救える命を増やしていきたいと思います。お困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

渡邊 雅之 病院長
1990年九州大学医学部卒業。米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター研究員などを経て、2012年に熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学准教授に就任。その後、有明病院食道外科担当部長、消化器外科部長、トータルケアセンター長、副院長を歴任し、2026年より現職。専門は消化器外科で、食道がんの外科治療を得意とする。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。





