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公益財団法人がん研究会 有明病院

(東京都 江東区)

佐野 武 病院長

最終更新日:2021/03/05

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さまざまながんを対象に低侵襲治療を実践

「がん克服をもって人類の福祉に貢献する」を使命に掲げる「公益財団法人がん研究会 有明病院」は、癌研究会(現・がん研究会)付属の病院として90年近く前にがん治療をスタートさせ、がん研究所とともに日本のがん研究、がん治療に注力してきた。現在はほとんどの臓器のがんから、希少がんである肉腫まで幅広く治療を行い、ロボット支援手術をはじめ患者の体への負担軽減を重視した手術を積極的に行っている。また、がん研究所と連携して臨床研究や治験などを行い、新たながん医療の発展を支えるのも特色。同院の佐野武病院長は、「健診センターでのがんの早期発見から、さまざまながんの先進的な治療、治療中・治療後の患者さんとご家族へのサポートなど、専門性の高いがん診療を提供しシームレスに連携するのが当院の強みです」と言う。さらに「今後は首都圏の複数の病院と緊密な連携を図り、身近な場所で当院と同等の外来診療を受けていただける拠点を展開する予定です」と話す佐野院長に、同院のがん治療の特色と、新たながん医療の創造に対する意欲について聞いた。(取材日2021年2月10日)

はじめに、病院の成り立ちについて教えてください。

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当院の歴史は、国際的にがん研究への関心と必要が高まる中、1908年設立の癌研究会を母体に、1934年に西巣鴨に開設されたがん専門研究所とその付属病院に始まります。その後、社会事業を行う三井報恩会より大量のラジウムの寄付を受け、当時としては先進的な放射線治療施設を持つことができました。第二次世界大戦後は、がん外科手術が専門の梶谷鐶先生のもと、さまざまな外科手術法を確立し、また病理の専門家であった吉田富三先生が、がん細胞の個性を発見し、個々のがん細胞に適した治療法の必要性が理解されて、化学療法の開発研究も進められました。2005年に現在地に移転した後も、「がん研有明病院」の通称で親しまれ、全国から患者さんが来院されています。がんを発見した医療機関からの紹介はもちろん、ご自分で情報を調べて選択したとか、家族や友人に強く勧められたなど、積極的に当院を選ばれた方も多くおられます。

こちらのがん診療にはどのような特色がありますか?

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がん診療専門病院として、胃がん、大腸がん、乳がんなどの五大がんはもちろん、頭頸部がん、泌尿器がんなど、ほとんどの臓器のがんをカバーし、血液の悪性疾患、皮膚がん、希少がんである肉腫などを治療する部門も開設しています。なお脳神経外科、小児科は当院では扱っておらず、他の医療機関と連携して治療を行います。診療面では、患者さんを中心に各診療科の専門家が集まり、チームとして方針を決め、それぞれの強みを生かしながら診断から治療まで行うのが特色です。このシステムは前院長が体制化されたもので、手術や放射線療法、化学療法など専門的な技術をもつ医師や医療スタッフが集まって治療方針を検討する「キャンサーボード」という意思統一スタイルを確立しました。また、治療中も治療後も患者さんとご家族が安心して過ごしていただけるようトータルケア部門を設け、緩和ケア、心のケア、女性やお子さんのケアなど幅広くサポートしています。

治療面での取り組みを教えてください。

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患者さんの体への負担を軽減するために低侵襲治療を早くから導入し、現在の当院の外科手術では、腹腔鏡や胸腔鏡による手術、ロボット支援手術などの低侵襲治療が大半を占めます。ロボット支援手術は腹腔鏡手術の高度化に役立つもので、胃がん、直腸がん、肺がんをはじめ、さまざまながんでこの手術を行っています。当院には現在20室の手術室がありますが、2019年にロボット支援手術用の手術室を2室から3室に増やし、より多くの患者さんに対応できるようになりました。また、放射線治療用装置は6台あり、がん細胞に集中して放射線を照射し、正常な細胞への影響を極力抑えながら施術を行うIMRTなどの治療が可能です。このほか、通院しながら抗がん剤治療を行う外来化学療法室では、75床のベッドを用意し、連日数多くの患者さんの治療をしています。さらに腫瘍精神科部門が、がん患者さんの「心のつらさ」に対応しています。

新たながん医療の研究や実用化にも積極的と聞きました。

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当院は癌研究会の付属病院というルーツを持ち、現在もがん研究所と連携し、新たながん医療の研究、実用化に向けた取り組みを進めています。近年の動きとしては、先端医療開発センターで薬剤開発に伴う治験の最初のステップとなる第1相試験(フェーズ1)の拡充をはかっています。当院では以前から、実用化、標準化のための第2相、第3相試験を多く行ってきましたが、同センターではより早い段階から、薬剤開発にアプローチしています。また、当院はがんゲノム医療拠点病院の指定を受け、対象となる患者さんについてがん遺伝子パネル検査を提供するほか、がんプレシジョン医療センターを中心に個別化医療の研究も進めています。このほか、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」の開発研究も行っています。

新型コロナウイルスの流行でがん発見の遅れを心配されています。

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ええ、病院の受診を避けたい気持ちから、がん検診まで控える方がおられるため、適切な時期に検診を受けていただくよう、多くの方に呼びかけているところです。がんによっては進行が遅いものもありますが、本来受けられる検診を受けず、半年後に見つかったことで重症化していたり、手術だけで済んだものが抗がん剤の併用が必要になったりと、発見の遅れによる悪影響が明らかになっています。新型コロナウイルスはマスクの着用や適切な距離を保つことで、感染防止に関する有用性が期待できることは、これまでの研究でも明らかです。当院も感染症対策を徹底的に行っており、安心して受診していただきたいと思います。当院の健診センターはがんの発見に特化した検診コースを用意し、胃や大腸の検査では内視鏡を、肺がん検診ではCTを使用し、大腸CT検査も可能です。精密検査や治療が必要な際は当院で対応できますからご利用ください。

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佐野 武 病院長

1980年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院第一外科、焼津市立総合病院などを経て、1993年より国立がん研究センター中央病院外科勤務。2007年より同部長。2008年有明病院消化器外科部長。同院副院長を経て、2018年7月より現職。長年、胃がん手術技術の向上や後進の教育に努めている。

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