医療法人社団愛育会 愛和病院
(東京都 江東区)
下稲葉 みどり 院長
最終更新日:2026/02/18


包括的な医療と温かいケアで在宅につなぐ
1971年に開設され地域の二次救急に尽力した協和病院を前身とする「愛和病院」。現在は医療療養型病院として、急性期治療を終えて状態が安定した慢性期から回復期の患者や、在宅や介護施設などにおいて状態が悪化した患者を受け入れ、自宅や介護施設での在宅療養生活に移行できるようにケアや支援を行っている。同じ建物内にある介護老人保健施設「清らかの里」と相互に連携を図ることで、医療と介護を切れ目なく提供するほか、訪問診療にも対応する。2025年に就任した下稲葉みどり院長は、患者や家族との会話を大切にするとともに多職種との協力で、その人らしい療養生活の実現をめざしている。明るく穏やかな話し方が印象的な下稲葉院長に、同院における包括的な医療やケアなどの取り組みと、療養型病院での診療における自身の思いを聞いた。(取材日2025年10月16日)
院長に就任され、今どのようなお気持ちでいらっしゃいますか。

私はこれまで急性期病院で集中治療や救急医療に携わってまいりました。本格的に療養病院で診療をするのは今年からです。内科の医師として訪問診療なども幅広く担当してきましたが、治療に対する姿勢は急性期病院とはかなり違うため、まだまだ自分の中でも当院での医療を模索中です。当院の患者さんやそのご家族は、急性期病院で大変な思いをして治療を終えられ、多くの不安を抱えて当院にいらっしゃいます。ですから、「ここまで頑張りましたね」という気持ちでお迎えをしています。お体が大きく回復するような時期はもう過ぎている方も多いため、そういった状況であることに気を配りつつ、ご本人やご家族とお話しする際には、ご本人が話せない状態であっても、人となりが感じられるようなことをお聞きしたり、その人に合ったご提案をお伝えできたりするように、よく対話することを心がけています。
医療療養病床での医師の役割は何だとお考えですか。

急性期病院では病気を治療することが主軸ですが、医療療養病床ではどちらかというと、予後を穏やかに過ごしていただくための緩和的な医療に重きを置くことになります。医学的には、この病気にはこの診察、診断、治療をすべきだという面がありますが、その方針とご家族やご本人の希望を常に折衷していくことはこれまでの私の仕事の中にはなかったことで、大きなやりがいを感じています。最初は驚くこともあったのですが、経験を積むにつれ、人生の最期を迎えるにはこういった要素も多分に必要なんだなと思うようになりました。医学的に正しいことが絶対だというような気持ちは持たず、なぜそのようにお考えなのかをくみ取り、当院ができる最大限の医療と患者さんやご家族の思いの最大公約数を見つけていくことを大切に、毎日、勉強しながら取り組んでいます。
近隣の医療機関や併設の施設との連携の取り方を教えてください。

基本は近隣の急性期病院からの入院が多く、緊急時には江東区内の病院と連携し対応しています。状態がある程度落ち着き、食事も可能で、入院しなくても過ごせる人については、併設の介護老人保健施設「清らかの里」に入所していただくこともできます。入所後も私を含む当院の医師が健康管理も行いますので、患者さんにもご家族にも不安なくお過ごしいただけるのではないでしょうか。また、退院後に訪問診療を必要とされる方についても、引き続きご自宅を訪ね、診察しています。訪問診療は病院の診察とは違い、確かな信頼関係があってこそ成り立つものです。療養型病院なので急性期病院のような検査や治療はできないことが前提です。そのため「穏やかに療養したい」と希望される方に限られますが、同じ医師が一貫して診ることで、患者さんとご家族へ安心感と満足感を感じていただけるよう努力していきたいですね。
院長として、医師として、大切にしていることはありますか。

私は、基本的に怒らないことを心がけています。当院には、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士など、さまざまな職種のスタッフがいます。みんなが100%の力を出して患者さんやご家族に接していけるように、威圧的な態度は取らず、風通しの良いコミュニケーションが取れる環境づくりに努めています。これはこの病院に来てからではなく、医師としてずっと意識してきたことで、みんなとお話ができる医師でありたいと思っています。独り善がりにならず、より合理的な選択ができるように、みんなをまとめていけるようにいつも心がけています。患者さんに対してもスタッフに対してもそうすることで、より良い方向に進むと感じています。
最後に地域の方に向けてのメッセージをお願いします。

病気の治療が目的の急性期病院では、お風呂の回数が限られていたり、衣服の乱れまで目が届かなかったりすることもあるのですが、当院では整容的な面も大切にしています。お風呂に入って暖かくしてもらったり、ひげをそって保湿したりするなど、患者さんだけでなく、ご家族にも喜んでいただけるようなことに取り組んでいます。看護師をはじめスタッフの丁寧な対応は、きっとご家族の満足度やご本人の安楽にもつながっていると思っています。引き続き、患者さんやご家族、地域の声に耳を傾け、丁寧な診察を心がけてまいります。当院は随時見学も承っていますので、気軽にお越しください。

下稲葉 みどり 院長
杏林大学医学部卒業。非常勤医師として愛和病院で勤務した後、清らかの里の施設長を経て、2025年より現職。日本内科学会総合内科専門医。医療機関での感染症対策の専門家として同院の感染委員長を務める。救急内科での診療経験もあり、専門はプライマリケア。2児の母であり、少林寺拳法は四段の腕前だ。





