社会医療法人社団森山医会 森山記念病院
(東京都 江戸川区)
本橋 英明 病院長
最終更新日:2025/01/07


区の救急・急性期を率いる、頼れる中核病院
2024年現在、70万人近い人が暮らす江戸川区。東京23区の中でもトップ5に入る人口の多さに対して、救急搬送に対応できる病院は少ない。こうした中、小児科と精神科、産科と一部疾患を除くすべての救急症例に対応する「森山記念病院」は、1982年の開院から現在に至るまで地域の救急医療を支える存在だ。「世界水準の医療を地域へ」のスローガンを掲げて救急医療を率いる脳神経外科と脳卒中部門で知られるが、消化器外科、循環器内科、整形外科、内科などの救急体制も充実。2025年1月からは外来機能を病院に隣接する「森山総合クリニック」に移設し、新たな1歩を踏み出す。2016年の移転以来のドラスティックな変化の中、「あなたが病気による生命の危機や苦痛から早く解き放され あなたの仕事や家族のもとに戻れますよう 私達は全力をつくします」の院是に沿って同院を率いる本橋英明病院長に話を聞いた。(取材日2024年11月15日)
まずは、病院の成り立ちと特徴から教えてください。

当院は、1982年に森山貴理事長が開設した「森山病院」を前身とする病院です。24時間365日の救急医療を実践することを目的とし、脳神経外科および脳卒中部門における高度急性期医療を中心に、消化器外科や循環器内科、整形外科などでも積極的に救急患者を受け入れてきました。開設当時の病院は西葛西駅の目と鼻の先にありました。その後、2016年に現在の場所に移転して293床に増床、広いリハビリテーション室も完成して早期からリハビリに介入できるようになりました。駅からは少し遠くなりましたが、患者さんの通院の負担を軽減するため、最寄駅から送迎バスを運行しています。法人内で回復期・在宅・介護までカバーできるように連携体制を構築しており、回復期から慢性期は森山脳神経センター病院、介護は介護老人保健施設の森山ケアセンターや、特別養護老人ホーム古川親水苑とシームレスに連携している点も特徴ですね。
2025年に、外来機能をクリニックに移設するそうですね。

質の良い医療を効率的に提供するため、隣接する「森山総合クリニック」で一般外来を行うことになりました。当院では、より専門的な検査・治療に取り組んでいく予定です。これまで外来の診療科は、この数年で耳鼻咽喉科や乳腺外科、形成外科などが増えておりましたので、移設後も豊富な診療科で地域医療を支えていきたいと考えています。乳がん検診のハードルを下げるため、服を着たまま、乳房を挟まずに精度の高い検査が受けられるMRIも導入しています。マンモグラフィの痛みが苦手な方など、ぜひご相談ください。また、外来部門の移転に伴い、これまで外来があった1階に救命救急センターと手術室を作ることになりました。
尽力されている救急医療についても、お考えをお聞かせください。

人口が多いにもかかわらず救急を担える医療機関が少ない江戸川区において、充実した救急医療の提供は当院の重要な役割の一つです。「断らない救急」と「迅速かつ的確な救急医療」をポリシーとして、診療科を持たない領域と一部の専門疾患以外は速やかな救急の受け入れを全力で継続していきます。同時に、将来の医療やケアについてあらかじめ意思決定しておくアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及にも注力する必要があると感じています。昨今のお年寄りは元気な方が多く、90歳過ぎで胃がんや大腸がんになった方が歩いて外来を受診し、自分の意思で手術を選択することも珍しくありません。その一方、救急で運ばれる方の多くはACPの準備がなく、ご本人の希望がわからないまま治療を進めざるを得ないことがほとんどです。地域の中核を担い、救急医療をけん引する病院として、医師会などと連携しながらACPの普及にも貢献したいと考えています。
年齢に関わらず、将来の変化に備えておくのは大切なことですね。

患者さんとご家族にとって、非常に大切だと思います。私はそのことを実父の看取りで学びました。当時、私は国立がん研究センター中央病院に勤めていたのですが、離れて暮らしていて異変に気づけませんでした。かかりつけ医からの電話で、父の状況を知ったのです。そこからは怒涛の日々でした。それでも、母とともに父とどう過ごすかを考え、夫婦2人で話をする時間を作ってから父を見送れたことには、心の底から満足しています。救急搬送の場合、私と父のような時間的猶予がないことも多いですから、元気なうちから万が一に備えた話し合いをしておいていただきたいですね。父は、私を真に患者さんとご家族の立場に立って考えられる医師にするために、人生の最後の時間を使ってくれたのだと思います。患者さんがご自身の生き方に満足できるよう、病院の立場でできることを実践していきたいですね。
ありがとうございました。最後に今後の展望をお聞かせください。

病院としては、江戸川区の医療ニーズに応えられるよう、ハードとソフトの両面から医療の質を向上させていくことに尽きます。職員の心のよりどころでもある院是を大切に、私自身の医療に対する思いや考え方もスタッフに伝えながら、高度急性期・急性期医療を提供する病院として地域の切れ目のない医療の一端を担っていきたいですね。ロボット支援手術やAIをはじめとした最新の医療技術にアンテナを張り、患者さんのためになるものは積極的に導入することも大切だと考えています。まずは各科の先生方やコメディカルスタッフとの対話を増やし、私の専門である消化器外科以外の強みについて深く理解することで全体の底上げを図ってまいります。今後の森山記念病院に、どうぞご期待ください。

本橋 英明 病院長
東京医科歯科大学(現:東京科学大学)医学部卒業。同大医学部第二外科、国立がん研究センター中央病院、中野総合病院外科医長などを経て森山記念病院に入職。消化器外科部長、消化器センター長、内視鏡治療センター長などを務めた後、2024年6月から病院長に就任した。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。