全国の頼れる病院・総合病院・大学病院を検索
病院・総合病院・大学病院7,944件の情報を掲載(2025年1月31日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 葛飾区
  4. 金町駅
  5. 社会福祉法人 仁生社 江戸川病院高砂分院
  6. 青井 東呉 院長

社会福祉法人 仁生社 江戸川病院高砂分院

(東京都 葛飾区)

青井 東呉 院長

最終更新日:2024/12/25

Hf main z61878 20241113 31Hf main z61878 20241113 31

高齢者の医療・福祉に力を入れ地域を支える

中川や大場川の水辺に面し水と緑に恵まれた環境にある「江戸川病院高砂分院」。1951年に養護老人ホームに併設する診療所としてスタートし、1953年には増床して「高砂養老園病院」に、さらに1955年に87床になり「江戸川病院高砂分院」と現在の名称となった。1965年に現在の地に移転した当時、青井東呉院長の母が医師として勤務しており、3歳だった青井院長もその頃の様子を鮮明に覚えているという。その後は地域の声を受け、住民の受け入れにも積極的に応じるため外来診療部門の充実を図り、来たるべき高齢化社会に対応する体制を整えてきた。超高齢化社会となった今、同院では併設する高齢者施設の患者の健康管理を中心に、長く高齢者医療に携わってきた責任から、地域の医療と介護を支えている。在宅医療の普及などによる高齢者医療の変化や現状に向き合いながら、「みんなの幸せ」を追求する同院の取り組みについて、青井院長に聞いた。(取材日2024年11月13日)

現在の病院を取り巻く環境や状況を教えてください。

Cs1

今、目立つのは、以前よりも衰弱してから高齢者施設に入院される方が増えていることです。とても施設で介護を受けながら元気に過ごせる状態ではない方もいて、施設に入ってすぐに入院することになる、あるいはそのままお亡くなりになる方もいる状況です。また、独居の高齢者の要介護や骨折の救急応需の案件も増加傾向にありますが、本来そういう方々はそこまで衰弱化する前に高齢者施設などに入所することで健康面の維持につなげられていました。在宅療養の現場でもそれを支える訪問看護師や訪問ヘルパーさんが不足している上、スタッフの高齢化も進み、一人ひとりのお宅を訪問し十分なケアをするのは難しいというのが現状です。そのような中での当院の役割は、高齢者施設に入居した方に対して、いかにその人の人生の終末期に即した形で診てあげられるかに尽きると考えています。

背景にある東京都の高齢者の状況についてどのように考えますか。

Cs2

東京都では高齢者人口が増加しており、2045年頃までは増え続けると予測されています。その理由には、今、現役で働いている人々が高齢化すること、地方の過疎化に伴い子どもを頼りに都市部へ移住する高齢者が増えていることなどが挙げられます。この状況から、今後も都内の医療・介護のニーズが減少することは考えにくいですが、一人ひとりの独居高齢者に個別ケアを提供するには膨大な人員が必要であり、手厚い介護を優先する仕組みづくりが求められます。ここで生まれ育ち当院に通院している患者さんもどんどん高齢になりました。施設に入り亡くなられた方も大勢いらっしゃいます。在宅医療を希望されて通院から移行したケースもありますが、後日ご家族から、救急車で病院に搬送され今は施設に入所されていると聞いたときは、何のための在宅医療だったのかと、改めて現場での人員不足の深刻さを痛感しました。

病院としてはどのように取り組んでいかれるのでしょうか。

Cs3

昔は急性期治療後にもう少し時間をかけて慢性期医療を経由し出口を考えたり、老衰を見極めお看取りになるための道筋を考えていましたが、今の慢性期医療はどちらかといえば地域において救急に行くほどではないけども、自立して暮らすのは大変で、医療的処置が多く施設でも受け入れられない方をお預かりする場になっています。葛飾区内ではそういった慢性期病床を持つ病院は少なく、今後も高齢者が増えていく前提で言えば、高齢者施設を併設していることは当院の強みであり、そういった方々の入所後の人生について一緒に考えていくことになると思います。特に認知症については、患者さんの生活機能や病気に対する自覚や理解と現実にギャップがあります。現実を伝えるだけでは解決にならないので、整合性を持って接する必要があります。どんな方でも最期はお亡くなりになりますから、ご家族がどのように容認していくか、その対応も私たちの役目になってきます。

認知症への対応も大きな課題ですね。

4

認知症はまだ理解が進んでいない部分もあり、多くは物忘れがひどくなったら診てもらおうという発想に留まっていますが、実際にはアルツハイマー型に限らず物忘れの進行には生活習慣が深く関わっています。例えばアルコールや糖尿病、高血圧といった生活習慣病のコントロールが悪い方ほど認知症のリスクは高いといわれています。認知症予防検診は60代から70代前半を対象にしていますが、実際に相談に来られるのは75歳や80歳を過ぎた方が多く、予防が図れたはずの時期を逃してしまうケースがほとんどです。新しいアミロイドβ治療薬も、発症の手前での適用となるため早期発見が非常に重要です。心配して早めに相談に来た方には生活習慣の改善などを提案できますが、遅れてしまうと薬でも治療が難しい状況なのです。そういったことについて地道にお伝えしていくことで、介護高齢者の増加が社会保障費を圧迫することに一石を投じることになればと思います。

最後に地域に向けてのメッセージをお願いします。

5

現在の建物は築何十年もたちかなり老朽化が進んでいて、DXを取り入れるにも不向きな構造で、より災害に強い建物へ建て替える必要もあります。その際、現在の病床数を維持するのか、それとも規模を縮小して運営するほうが適切かを慎重に検討し、地域で不足している医療ニーズに対応する方向で進めていきたいと考えています。地域の若い世代、特にお子さんを持つ方にとって重要な小児科医療は地域の開業の先生や、近隣の病院にお願いすることになりますが、一方で、当院が力を入れるべきなのは成人以降の中高年や高齢者向けの医療です。外来診療で、患者さんがわからないことを丁寧に説明してさしあげるなど、これまでどおり地道な診療を大切に、地域に貢献していきたいと思います。

Hf main z61878 20241113 31

青井 東呉 院長

1985年東京医科歯科大学医学部卒業。同大学医学部第1外科入局。太田綜合病院、江戸川病院などを経て2010年より現職。幼い頃から、母である青井禮子江戸川病院高砂分院名誉院長が医師として同院で診療にあたる姿を間近に見て育つ。長く高齢者医療に携わり培ってきた知識と経験を生かし、患者やその家族と親身に向き合い続ける。

access.png