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緻密で高精度のロボット支援下手術
がん治療の合併症軽減をめざす

地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立東部地域病院

(東京都 葛飾区)

最終更新日:2024/06/24

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  • 保険診療
  • 子宮体がん
  • 骨盤臓器脱
  • 前立腺がん
  • 膀胱がん

ロボット支援下手術は、専門的なトレーニングを受けた医師が手術支援ロボットを操作して行う手術方法で、ロボットの鉗子の先端にある関節が自由に曲がることに加えて、高画質の3D画像や手ぶれ防止機能によって狭い骨盤内や腹腔内でも精密かつ繊細な手術が行える。これらの特性により神経や血管を傷つけることなく治療ができることでの合併症の軽減も期待されるほか、傷が小さく出血量も少ないため、入院期間も短く、術後の早い回復にもつながりやすいといった患者へのメリットも大きい。「東京都立東部地域病院」では、2023年7月に手術支援ロボットを導入。そこで、泌尿器科の有澤千鶴副院長、芦澤健先生、北島政幸外科部長、宮井健太郎婦人科部長、永井富裕子医長にロボット支援下手術の取り組みについて聞いた。(取材日2024年2月27日)

精密な動きで狭い場所でも周囲の神経や血管を傷つけずに治療が可能に。無駄な侵襲をなくし合併症軽減も期待

Q泌尿器科のロボット支援下手術の優れている点を教えてください。

A

視野を拡大しながら、コントローラーでロボットのアームを操作

【芦澤先生】今やほとんどの泌尿器科の手術で、ロボット支援下手術が優れていると考えられています。当科では、現在、前立腺がんと膀胱がんに対する膀胱全摘手術に対応していますが、特に狭い骨盤底に位置する前立腺や膀胱に対して、手首のように自由に曲がる鉗子を操作できるのは大きなメリットです。また、がんをミリ単位で精密に切り取る作業ができるので、がんの根治をめざすことができます。傷が小さいので翌日には歩くこともでき、食事も召し上がっていただけます。

Q合併症の軽減も期待できるということでしょうか。

A

手術支援ロボットを用いることで、より精度の高い手術が可能に

【有澤先生】前立腺がん手術の場合、従来の開腹手術や腹腔鏡手術では、術後に吻合したところから尿が漏れることがまれにありましたが、なんといってもロボット支援下手術のメリットは狭い所で手が動き、吻合が精密にできるので、吻合部の縫合不全が起きにくいのです。前立腺は奥深い所にあり多くの血管に囲まれているためどうしてもある程度の出血がありましたが、ロボット支援下手術では出血が少なく、患者さんの早期回復につながっています。それもロボット支援下手術の素晴らしい点です。また、万が一血管が損傷したとしても、修復するための能力にも長けているため、出血した部分の修復が簡単にできるのもメリットの一つです。

Q外科ではどのような疾患でロボット支援下手術を行っていますか。

A

高画質のモニターを確認しながら手術支援ロボットを操作

【北島先生】外科では、直腸がんと結腸がんに対するロボット支援下手術を実施しています。ロボット支援下手術が最も力を発揮するのは直腸がんの手術で、手ぶれがないなど格段に手術がやりやすくなりました。手術がしやすいということは患者さんのためにもなると思いますので、それを信じて取り組んでいきたいです。また、腫瘍がおしりから近い場合は人工肛門になることが多いのですが、ロボット支援下手術は肛門に近い所での操作ができるので、症例により人工肛門を回避することもめざせます。さまざまな要素の組み合わせでクオリティーを保ちながら合併症を減らしていければと思います。

Q外科でのロボット支援下手術におけるデメリットはありますか。

A

4本のアームを操作して手術を行う

【北島先生】デメリットを挙げるなら、触覚がなく、目と動きで判断しなければならないことです。それによる不利益もゼロではないので、安全を確認した上で治療の質を追求する必要があると思います。触覚がないロボット支援下手術はゆっくりと進めていくため、手術時間が腹腔鏡手術よりも長くなる傾向にあります。また、骨盤以外の臓器については、細かい向きや体の範囲によっては腹腔鏡手術のほうが優れている場合もあります。そのため、高齢者で長時間の手術が負担になる人は、ロボット支援下手術か腹腔鏡手術か、今の私たちの技術でどちらのほうが患者さんに負担がなく、クオリティーを維持できるかを間違えずに選択することが重要です。

Q婦人科ではロボット支援下手術をどのように活用していますか。

A

ロボット支援下手術の全体風景

【宮井先生】婦人科では、良性子宮疾患、骨盤臓器脱に対する仙骨固定術、子宮体がんの手術に対応しています。傷の支点が定まり傷口に負荷がかからないので、術後の痛みが少ないのが特徴です。
【永井先生】骨盤臓器脱の仙骨膣固定術は膀胱と膣の間を尿道口の近くまで剥離し、メッシュを腰の骨に縫合して吊り上げますが、深い所の剥離は鉗子が真っ直ぐの腹腔鏡では難易度が高く修練が必要でした。それに対してロボット支援下手術は拡大視野で組織も血管もよく見えるので、深い所の操作でも安全性を確認した上で処置ができます。奥深くまでカメラが入り縫合ができるので患者さんへの余計な侵襲や出血もなくピンポイントで精密に治療ができます。

Q婦人科におけるロボット支援下手術で配慮すべき点はありますか。

A

ロボットのアームを操る専用のコンソール

【宮井先生】細かく見える分、周囲が見えづらく臓器を圧迫することもあるので、血管の損傷などには細心の注意が必要になります。しかし、手術支援ロボットが常に正常に動いていることを確認し安全性に注意を払っているため、それほど心配はいりません。
【永井先生】急速出血などに対する対応が難しいことに注意が必要です。出血をした際、腹腔鏡手術であれば術者がすぐに吸引し、術野をきれいにして展開できますが、ロボット支援下手術は助手の先生と連携して吸引をすることになるので、対応が遅くなることもあります。だからこそ、拡大視野によって絶対に出血をさせないように心がけて手術をすることが重要であり、安全に配慮しています。

Qこの病院ならではの特徴や強みはありますか。

A

手術室の様子

【有澤先生】難しい症例は大学病院と連携を取り、専門の先生をお招きするなど、高度な治療も提供できるように密な連携体制を整えています。
【北島先生】ロボット支援下手術に関わらず手術に精通した医師がトレーニングを積んでロボット支援下手術を行っています。1つの病院で標準治療を一貫して行えるのはこの規模の病院だからこその強みであり、そういった治療を住み慣れた地域で受けていただきたいという思いで努力をしています。
【宮井先生】病院全体で「ロボット支援下手術を頑張ろう」ということで、看護師や臨床工学技士を含む多職種によるチームで取り組み、ロボット支援下手術の安全性を追求しています。

患者さんへのメッセージ

【北島先生】ロボットと聞くと大袈裟なものを想像されるかもしれませんが手術支援ロボットは手術のクオリティーを上げるための道具です。必ず患者さんへの恩恵が期待できると思っています。症例を重ねることで、技術と安全面の向上に努めております。
【有澤先生・芦澤先生】2023年7月に手術支援ロボットを導入し、前立腺がんの手術を開始しましたが、当科には以前からロボット支援下手術を行ってきた経験豊富な医師が在籍しています。技術的に高いレベルで安定し手術時間も短いのが強みですので、安心してお任せください。
【宮井先生・永井先生】ロボット支援下手術を希望される方は一度相談に来ていただければと思います。

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