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地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立東部地域病院

(東京都 葛飾区)

稲田 英一 院長

最終更新日:2022/07/01

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地域と連携し、必要とされる医療を提供

葛飾、足立、江戸川、墨田、江東、荒川の6区を中心とした東京東部エリアの中核をなす「東京都立東部地域病院」。1990年、東京都と東京都医師会が共同で設立した公益財団法人東京都保健医療公社が運営する医療機関として設立され、1998年には地域医療支援病院となった。地域のニーズを見極め、「必要とされる医療」を柔軟に提供してきた同院を2020年4月から牽引するのは、麻酔科学が専門の稲田英一先生。コロナ禍の着任で、直後は感染症対策に追われたが、「地域の医療機関だけでなく、都立病院や公社病院が連携しあい、助け合うことの重要性を改めて実感し、今後の基盤を作ることができた」とそのプラス面を強調する。創立30周年を迎えた同院の強みや特徴、めざす医療について、稲田院長に話を聞いた。(取材日2020年11月18日/情報更新日2022年7月1日)

着任から半年強、これまでの取り組みをお聞かせください。

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着任した4月は新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の直前だったため、しばらくはその対策に奔走していました。まず取り組んだのは、都の要望に応じて新型コロナの感染者を受け入れつつ、一般診療も継続していくための院内設備、診療体制の充実です。陰圧病室、発熱患者に対応するための陰圧ブースを外来に設置。予定外の対応を迫られる中、東京都保健医療公社に属する病院として当院が果たすべき役割を理解し、徹底した感染対策のもとで診療に尽力してくれたスタッフの存在が非常にありがたかったです。おかげで、医療難民を作りだすことなく必要な医療を提供することができたと思います。まさに、皆の力があったからこそ生き抜いてこられた半年だったと思っています。一方で、漠然とした不安から、小児科などで受診控えがあったことも事実です。こうした患者さんの健康のためにも、安心と安全を追求しながら医療の提供に尽力していくつもりです。

地域との連携はいかがですか。

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ピンチはチャンスという言葉がありますが、コロナ禍を受けて地域の医療機関、および都立、公社病院間の連携はより強化されたと感じています。私自身、こうした緊急事態において、公社病院が地域で果たすべき役割の重要性、都立、公社病院が協力しあって病床の確保や重症患者の受け入れを行うことの必要性を改めて実感しました。葛飾区の医師会の会合にもオンラインを含めて積極的に参加していますが、今後も顔を合わせてお互いの困りごとを共有し、解決する機会を設けていきたいですね。また、地域医療機関から紹介された患者さんを受け入れ、必要に応じてかかりつけの先生と一緒に診る共同診療、検査のみを必要とする患者さんにMRI、CT、RI、マンモグラフィー検査を行って結果をご報告する、検査機器の共同利用も推進しています。高齢化で認知症の患者さんが増えていますから、CTやMRIなどを積極的に活用していただきたいと思います。

重点医療について教えてください。

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二次救急医療機関として、休日夜間の診療や受け入れの円滑化に取り組んできた救急医療をはじめ、循環器医療、小児診療、がん診療には特に注力していきたいと思っています。循環器分野では、通院が困難なペースメーカー患者さんのための遠隔モニタリングシステムを導入したほか、循環器疾患を発症した患者さんの社会復帰をサポートする心血管リハビリをスタートしました。小児医療では、小児がかかりやすい感染症や外傷をはじめ、アレルギー疾患への対応にも力を入れています。症状が安定していて入院治療の必要がない病気のお子さんを預かる病児保育も行っていますので、地域の皆さまにぜひ活用していただきたいです。がん診療については、患者さんの負担に配慮した内視鏡や腹腔鏡を用いた外科治療、外来化学療法、放射線治療を集学的に提供する体制を整えました。術後のリハビリテーションや緩和ケアを含めて、総合的に患者さんを支える医療をめざしています。

災害医療への取り組みもお聞かせいただけますか。

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当院は、災害時に重症・重篤な傷病者を受け入れ、医療救護活動の中心を担う災害拠点病院です。地震や水害時の運用、および施設面の見直しを行うほか、万が一に備えて定期的に訓練を行っています。私も着任後、1日がかりの訓練に参加しました。荒川の氾濫が発生した後、時間軸に沿って起こりうる状況を想定し、どこに患者さんを避難させるか、物の移動をどうするか、といったことをその場で考えて実際に動くというリアルな訓練です。頭で考えているだけではわからなかった課題が見つかったり、感染症と災害の共存についてどうあるべきか意見を交わしたりと、非常に有意義な時間でした。どのスタッフもポジティブに訓練に取り組んでいて、にわかチームながら団結して数々の課題を乗り越えた後は感動的ですらありましたね。訓練で得た経験とチームワークを糧に、「想定外をいかになくすか」を考えながらさらなる災害医療の強化を進めていきたいと思っています。

今後の展望と、地域に皆さんへのメッセージをお聞かせください。

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当院は今後、2022年の地方独立行政法人化を控えています。経営形態が変わっても、地域に必要とされる医療を提供し、高度な専門的治療を実施できる病院として信頼に応えていかなければなりません。先に挙げた重点医療をはじめ、脳卒中、認知症、がん治療など、高齢化に伴ってますますニーズが高まるであろう分野にはさらに力を入れていく予定です。また、これまで培ってきた麻酔科学の知見を生かし、患者さんに痛みに配慮した治療、負担の少ない治療の提供ができるよう積極的に取り組んでいきたいですね。東部地域病院に行けば親身になって診てもらえる、安心して診療を受けられる、と多くの患者さんに評価していただけるような、親しみやすい病院をめざしてまいります。

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稲田 英一 院長

1980年東京大学医学部医学科卒業。マサチューセッツ総合病院麻酔科レジデント、心臓麻酔フェローを経て、1990年からハーバード大学医学部助教授、研究・臨床フェロー。明芳会新葛飾病院副院長、順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座教授、同大学医学部附属順天堂医院副院長を経て、2020年より現職。「患者さんに痛みのない治療を提供したい」と話す柔和な笑顔からは、優しく穏やかな人柄が伝わってくる。

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