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特定医療法人社団 青山会 青木病院

(東京都 調布市)

飛鳥井 望 院長

最終更新日:2024/03/29

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行政機関やかかりつけ医と連携した患者支援

西調布駅から徒歩で12分、多摩川に近い緑豊かな住宅地の一角にある「青木病院」。歌人であり、精神科の医師でもあった斎藤茂吉先生のいとこにあたる青木義作初代理事長・院長が1962年に開設した精神科を中心とした病院だ。近年では認知症疾患医療センターとして、行政機関と連携したさまざまな認知症対策にも取り組んでいる。高齢化が加速する中、認知症の症状そのものが抱える問題に加え、家族や地域社会がどのようにサポートしていくのか支援体制のあり方が大きな課題となっている。飛鳥井望院長は「精神障害で悩まれているご本人やご家族にとって、最後の砦となれる病院でありたいと思っています」と力強く語る。幅広い診療体制を整え、できる限り断らずに患者を受け入れている同院。ニーズに合わせたきめ細かい取り組みについて、具体的に話を聞いた。(取材日2023年12月19日)

青木病院の歴史と併せて現在の診療体制についてお教えください。

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当院を開設した青木義作は戦前、東京の青山にあった「青山脳病院」の副院長を務めていました。その後1945年に「青木神経科」を開業し、1962年に調布の地に70床を有する「青木病院」を開設しました。現在は急性期から慢性期までをカバーする精神科病床が270床、このうち50床が認知症病床です。その他に、高齢ともなると併せ持っていることの多い内科系疾患にも対応可能な内科合併症病棟を50床有しています。患者さんの退院にあたっては、関連施設である訪問看護ステーションや介護老人保健施設などとも連携の上、医師や看護師はじめ精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士、薬剤師、栄養士など多職種がともに患者さんをサポートしています。また精神疾患そのものの治療に併せ、患者さんが円滑に退院後の生活へ移行できるよう、さまざまな支援や環境調整にも力を入れ取り組んでいます。

新型コロナウイルスの流行時はどのように対処されていましたか?

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当院は、東京都立松沢病院、国立精神・神経医療研究センターとともに、「新型コロナウイルス感染症重点医療機関」に手を挙げました。認知症や精神疾患、重度の知的障害や自閉症のある方が新型コロナウイルス感染症にかかった場合、医師や家族の指示に従っていただけないことも多く、感染症管理が非常に難しくなります。そのような理由で一般の医療機関では対応が難しい患者さんの入院を受け入れ、精神科治療と並行しながら感染症治療を行っていました。もともとストレスケア病棟が40床あり、そのうちの19床を新型コロナウイルス感染症専用病棟に転用し、2020年の6月17日から2023年の9月30日までの約3年3ヵ月、松沢病院や国立精神・神経医療研究センターと連携をとりながら、対象の患者さんを数多く受け入れました。当時は風評被害もあり対応するスタッフも苦慮しましたが、本当によく頑張ったと思います。

精神科訪問看護にも注力されているとお聞きしました。

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以前は法人内に訪問看護部門がなく、外部の訪問看護ステーションに外来患者さんの精神科訪問看護をお願いしていました。毎月送られてくる報告書に目を通すのですが、法人内に訪問看護チームがあれば連携はよりスムーズで、患者さんへの対応もスピーディになるのにと常々考えていました。人員の問題もありなかなか実現できずにいたのですが、数年前に訪問看護部門を開設することができ、ようやく軌道に乗った形です。訪問看護では、看護師が患者さんのご自宅に伺い、その方の生活状況や服薬状況などを直接確認できるため、患者さんの状況について外来での診察以上によりリアルで詳細な情報を得ることができます。また、診察室で医師に直接相談するのをためらう患者さんでも、訪問看護師になら気楽に話せるようです。看護師側も、患者さんの生活を直接見ているため具体的なアドバイスがしやすいというメリットがあります。

行政や地域と連携した認知症の支援体制も整えているそうですね。

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当院は、地域の認知症患者さんとそのご家族を支援するため、地域連携型の「認知症疾患医療センター」の指定を受けています。主な活動として、認知症に関する医療相談やご家族や介護者へのサポート、認知症に関する講座の開催など啓発活動、また、地域連携を支える人材の育成などがあります。これとは別に、同じく行政からの委託事業になりますが、「認知症の初期集中支援チーム」についても、調布市では当院が担当しています。認知機能の低下があってもご本人が医療機関への受診を拒否している場合に、当院のスタッフがご本人宅へ直接出向いて早期診断、早期対応に向けた支援を行っています。さらに当院の「物忘れ」の外来では、地域の開業医の先生からご紹介いただいた患者さんの鑑別診断をお受けしています。当院でアセスメントを行った上で治療方針を決め、また開業医の先生にお戻しして、地域で治療を継続していただくという流れになっています。

どのような精神科医療を継続していきたいかお聞かせください。

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その人らしい生活を取り戻せる治療やケアを第一に考えていきたいと思います。患者さん一人ひとりの家庭環境や生い立ちも違いますから、できることや良い面を伸ばし、生きづらさを和らげることができたらと考えています。新型コロナウイルス感染症の対応を経験して感じたのは、認知症や精神疾患、知的障害などがある方は、どうしても社会的弱者になってしまうのだなということです。医療という枠の中でも、弱者として弾き出されてしまうということを改めて痛感しました。このような患者さんの入院治療を受け入れることができる医療機関は非常に少なく、必要な医療につながることができずに途方に暮れる患者さんやご家族の姿をたくさん目にしました。青木病院は、そういった制度の狭間でお困りの方々にも手を差し伸べることができるよう、また、患者さんやご家族にとって最後の砦になれるように、地域に根づいた精神科医療を今後も継続していきたいと思います。

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飛鳥井 望 院長

1977年東京大学医学部卒業。1987年より東京都立墨東病院医長、1992年より東京都精神医学総合研究所副参事研究員、参事研究員、所長代行を経て、2011年東京都医学総合研究所副所長に就任。2015年青木病院副院長に着任し、2017年より現職。専門は精神医学一般、PTSD、悲嘆反応。精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医の資格を持つ。医学博士、東京都医学総合研究所特別客員研究員。

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