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公益財団法人 佐々木研究所附属 杏雲堂病院

(東京都 千代田区)

坂本 優 院長

最終更新日:2024/03/07

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「5つの軸」で地域に応えるホームドクター

1882年、佐々木東洋の手によって創立された「杏雲堂病院」は、国内でも長い歴史を誇る病院だ。2012年に公益財団法人に移行し、現在は佐々木研究所に所属する医療機関として診療を行っている。創立以来脈々と受け継がれてきたバトンを第18代として継承したのが、1988年から同院に勤務する坂本優先生だ。坂本先生は、子宮頸がんに対する先進的な治療で、多くの女性患者の「母になる夢」をかなえるために尽力してきた婦人科診療のスペシャリストである。就任後は、より地域のニーズに合った診療を提供できるよう、「5つの軸」を明確に打ち出して体制の充実を図っている。現在の取り組みと今後の展望について話を聞いた。(取材日2023年12月28日)

お茶の水に古くからある、歴史ある病院ですね。

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1882年、佐々木東洋先生が神田駿河台の地に設立した「杏雲堂醫院」が当院の前身です。初代から第2代にかけて医学研究所としての活動も始まり、臨床と研究の両面から医学の進歩に寄与してきました。現在の場所に新病院が落成したのは1988年。先進的な設備を兼ね備え、提供できる医療の質が高まりました。2012年からは公益財団法人となり、医業をもって社会に貢献することをめざしています。急性期一般病床92床のほか、地域包括ケア病床59床、緩和ケア病床40床を有するケアミックス型の病院で、地域の細かなニーズに応えているのが特徴ですね。当院の周辺には、高度急性期医療に特化して広域から患者を受け入れる大学病院や基幹病院がたくさんありますから、より地域に根差したホームドクターとして幅広いニーズに応えていくことが私たちの役割だと思っています。

先生は、こちらの婦人科で長く診療してこられたと聞きました。

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当院は「このがんなら杏雲堂」をモットーに、がんの研究と治療に励む病院です。私も婦人科の医師として、早期がんから浸潤した難治性のがんまで、先進的な方法を取り入れて治療を行ってきました。中でも特徴的なのが、早期の子宮頸がんに対して、妊娠・出産の可能性を温存しながらの治療が望める「PDT(光線力学療法)」です。従来の子宮頸がんの手術は、メスや高出力レーザーで頸部を切り取る「円錐切除術」が一般的でした。しかし、円錐切除術は、子宮を温存できても、早産になる患者さんが多い傾向にあります。PDTは、腫瘍に反応する光感受性物質を使って、子宮頸部の機能を損なわずにがん細胞を選択的に死滅させることを目的とした手法です。前がん病変の状態であれば、PDTによって円錐切除術と同等の効果をめざしながら妊孕性の温存が図れます。また、浸潤がんであっても、条件によっては広汎子宮頸部摘出術で妊孕性温存が期待できます。

病院の経営に携わって以降、着手されたことを教えてください。

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わかりやすく当院の強みを打ち出し、地域医療のニーズにより速やかに応えられるよう、5つの軸を打ち出して体制の整備に取り組み始めました。5つの軸とは、婦人科疾患の予防と診療を一手に担うレディースセンターの再構築と拡大、腫瘍内科や緩和ケアによる総合的ながん診療、消化器外科や整形外科を中心とした外科系診療部門の強化、プライマリケアを重視した内科系診療部門の強化、検査やリハビリテーションなどの基盤部門の充実です。レディースセンターは2階にあり、患者さんの症状に応じて適切な診療科につないだ後、婦人科・腫瘍内科・消化器外科・病理診断科・放射線科・遺伝子診療科で構成されたチームが診療にあたります。外科系では、特に内視鏡手術の増加をめざして体制を強化しているほか、2024年4月からは泌尿器科も加わることが決まりました。

近隣の病院やクリニックとの連携についてはどうお考えですか?

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複数の病床機能を持つ当院は、急性期医療と回復期医療の両方に対応することができるケアミックス型の病院であることは冒頭でお話ししたとおりです。この特性を生かし、近隣の大学病院で急性期を経過した患者さんを受け入れるポストアキュート、神田医師会をはじめとした近隣の医師会に所属する病院・診療所で症状が急性憎悪した患者さんの在宅復帰を支援するサブアキュートで存在感を発揮していくことが地域における当院の使命であると考えます。スムーズな病病連携、病診連携に向けて、コミュニケーションを深めていきたいですね。

最後に、今後の展望とメッセージをお願いします。

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核となる医療分野を決めたことで、やるべきことが明確になりました。私たちにできること、私たちがやるべきことを見極めて、地域の中で当院に期待されている役割をしっかりと果たしていきたいと思います。また近年、医療の質の高さに期待して来日する外国人の方の受け入れを経済産業省が推進していることもあり、今後はインバウンドへの対応も重要になると考えています。当院では2020年より正式に国際部を設置し、多くの外国人の患者さんを受け入れてきました。地域の患者さんに対する医療と同様に、インバウンド向けの医療も充実させていきたいですね。時代や環境が変わっても、「患者ファースト」の精神で悩みに寄り添い、未来を支えていく病院でありたいという思いはこれからも変わりません。自分に合った診療科に迷わずつながることができ、つながった先で最適な医療を受けられるような仕組みをできるだけ早く整備してまいります。

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坂本 優 院長

1982年東京医科大学医学部卒業。1986年同大学大学院修了。1990〜1992年米国Lawrence Livermore国立研究所、UCSan Francisco研究員。1988年より佐々木研究所附属杏雲堂病院勤務。同年からPDT(光線力学療法)の開発と普及に取り組み、トラケレクトミーと併せて妊孕性の温存をめざしている。2022年~レディースセンター長。東京慈恵会医科大学産婦人科講座客員教授。

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