公益財団法人 佐々木研究所附属 杏雲堂病院
(東京都 千代田区)
椙村 春彦 院長
最終更新日:2026/06/02


中規模病院の利点を生かし医療に貢献
御茶ノ水駅から徒歩2分。神田駿河台の地において、140年以上にわたって「医学の進歩に寄与し、医業をもって社会に貢献する」ことを理念に質の高い医療の提供に努めてきたのが、「杏雲堂病院」だ。大学病院が連なる地域において、より身近な医療の提供をめざしている同院は、がん診療と婦人科、内科系と外科系の4つのセンターを中心に専門性の高い診療も提供。加えて、開業医療機関と大学病院の中間に位置する病院として、地域医療における橋渡し的な役割も担っている。そんな同院の第19代院長を務め、「医療者側の都合ではなく患者さんのニーズに応えることを心がけています」と話す椙村春彦(すぎむら・はるひこ)先生に、診療や今後の展望について話を聞いた。(取材日2026年1月20日)
長い歴史のある病院だと伺いました。

1882年に佐々木東洋先生が神田駿河台の地に設立した「杏雲堂醫院」が当院の前身です。初代から第2代にかけて医学研究所としての活動も始まり、臨床と研究の両面から医学の進歩に寄与してきました。現在の場所に新病院が落成したのは1988年で、先進的な設備を備え、提供できる医療の質が高まりました。2012年からは公益財団法人となり、医療を通じて社会に貢献することをめざしています。そして、当院周辺にはいくつかの大学病院があります。昨今、大学病院は入院期間をできるだけ短くしていますが、ご家族としてはもう少し入院を継続してほしいというケースもあります。また、地域には古くから開業している先生もおり、そうした診療所や高齢者施設で体調を崩す方もいます。当院では、そうした患者さんも積極的に受け入れるなど開業医療機関と大学病院との橋渡し的な役割を担うことで、地域医療に貢献できるよう努めています。
力を入れていることは何ですか?

これまでもあった「レディースセンター」に加え、新たに3つのセンターを開設しました。そのうちの一つが、「がん診療センター」です。当院は、がんの研究で知られた施設であることに加え、臨床面でも力を入れてきました。近年、がん治療は大きく進歩していますが、専門病院で治療を受けたものの「もうできることはありません」と告げられる患者さんも少なくありません。当センターでは、そうした患者さんを最後まで、科学的根拠に基づいて診ていくスタンスを取っています。センター長の佐々木政興先生は国立がん研究センターで長年トレーニングを積んだがん治療の専門家で、保険適用の標準治療を終えた患者さんに対しても、その後の薬物療法や症状緩和のための治療などさまざまな選択肢を提供しています。緩和ケアにも長年力を入れており、医師や看護師などその分野に精通するスタッフが多数いて、近隣の病院などとも連携して、患者さんを受け入れています。
レディースセンターは、どのような診療を行っているのですか?

「レディースセンター」では、婦人科の良性から悪性まで幅広い疾患を対象に診療しています。その特徴の一つは、低侵襲性の治療です。一つ目は内視鏡治療で、松岡和子先生は内視鏡手術のエキスパートであり、ほかにも内視鏡手術を専門とする女性医師が在籍しています。もう一つの低侵襲治療は「PDT(光線力学療法)」です。従来の子宮頸がんの手術は、頸部を切除する「円錐切除術」が一般的でした。しかし、円錐切除術は子宮を温存できても、早産のリスクが高まる傾向にあります。PDTは、腫瘍に反応する光感受性物質を使って、機能を損なわずにがん細胞を選択的に死滅させることをめざす治療です。その一環で、「光線力学的療法用剤」の子宮頸がんへの適応追加に向けて、当院は浜松医科大学などと連携して取り組んでいます。また、男性患者の目を気にせず、リラックスした雰囲気で待ち時間を過ごせるよう、女性専用フロアに診察室を配置しています。
そのほかのセンターの取り組みについても教えてください。

「総合診療部門内科センター」では、総合内科的なスタンスで循環器疾患や消化器疾患を診療しているほか、管理栄養士による糖代謝異常や脂質代謝異常などの管理にも力を入れています。「総合診療部門外科センター」は、消化器外科と整形外科で構成されており、腹痛や腰痛といった症状に対する迅速な診断を行い、治療や手術が必要と判断された場合には、速やかに受けられる体制を整えています。また、この規模の病院で病理診断科と遺伝子診療部門があることも特徴です。病理診断科は、疾患の確定診断を行う診療科であり、科学的根拠に基づいた医療を提供する基盤となっています。遺伝子診療部門では、大学病院やがんセンターで長年診療してきた専門の医師と専門のカウンセラーが、がんをはじめ遺伝が関係する疾患やさまざまな問題について相談に応じています。さらに、放射線科では先進のリニアックを活用し、がんの根治や症状緩和をめざしています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

患者さんファーストは当たり前のことです。例えば、患者さんやご家族が希望するなら、多少長期の入院にも対応する。困っている患者さんがいれば、とにかく診療する。そのような意識を統一して持ち、徹底することで、医療者側の都合ではなく患者さんのニーズに応えることを、スタッフには心がけてほしいと思っています。加えて、当院は開業医療機関と大学病院の中間に位置する病院としての役割を果たしていくことも重要だと考えています。また、当院は開院から144年が経過しました。本当は200年と言いたいところですが、まずは150年をしっかりと見据え、将来的な新病院の建設も視野に入れながら、現在できることで患者さんや地域の要望に応えていくことをめざしています。そして、健康に不安なことがあれば、ぜひ外来を受診してください。さまざまな可能性を考慮しながら診療します。交通の便も良い立地ですので、お気軽に来院いただければと思います。

椙村 春彦 院長
1982年東京大学卒業。1986年同大学大学院修了。国立がんセンター研究所疫学部、東京大学医学部助手、米国NCI Laboratory of Human Carcinogenesis留学、浜松医科大学助教授、同教授、同副学長などを経て、2022年より公益財団法人佐々木研究所所長。2024年より現職。公益財団法人佐々木研究所附属佐々木研究所参与。浜松医科大学名誉教授。医学博士。





