自宅で暮らし続けたいという思いを
医療で支える在宅医療
医療法人社団健育会 石川島記念病院
(東京都 中央区)
最終更新日:2024/12/20
- 保険診療
住み慣れた自宅で最期まで家族とともに暮らしたいという思いは誰にでもあるもの。そんな願いを医療で支えるのが在宅医療の役割だ。2024年10月に在宅医療をスタートした「石川島記念病院」は、地域包括ケア病棟を持つ地域のかかりつけ病院であることを強みに、病院との連携で質の高い在宅医療を展開している。病棟や検査機器といった病院の設備を活用するとともに、在宅医療に精通した医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカーが一丸となって、一体的なサービスに取り組んでいる。「笑顔、優しさ、思いやり」をモットーとする同院の在宅医療について、在宅事業部長の下山直人先生に聞いた。(取材日2024年10月31日)
目次
短期入院や検査にも対応。医師、看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーによるチーム医療でサポート
- Q在宅医療とはどういった医療ですか?
- A
高齢になっても病気になっても自宅で家族と暮らしたいと思う方が継続して自宅で過ごせるように支えていくのが在宅医療です。ケアの現場が患者さんご自身の生活の場に移るため、家の中でお困りのことを中心に血圧や熱などの計測、病院と同じような医療的な処置、訪問リハビリテーションなどを行います。入院前は歩いて生活できていた方が、入院によって歩けなくなりベッドの上で生活するようになることも多く、お体のケアからおむつ交換などサポートの範囲は幅広いです。在宅医療の対象に明確な決まりはありませんが、要介護認定を受け医療的な処置が必要な方や、お一人で買い物や家事などをしての生活が難しい方が対象になります。
- Q在宅医療は、どのような職種の方が関わっているのでしょうか。
- A
当院では、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーがチームとなって訪問診療を行っています。私自身は緩和医療を専門としており、国立がん研究センター中央病院で手術・緩和医療部長、東京慈恵会医科大学大学院緩学和医療教授を務め、その後、ペインクリニック、一般在宅専門診療所、基幹病院の在宅医療部門で、30年以上患者さんのケアにあたってきました。私たちのチームのモットーは、“笑顔、優しさ、思いやり”で、地域の基幹病院や地域の在宅医療を行っている開業医の先生、薬剤師、ソーシャルワーカーとも連携して取り組んでいます。
- Qこちらの病院が提供する在宅医療の強みは何でしょうか。
- A
1つ目は当院が地域包括ケア病床を有する病院であるということです。通常、在宅療養の患者さんが誤嚥性肺炎や膀胱炎、発熱、骨折などを起こしたときは、入院をして専門の先生に診ていただきたいのですが、必ずしも受け入れ先の病院がすぐに見つかるとは限りません。その点、当院は一時的な入院の受け入れが非常にスムーズです。介護疲れの家族のためにレスパイト入院にも対応しており、ご家族を休ませてあげることも可能です。2つ目は、整形外科や循環器内科、消化器内科、皮膚科の医師が在籍、院内にはMRIやCTがそろい、ほぼ当日に検査を受けることができます。これらが同じ組織でシームレスに提供できるのが、当院の在宅医療の強みです。
- Q病院だからこそ提供できる在宅医療もあるのですか?
- A
例えば、在宅医療専門の医療機関だと、輸血ができない場合が多いのですが、当院では濃厚赤血球のみ短期入院で輸血ができるようにしています。急性期病院からも「輸血はできますか?」というお問い合わせをいただいており、そういったにニーズに応えるために在宅医療で輸血ができる環境を整えました。腹水穿刺、胸水穿刺についても携帯エコー器を導入し、在宅で行っています。また、がんの末期の患者さんの疼痛緩和に対する医療用麻薬性鎮痛薬による症状の管理はもちろん、がんの治療中の患者さんの訪問診療や入院も受け入れています。さらに、慢性心不全、慢性呼吸不全、慢性腎不全の患者さんのお看取りにも対応しています。