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医療法人社団健育会 石川島記念病院

(東京都 中央区)

下山 直人 在宅事業部長 の独自取材記事

最終更新日:2024/12/25

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笑顔、優しさ、思いやりの訪問診療

心臓専門病院から回復期リハビリテーション病院へと、時代の流れと地域のニーズに応えるために進化してきた「石川島記念病院」では、地域が今の必要としている医療に応えるため、2024年10月、すべての病棟を地域包括ケア病棟へ移行。それに伴い在宅医療をスタートした。病気になっても住み慣れた自宅で家族とともに過ごしたいという患者の思いをサポートする在宅医療のスタートにあたり、同院がチームリーダーとして迎えたのが下山直人先生だ。下山先生は、これまで麻酔科医として千葉大学病院や国立がん研究センターなどで緩和ケアに取り組み、国内の緩和ケアの黎明期にその普及に努めた一人として「チームによる緩和ケア」を推進。定年後は在宅医療専門の組織で訪問診療を行ってきた。そんな下山先生の経験と同院が持つ入院設備や検査機器、そして何よりも下山先生が大切にする、看護師、薬剤師、リハビリスタッフとのチームワークで、質の高さにこだわった在宅医療で地域への貢献をめざす。そこで、下山先生にスタートしたばかりの同院の在宅医療の特徴や、自身のこれまでの歩みについて聞いた。(取材日2024年10月31日)

下山先生のこれまでの歩みをお聞かせください。

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私はこれまで、国立がん研究センター中央病院で12年、東京慈恵会医科大学で8年勤め、定年後は在宅医療に従事してきました。1990年には千葉大学で、医師、看護師、薬剤師など専門家による緩和ケアチームを立ち上げました。1995年からは米国ニューヨークにあるメモリアルスローンケタリングがんセンターで先進的な緩和ケアチームを学び、帰国後は国立がん研究センター中央病院で本格的な普及活動に携わることになりました。この病院で訪問診療を行うきっかけとなったのは、元厚生労働省医政局長であり、当院を運営する法人の副理事長である岩尾總一郎先生から、当院の訪問診療の立ち上げに尽力してほしいとお声がけいただいたことでした。何もないところからチームをつくり上げ、地域の皆さんに貢献できることは私の生きがいそのものです。「笑顔、優しさ、思いやり」をモットーに、地域の皆さんの支えとなる訪問診療をめざして、日々奮闘しています。

在宅医療に関わるようになったのはどうしてだったのですか?

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大学病院や基幹病院でがんの患者さんを診ていると、おうちに帰りたいという人が多いのですが、実際には患者さんが家に帰りたいと思っても帰れない現実があります。その大きな理由は、在宅医療には地域ごとに温度差があり、熱心な先生や在宅医療チームがあるかないかによって、帰れるか帰れないかが変わってくるからと考えられます。病気の治療後に過ごす場所としては、自宅のほかに、関連病棟、地域の一般病院などさまざまな選択肢があるわけですが、どこで過ごすかを患者さんやご家族が個々の生活背景や環境によって選べる形にしていくことが大切だと考えています。本当は、家で最期を迎えたいと思うすべての患者さんの願いをかなえてあげることができればよいのですが、なかなかそのようにはいかないため、私としては、帰りたいけど帰れないという患者さんが少しでも少なくなるようにという思いで訪問診療に関わるようになりました。

この病院の訪問診療の特徴を教えてください。

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在宅医療は患者さんができるだけ自宅で過ごせるように支援するものですが、やはり限界もあります。例えば骨折や発熱、誤嚥性肺炎などを発症した場合は在宅医療での対応が難しく入院が必要になります。僕が在宅医療専門の施設で仕事をしている中で一番困ったのは入院先を確保することでした。その点、当院には地域包括ケア病棟があり、急に症状が悪化した際にはすぐ入院し必要な治療や検査を受け、改善が見られれば再び自宅での療養を再開できるように体制を整えています。また、ご家族のためのレスパイト入院にも対応しています。さらに当院にはCTやMRIなどの検査機器も備えており、原因追究や治療に役立てています。整形外科専門の医師がいるため、転倒による骨折なども手術が必要かどうかを適切に診断できます。このように在宅医療と入院治療を柔軟に提供できる環境は大きな強みであり、患者さんやご家族に大きな安心感を与えることができると思います。

これまでのご経験をどのように生かしていこうとお考えですか?

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麻酔科の医師としてのキャリアを通じ、がん末期の患者さんだけでなく、心不全や腎不全、呼吸不全、神経筋疾患の末期患者さんの苦痛緩和に力を注いできました。特に非がん患者さんの症状緩和においても、モルヒネなどの適正な使用方法を学び、それを実践してきました。また神経ブロック療法も数多く行ってきました。これらの経験をもとにいくつかの0からのスタートを経験し、それなりに結果を残してきました。この病院も、来てみたら自分の持つ技術を生かせる本当に素晴らしい環境で、何よりもいろいろな仲間が増えてくると、1人ではできなかったことができるようになることがうれしくて。それがチーム医療ですよね。今後は、地域で在宅医療を支えるさまざまな職種の人たちと一緒に取り組んでいきたいですし、入院設備はぜひ在宅医療専門の先生にもぜひ使っていただきたいです。当院の医療資源が、地域の方々にとって心強い存在となればと思っています。

最後に、地域に向けてのメッセージをお願いします。

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短期入院や先進的な機器による検査など、患者さんのための質の高さを重視した医療を提供しています。「1人でできないことはみんなでやろう」の精神で、毎日明るく笑顔で患者さんのもとにお伺いしています。患者さんもご家族も落ち込むようなことが多い中で、僕たちが暗い顔をしていたら不安にさせてしまいますから。笑顔で「僕たちが何とかしますよ」という気持ちで接することを心がけています。在宅医療専門で開業されている先生も多いと思いますが、対応しきれる部分もあれば単独では難しいことも。僕も経験がありますが、本当は困っているけれど仕方ないと諦めていることもあると思います。当院の利点を生かし、そんな先生方のお役に立てるようにするのと同時に、他の在宅医療専門施設や国立がん研究センター中央病院、有明病院といった病院とも連携し、帰りたくても帰れないという患者さんが安心しておうちに帰れるように、一緒に取り組んでいきたいです。

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下山 直人 在宅事業部長

千葉大学医学部卒業。1990年同大学で医師、看護師、薬剤師による緩和ケアチームを結成。1995年米国ニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンターへ留学。1999年国立がんセンターで麻酔科医として従事、2007年からは同センターの緩和ケア研究班班長として緩和ケアに心血を注ぐ。東京慈恵会医科大学大学院緩和医療教授を経て、在宅医療専門組織で訪問診療に取り組む。2024年より現職。

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