東京科学大学病院
(東京都 文京区)
藤井 靖久 病院長
最終更新日:2024/11/26
診療・教育・研究を通じた社会貢献が使命
2021年に医学部附属病院と⻭学部附属病院が⼀体化し誕⽣した「東京科学大学病院」。「世界最⾼⽔準のトータル・ヘルスケアを提供し、⼈々の幸福に貢献する」という理念と、4つの基本⽅針「患者中⼼の良質な全⼈的医療の提供」「⼈間性豊かな医療⼈の育成」「⾼度先進医療の開発と実践」「⼈々の信頼に応える社会に開かれた病院」を掲げ、医科と⻭科の融合により「頭から⾜先まで」全⾝を診ることで、患者の健康に貢献できる医療の提供をめざしている。常に進化を続ける同病院は、2023年には救急医療と⾼度先進医療を提供するための新たな拠点になる「C棟」、別名「機能強化棟」が完成した。⺟体となる東京医科⻭科⼤学も2024年10⽉には東京⼯業⼤学と統合し東京科学大学になり、理⼯学との要素も加わり提供する医療のさらなる発展につながることが期待されている。常に先進医療や難病、感染症対策、災害医療、救急医療、教育などさまざまな分野での社会貢献を続ける「東京科学大学病院」の藤井靖久病院⻑に話を聞いた。(取材⽇2024年1⽉10⽇/情報更新日2024年11月20日)
本格稼働を開始した「機能強化棟」が注目されています。
機能強化棟であるC棟は2023年10⽉から本格稼働しました。⼤地震発⽣時も医療継続が可能な免震装置や約96時間停電に対応できる非常⽤発電機、太陽光発電パネルも設置。ERは手術室や重症処置室など10室を備えた救命救急センターやER-ICU-HCU30床を備えたER専⽤病棟を有します。ハイブリッドER室は救急初期初療、緊急CT検査、緊急⾎管造影検査、緊急⼿術が1室で可能で、移動時間を短縮し⾼度で迅速な救急医療を提供します。ICU-HCU病棟には25 床の完全個室があり、快適な空間を提供し、院内感染も防ぎやすい構造です。またER病棟含め8室が陰圧を保てる構造で空気感染する感染症の方にも安全に配慮して医療を提供できます。⼿術室ではハイブリッド⼿術やロボット⽀援下⼿術も可能。医療器材の洗浄・滅菌管理等を⾏う材料部では停電時も滅菌処理などができ、1階ホールも緊急時に救急医療ができる設備が整っています。
災害医療の分野でも日本をリードするほどの活躍をされています。
私たちは社会貢献の⼀環として災害医療も非常に重視しております。災害の超急性期に緊急医療を提供するDMAT(災害派遣医療チーム)や、災害後⻑期間にわたって医療⽀援と健康管理に従事するJMAT(⽇本医師会災害医療チーム)の隊員も多く在籍しています。東⽇本⼤震災や⻄⽇本豪⾬、熊本地震の際にも派遣しましたし、海外の災害現場でも活躍してくれました。この度の能登半島地震でもDMAT、JMATチームに加え災害時感染制御支援チーム(DICT)等多くの医療チームが現地で貢献してくれました。またDMAT隊員への研修を⾏う役割も担い活躍している職員も多く、広く⽇本の災害医療のブラッシュアップにも貢献できるよう努めております。ただ東京で災害が発⽣した際には災害医療は当院だけで担えるものではありませんので、地元・⽂京区にある他の病院とも連携体制を構築し、機能強化棟とともに備えを強化したいと考えています。
先進的な研究活動の中でも注目されている分野はありますか?
現在の注目分野ではロボット⽀援下⼿術ですね。ロボット⽀援下⼿術の分野では、⽇本で最初に⾏われるようになったのは泌尿器科の前⽴腺⼿術でしたが、今では多くの診療科の⼿術が保険適応になりました。当院では⼤腸肛門外科と泌尿器科を筆頭に、多くの外科系診療科で多数のロボット支援手術を施行し⾼いレベルの実績を示しています。最近、⼼臓⾎管外科もロボット支援手術を開始しました。3台の⼿術⽀援ロボットシステムが稼働し、さらに東京⼯業⼤学と共同研究した新しい構造の⼿術⽀援ロボットシステムも稼働を開始しました。2024年10⽉には東京⼯業⼤学と東京医科⻭科⼤学の統合され、理⼯学分野との融合により新しい機器の開発という分野でも開発スピードが加速し、さらに医療の形で社会貢献ができるものと考えております。
他に、大学が統合されることでの良い影響はありますか?
統合により当院は、医⻭理⼯連携の場「リサーチホスピタル」の役割も担うことになります。臨床とエンジニアリングが同居し、互いに意思の疎通も今まで以上に図れますし、⾰新的医療機器の⽣まれる場としてさらなる活躍が期待できます。また機器の使⽤と開発が⼀体化することで、新しい機器の開発はもとより、機能向上の速度も上がると思います。現在私たちは低分⼦医薬品、抗体医薬品に続く第3の医薬品といわれている核酸医薬品という医薬品の分野にも注目し、鋭意研究・開発を⾏っていますが、その分野でも東京⼯業⼤学の⾼度な技術開発能⼒を⽣かせるのではないかと考えています。新型コロナウイルス感染症の流⾏に対応し感染症部門を⽴ち上げ、診療・研究の分野で成果が残せたと⾃負しておりますが、ワクチンや新薬開発の分野では⼒が及びませんでした。統合によりそうした分野でも成果の出せる体制が構築できるものと思っております。
最後に病院長からのメッセージをお願いします。
私は「⼒を合わせて患者さんと仲間たちを守る」という⾔葉を病院⻑就任にあたり所信表明させていただました。病院として患者さんの健康を守ることが第⼀なのはもちろんですが、働く職員が幸せでなくてはより良い医療は成し得ません。そのための労働環境の整備も私⾃⾝の使命であると考えおり、誰でも誰にでも本⾳で考え意⾒できる環境、職種や職位によらない垣根を超えたリーダーシップを誰もが発揮できる環境づくりに努めています。これは統合後の⼤学のコアバリューの⼀つとする「⾃由でフラットな⽂化」にも通じます。私たち「東京科学大学病院」は、診療、教育、研究という3つの柱を通じて広く社会貢献することを使命としています。「世界最⾼⽔準のトータル・ヘルスケアを提供し、⼈々の幸福に貢献する」という理念のもと、今後も皆さまの健康を守るために真摯に取り組んでまいります。
藤井 靖久 病院長
1988年東京医科⻭科⼤学医学部医学科卒業。同⼤医学部附属病院(現・東京科学大学病院)泌尿器科勤務、⽶国ピッツバーグ⼤学およびルイビル⼤学内分泌代謝学教室博⼠研究員、がん研究会有明病院泌尿器科副部⻑を経て東京医科⻭科⼤学⼤学院腎泌尿器外科学教授。2023年より4⽉現職。あれこれ考え1駅分の散歩が⽇課。新しい発⾒のある街歩き、映画鑑賞や美術展、クラシック⾳楽、近代建築巡りなど短時間の気分転換が好き。