手術痕や術後の痛みにも配慮した
甲状腺腫瘍の内視鏡手術
学校法人 国際医療福祉大学三田病院
(東京都 港区)
最終更新日:2026/08/27


- 保険診療
甲状腺は体の代謝機能を調節するホルモンを分泌する組織で、代表的な病気としてホルモン分泌機能に不具合が起こる病気のほか、甲状腺腫瘍などが考えられる。機能性の病気は薬物治療が中心で、悪性の甲状腺腫瘍の場合は一般的に手術が治療の第一選択となる。一方、良性腫瘍は腫瘍の状態により経過観察か手術かの対応は異なるという。このような甲状腺腫瘍の治療に詳しい「国際医療福祉大学三田病院」の池田佳史病院長は、「手術適応の場合も、現在は症例によっては首を正面から切開しない内視鏡手術が可能になっています」と話す。首は目立ちやすい部分だけに、手術痕が非常に小さい内視鏡手術なら患者の体への負担軽減やQOLの向上に役立つと考えられる。そこで甲状腺腫瘍の内視鏡手術の詳細について池田病院長に詳しく聞いた。
目次
手術から経過観察まで対処が多様な甲状腺腫瘍。導入が進む内視鏡手術にも注目
- Q甲状腺腫瘍の種類と発症しやすい年齢などを教えてください。
- A

甲状腺腫瘍の内視鏡手術を専門とする池田病院長
甲状腺がんは組織型の違いにより、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん、低分化がんに大別され、甲状腺に悪性リンパ腫ができる場合もあります。このうち乳頭がんは甲状腺がんの8割以上を占め、一般的に進行が遅く良好な予後が見込めます。一方、良性腫瘍は濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、嚢胞などに分けられます。こうした甲状腺腫瘍は、お子さんから高齢の患者さんまで満遍なく発症し、女性に多い病気ですが、男性も罹患します。首にしこりができた、声がかれる・かすれる、飲み込みづらいなどの症状や、かかりつけ医から検査の勧めがあったら、早めに甲状腺・内分泌の専門家を受診してください。
- Q甲状腺腫瘍の中で手術適応になるのはどんな症例ですか?
- A
悪性腫瘍、いわゆる甲状腺がんは一般的に手術適応で、超音波検査などで良性と悪性の判断がつきにくい場合は、腫瘍の組織を取り出して調べる穿刺吸引細胞診の結果も参考にします。良性腫瘍は経過観察が基本ですが、腫瘍の大きさが3cm程度で手術を検討、4cm以上は手術推奨とされます。命に関わる病気ではないものの、首のしこりが目立つ、しこりが気道を圧迫して呼吸がしづらい、などのデメリットも考慮し、「手術を行うかどうかは患者さんと相談の上で決定する」という相対的適応となっています。また穿刺吸引細胞診にて良性・悪性の判別がしづらい腫瘍も手術の相対的適応です。
- Q内視鏡治療のメリットや適応について教えてください。
- A

以前より手術痕にも配慮した内視鏡手術に取り組んできた同院
通常の手術では、首の根元辺りに横に7〜8cmの切開した手術痕が残ります。しかし内視鏡手術では、前胸部や脇の下などから内視鏡を挿入して病変を切除するため、目立ちにくい場所に非常に小さな手術痕が残る程度です。頸部を切開しない分、術後の痛みの軽減も期待できます。内視鏡手術を行う適応は医療機関により多少差があり、当院では良性腫瘍は7cm以下で、胸の奥の縦隔深くまで進展していない場合、甲状腺がんは2.5cm未満でリンパ節の腫れやリンパ節転移がない場合に、内視鏡手術を検討しています。悪性腫瘍の場合は、リンパ節郭清も内視鏡的に追加します。
- Q内視鏡手術の流れや治療後のケアはどうなりますか?
- A
当院の場合、初診時に頭頸部の超音波検査を行い、必要に応じて穿刺吸引細胞診、血液検査を行います。これらをもとに悪性腫瘍か良性腫瘍かを判断し、良性腫瘍の場合は手術適応や相対的適応、経過観察などの治療方針も検討します。治療が手術に決まったら各種の検査を行い、内視鏡手術とするか開頸手術とするか、患者さんと相談します。術前検査に問題がなければ手術の日程を決めます。内視鏡手術は平均して良性腫瘍で2時間半から3時間ほど、悪性腫瘍は3時間から3時間半ほど、入院期間は6日程度です。退院後は経過観察で定期的に通院していただき、全摘出した患者さんは甲状腺の機能を補うために甲状腺ホルモン剤の服用が必須となります。
- Qではこちらの内視鏡手術の強みをお聞かせください。
- A

手術痕が残りにくい治療法が実践できる医師の育成にも尽力する
甲状腺腫瘍の内視鏡手術は1997年にフランスで始まり、私も同時期から国内での内視鏡手術に取り組んできました。1999年には「腋窩アプローチによる内視鏡手術」を考案し、以来20年以上内視鏡手術を行ってきた経験は強みでしょう。当院でも内視鏡手術を多数実施し、スタッフも習熟しています。また内視鏡手術は手術箇所をモニター画面で間近に見られるため、甲状腺のすぐそばを通る大事な神経を傷つけず、病変やリンパ節を残さず切除できると思います。当院では2025年4月から2026年3月に行った甲状腺腫瘍の手術81例のうち内視鏡手術は67例で、すべて内視鏡にて完遂しています。





