医療法人順正会 横浜鶴ヶ峰病院
(神奈川県 横浜市旭区)
武藤 治 病院長
最終更新日:2024/07/16
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救急と訪問診療に注力し地域医療に貢献
開院から40年以上、地域に密着した医療を提供し続けている「横浜鶴ヶ峰病院」は、新型コロナウイルスが収束しつつある中で、これまで以上に地域のニーズに応えるため新しい一歩を踏み出した。同院が担う役目の一つである二次救急では、高齢者の発熱や骨折などを中心に、内科系、整形外科系の疾患に広く対応し、応需率も増えつつあるという。整形外科では三次救急以外はほぼ受け入れられる体制が整い、各分野のスペシャリストが集結し先端の手術を提供。内科系では、認知症の外来や血液内科など専門性の高い診療も展開する。訪問診療にも注力し、急性期から在宅まで切れ目のない医療をめざしている。「地域の病院はスペシャリストでありゼネラリストであるべき」と話す武藤治病院長。真の意味で地域に開かれた病院をめざす同院の取り組みについて聞いた。(取材日2024年6月13日)
注力している救急医療の取り組みについて教えてください。
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当院は二次救急施設ではありますが、新型コロナウイルス感染症が流行しだした当初は発熱患者さんを受け入れておらず、救急車の受け入れ台数は減る一方でした。そこで私が2022年に病院長に就任した際、真っ先に新型コロナウイルス感染症の患者さんの受け入れを開始し、病棟を造り、陰圧室を設置し対応してきました。その後5類感染症へ移行し通常どおりの救急の外来対応が可能になり、本来は受け入れるべき患者さんをどうしてもお断りせざるを得ない心苦しい時期もありましたが、2024年4月に創立以来力を入れている整形外科と内科を中心とした現在の二次救急の体制を整えることができました。応需率もトータルで上がってきており、常勤医のいる日中帯についてはほぼ受け入れが可能な状態を保っています。今後は地域の救急隊に搬送先として当院を選んでいただけるよう、積極的な情報発信とさらなる救急体制の充実を図り、信頼回復に努めていきたいです。
訪問診療にも力を入れているとお聞きしました。
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二次救急の病院が訪問診療で差別化を図るためには、24時間365日、在宅で体調が悪くなった方を受け入れる体制が必要です。そこで当院では、内科の医師に加えて、腹部外科を専門にしながらもゼネラリストとしても信頼できる医師が訪問診療を担当することになり、24時間365日、全身管理のできる体制が整いました。高齢になり足腰が悪くなることで通院しづらくなるのは、残念ながら自然の流れです。そのような状況で通い慣れた病院の訪問診療を受けられることは、患者さんにとってメリットが大きいと思います。体調を崩したりけがをされたときは、在宅での環境を整え、当院の訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションを利用していただければと思います。また、当院は介護医療院も併設しており、自宅に戻るのが難しい場合は介護医療院に入所することも可能です。地域の二次救急とともに地域完結の高齢者医療にも一歩ずつ取り組んでいます。
看板である整形外科についてはいかがでしょうか。
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外傷については、三次救急に該当する命に関わるもの以外は当院で対応可能です。頸椎の手術では、冨永泰弘脊椎外科部長が前方固定術と後方固定術の両方を実施、腰椎の手術では侵襲の少ない高度な側方アプローチを行っています。その他、ご高齢者の圧迫骨折に対するセメント留置術、若年者への椎間板内酵素注入療法のほか、麻酔科の医師がブロック注射に対応。今後も脊髄刺激療法など新しい治療を積極的に導入していきたいと考えています。股関節は人工股関節手術の中でも高い技量が必要とされる前方アプローチを習得している石井聖也整形外科部長が人工膝関節手術とともに担当。若者の膝のけがについては肩・肘・スポーツ整形外科が専門で関節鏡外科の技術を持つ渡邊寿人先生が治療にあたっています。また、膝関節が専門の分院院長である本田秀樹先生が週に一度、当院で執刀しています。このように各分野のエキスパートがそろい、充実の診療を展開しています。
内科系で特徴的な診療科はありますか。
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ニーズの高い認知症の診療については、神経内科が専門の島田佳明副院長を中心に「物忘れの外来」という形で精神科の先生との連携で取り組んでいます。また、当院は現在、数多くの内視鏡検査を行っていますが、将来的には検査で見つかった病気の治療まで当院で完結できることを目標としています。そこで今年から横浜市立大学病院の消化器内科と連携し研鑽を積むことで、ゆくゆくは当院で内視鏡治療ができるよう体制を整えていきたいと考えています。それから、少し特色のある診療科として挙げられるのが先先代の院長であった石山泰二郎先生のご専門であった血液内科で、2人体制で診療しています。血液内科は先進的な治療とその後のフォローの二極化傾向にありますが、当院では維持期の患者さんを受け入れています。抗がん剤の副作用や体調管理など、コメディカルとともに情報をアップデートして、十分にサポートできるように病院全体で勉強中です。
最後に、地域に向けてのメッセージをお願いします。
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私は大学病院に3年間在籍していましたが、もともとは「より地域に根差した医療を提供したい」という思いがありました。地域の病院というのはゼネラリストでありスペシャリストであるべきだと考えます。この地域に「鶴ヶ峰病院があってよかった」と思っていただけるような、真の意味で地域に開かれた病院となるよう、診療科や分野を超えてみんなで地域の病院としての任務を果たしていければと思います。昔は医療従事者は病院で患者さんを待っているというイメージでしたが、訪問診療や健康診断など、地域に出ていく役割も増えています。そういった機会に、実は地域のニーズに応えられる体制が整っている病院だということを知っていただきご利用いただくことで、少しずつ病院が地域に根づいていければと思います。横浜に鶴ヶ峰病院があることを皆さんに知っていただくため、地域になるべく顔を出し、地域に開かれた病院をつくっていきたいです。
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武藤 治 病院長
2001年順天堂大学卒業後、同大学医学部整形外科学教室に入局。研修を経て、関連病院勤務、同教室助教、江東病院整形外科医長などを経て2018年に横浜鶴ヶ峰病院整形外科へ。同病院整形外科部長、副院長などを経て、2022年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医。専門は、脊椎脊髄外科、慢性疼痛、骨粗しょう症、人工関節など。週末には、自身の息子が所属する野球チームの監督も務める。