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医療法人社団 京浜会 京浜病院

(東京都 大田区)

熊谷 頼佳 病院長

最終更新日:2021/05/26

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回復に向けた療養という新しい形をめざして

大田区大森南1丁目の産業道路、国道131号沿いに並ぶ「京浜病院」は、京急本線の梅屋敷駅から歩いて15分弱、JR京浜東北線の大森、蒲田両駅からバスでもアクセス可能だ。豊富な経験を生かしたオリジナリティーあふれる認知症治療を中心に、蒲田エリアの高齢者医療において、役割を果たしている。小児科の医師で医療行政にも携わった祖父、エンジニアから外科の医師に転身した父の後を継ぎ、3代目院長を務める熊谷頼佳院長は、東京大学病院などで臨床研究に従事したのちに、病院経営に参画。1992年から同院の院長を務めている。認知症を脳の生活習慣病と捉える新しい視点と、独自の予防、治療の展開により、患者やその家族はもちろん、地域の医療従事者からも親しまれている。「すべては患者さんとご家族に笑顔を取り戻していただくため。現実に即した日本らしい療養病院の新しいモデルを、地域とともに実現していきたい」と語る熊谷院長に、医療、介護がハイブリッドに機能する、これからの高齢者医療について話しを聞いた。(取材日2018年6月20日/情報更新日2021年5月13日)

貴院の成り立ちと、特徴について教えていただけますか?

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小児科の医師だった祖父が本郷で開業した医院が当院の起こりです。その後、「子どもたちをもっと空気の良い海の近くで見守りたい」との思いから当地へ移転してきました。父は医学部に入学したものの、夢を捨てきれずエンジニアとして就職、しかし祖父の他界をきっかけに医学部に再入学して医師になった、少し異色の経歴を持つ2代目です。技術者としての力学的な計算力を生かして新しい術式を発表したり、工学的な経験を生かせる医療として人工透析に早い時期から取り組んでいたりしていました。以前は外科、内科、整形外科、脳神経外科などを扱う救急病院としての役割を果たしてきましたが、時代の流れとともに病院としての方針を転換。現在は高齢者への慢性期医療を軸に、回復をめざす新しい形の療養病院としての役割を模索しています。

回復をめざす新しい形の療養病院とは?

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従来の医療行政では、医療を急性期、回復期、慢性期と分けてきました。しかし、現実のニーズに即して考えると、回復期と慢性期の垣根は今後なくなっていくと考えられます。寝たきり患者の終の住処といった様相だった慢性期医療ですが、慢性期医療の発展は著しく、患者に対して「できること」も急速に広がっているのです。当院では、急性疾患の対応が完了した高齢患者に対し、60〜90日のリハビリテーションを行い、最終的には在宅や施設での療養に戻ることをめざした医療を提供しています。そのためには、従来のように医療と介護の間に溝があってはいけません。慢性期医療においては医療者と介護者が手を取り合って患者に向き合い、ハイブリッドケアを実践する必要があるのです。

貴院の医療連携について伺えますか?

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当院では大学病院から教授を招いて診療を行うことで、常に新しい情報や知識を取り入れているほか、治療面でも密な連携を心がけています。当院の患者さんで手術などの対応が必要になれば速やかに大学病院へお送りすることが可能ですし、逆に大学病院では管理の難しい慢性医療やリハビリテーションを受け持つことで、互いに補完し合っているのです。また、在宅での療養を目的とした慢性期医療を展開するうえで、退院の際には地域の開業医や介護者との連携も強固に行っています。地域の医療連携というと、これまでは高度急性期病院のベッドを空けるため、患者を上から下へ流すような形のものが中心でしたが、今後必要となるのは縦ではなく横の連携です。複数の医師、コメディカルが同等な立場でつながり、患者の状態に合わせて手を取り合っていくことが重要なのです。当院では20年ほど前から勉強会などによる仲間作りに取り組んできました。

認知症治療はもちろん、透析や健診にも力を入れているのですね。

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長年のノウハウに基づく独自の認知症診療とケアを行っています。実は認知症にも病態があり、改善が期待できるケースも少なくありません。アルツハイマー型認知症においては、症状を3段階に分け、時期に応じた治療と介護を実施。記憶障害などの中核症状の改善は難しくても、せん妄、徘徊などの周辺症状については改善が見込まれてきています。合わせて、一般に「床ずれ」とも呼ばれる褥瘡(じょくそう)をつくらない看護にも力を入れています。実は栄養によっても褥瘡の状態が左右されることがわかり、当院では微量元素を添加した流動食などを開発し、予防の一環として展開しています。また人工透析についても入院患者さんはもちろん、通院の患者さんにも対応しています。送迎バスなどもありますので、近隣の方には気軽に利用いただきたいですね。そのほか各種健診も対応しており、近年利用いただく地域の方や企業さんも増えております。

今後の展望と、読者へのメッセージをお願いできますか?

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2019年2月から新京浜病院の病床を介護療養型から医療療養型へと転換しました。圏域のニーズにお応えする、地域包括ケアシステムの構築をめざしています。当院単独では実現不可能でも、同じ志を持った仲間が集まり、力を合わせることで、超高齢化社会を見据えた「蒲田モデル」と呼べるものを作りあげることができると信じています。これまで研鑽してきた認知症治療を軸に、地域における在宅介護の軸としての役割を果たしていきたいと考えています。性格も専門分野も異なる祖父、父、私ですが、祖父は「子どもを救いたい」、父は「人の役に立ちたい」、私は「お年寄りが好きで笑顔が見たい」と、人が好きなところは共通しています。患者さんもご家族も一人ではありません。認知症などの悩みを抱え込んで苦しまないでください。当院では患者さん一人ひとりに寄り添った医療をしていきます。

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熊谷 頼佳 病院長

1977年慶應義塾大学医学部卒業後、東京大学脳神経外科入局。東京大学の関連病院などで臨床研究に携わったのち、1992年より現職。祖父と父親とも医師という医師家系で育つ。オリジナリティーあふれる認知症ケアの発案のほか、地域が一丸となった医療サービスの実現をめざして院外活動にも積極的に参加。認知症や地域医療に関する著書多数。

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