横浜市立市民病院
(神奈川県 横浜市神奈川区)
中澤 明尋 病院長
最終更新日:2024/08/30


市民の「最後の砦」として、役割を果たす
横浜市の中心部にありながら、緑豊かな三ツ沢公園に隣接する素晴らしい環境も魅力の「横浜市立市民病院」。救急医療や高度急性期医療、小児・周産期医療に加え、高度がん診療の拠点としても重要な役割を果たす。災害拠点病院や第一種感染症指定医療機関としての使命も持ち、まさに「横浜市民の健康を守る最後の砦」として大きな存在感を放っている。2023年4月より、そんな同院の病院長を務めるのが、中澤明尋先生。整形外科の医師として、移転前に保土ケ谷区にあった同院で初期研修医時代を過ごし、複数回の転勤を経ながら3度の入職と20年以上の勤務を経験したといい、同院との深い縁を持つ。「医師はもちろん、看護師、薬剤師、技師などの医療専門職、事務職にいたるまで、良い人材がそろっています。病院を愛し、懸命に働く医療スタッフの質の高さが当院の強みです」と笑顔で語る中澤病院長に、改めて同院の特徴や取り組みなどを聞いた。(取材日2024年6月4日)
2020年に新築移転されてから、5年目を迎えられたのですね。

はい。移転の数年前から医療機器の刷新を準備してきましたが一度にすべて実現することは困難。段階的に先進機器の導入を進め、ようやくほぼ計画どおりの体制が整った状況です。呼吸器外科、消化器外科、泌尿器科、産婦人科など幅広い診療科で、手術支援ロボットの活用による高精度・低侵襲手術を実現。懸垂型の血管造影装置を設置したハイブリッド手術室も昨年度より稼働しており、カテーテル治療と外科手術の同時進行や、心臓弁膜症の先進的なカテーテル治療であるTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)も可能となりました。また、局所的に高濃度の放射線を照射できる高精度放射線治療機器も2台に増設し、他の部分への影響を最小限に抑えられる強度変調放射線治療(IMRT)の高まるニーズにも応えています。さらに、チーム医療にも注力しており、前立腺・膀胱や乳腺など、専門の部門を立ち上げて多職種連携によりサポートしています。
今後力を注ぎたい分野があれば教えてください。

超高齢社会に対応する「予防医療」には力を入れていきたいと考えています。整形外科の医師として長年診療し、現在も外来で患者さんと接していますが、がんなどの疾病治療が進歩した現代、健康寿命延伸のために大切となるのは「いかに寝たきりにさせないか」だというのが実感です。当院では、オリジナルの「フレイル・ロコモ・骨粗しょう症検診」にて骨折リスクや運動機能を評価し、生活習慣や運動、食事に関する指導を行っています。また、院内レストランとのコラボレーションにより、メタボリックシンドロームや骨粗しょう症、生活習慣病などの疾病予防をめざすレシピの開発・提供にも取り組んでいます。従来、病院とは「病気になったら来る所」でしたが、今後は「健康になるために来る所」へと皆さんの意識を変えていけたらと考えています。健康寿命を延ばす拠点として、公園に隣接する立地も生かしながら、楽しいイベントなども企画していければと思います。
改めて、病院の強みはどこにあると感じていらっしゃいますか。

医師はもちろん、看護師、薬剤師、技師などの医療専門職、事務職にいたるまで、医療スタッフに良い人材がそろっている点です。私自身も長く縁のあるこの病院に愛着を持っていますが、同様に当院を愛し、一生懸命に働いてくれているスタッフこそ、当院の何よりの魅力であり、守っていくべき財産だと感じています。いかに職員の満足度を上げるかが非常に重要であり、そのためには働く環境を改善し、金銭面や休暇などの労働条件に限らない、働きがいといったものを向上していく必要があると考えています。現場に余裕を生み出すために知恵を絞り、例えば、回診時の電子カルテ記載に音声入力を導入したり、薬剤情報までを一元管理できるマイナンバーカードの活用を推進したりといった技術的な可能性を探っています。病院長として全体を見渡すことが求められますが、それ以上に医師として現場の視点を忘れずに対応していきたいのです。
災害拠点病院など、多様な役割を担っていらっしゃいますね。

市民の「最後の砦」として、有事の際にも医療を継続することが当院には求められます。24時間体制で救急医療を実践することはもちろん、災害発生時にも最大1週間程度の自立活動を継続できるよう、自家発電などの設備や備蓄を整えています。津波リスクの低い高台に位置し、隣接公園との連携によりドクターヘリでの搬送にも対応可能です。また、県内の第一種感染症指定医療機関として、先のコロナ禍では率先して新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ、感染症内科のスタッフだけでなく全職員が一丸となって対応しました。医師会を通して地域開業医との連携も進め、顔の見える関係づくりにも取り組んでいます。外国人患者受入れ医療機関の認証も受けており、人材とツールの活用による多言語対応も推進中です。
読者に向けて、ひと言メッセージをお願いします。

地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、災害拠点病院、地域周産期母子医療センター、第一種感染症指定医療機関として、横浜市民の健康を守る「最後の砦」の役割を果たすことが、当院の使命であると考えています。24時間体制での救急対応や災害時の緊急医療の提供を通じて、市民にとっての「安心とつながりの拠点」となれれば幸いです。高度急性期医療と感染症対策を兼ね備えた取り組みもあり、いざという時に頼りにしていただけるよう、また、人間ドックや市民公開講座の充実化など、特に病気でない時にも健康増進のためにご活用いただけるよう、これからもさまざまな取り組みを進めてまいります。

中澤 明尋 病院長
長野県出身。1986年横浜市立大学医学部卒業。横浜市立市民病院で初期研修医時代を過ごし、藤沢市民病院や横浜市立大学附属病院などでの勤務を経験後、2004年横浜市立市民病院に入職。整形外科部長、副病院長を経て2023年4月より現職。日本整形外科学会整形外科専門医。音楽、特にロックを愛好しており、野毛の酒場めぐりも趣味の一つ。
自由診療費用の目安
自由診療とは・フレイル・ロコモ・骨粗しょう症検診/3万9600円
・人間ドック:
がんコース/4万7300円~
心臓コース/5万6100円
肝胆膵コース/3万4100円~
・脳ドック/5万6100円~