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医療法人社団正心会 よしの病院

(東京都 町田市)

手島 正大 理事長

最終更新日:2020/11/25

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早期社会復帰をめざす手厚い専門的ケア

町田駅よりバスで約20分、日大三高入口バス停から徒歩2分の小高い丘の上に、森に包まれた「よしの病院」はある。外壁が柔らかな曲線を描くピンクの建物に入ると、待合室の奥に飼われている10数羽の鳩が目に入った。手島正大理事長自らが描いたという絵画とともに、温かな空間を演出している。院内は、開院から50年を過ぎているようには思えない、明るく清潔感のある雰囲気。地域との交流も活発で、「開かれた病院」をめざす同院の志がうかがえる。治療においては、アルコール依存症や慢性的な統合失調症、認知症に対するケアを展開。専門性の高さに加え、PSW(精神保健福祉士)の充実も、患者の早期社会復帰を後押ししている。長年にわたり精神科の医療に注力してきた手島理事長から、精神疾患の難しさや、精神科と社会との関わりなどについて、話を聞いた。
(取材日2016年1月19日)

病院の主な取り組みについて教えてください。

1

当院は精神科・神経科の病院として、1965年に開設されました。166床の中に、アルコール依存症治療の専門病棟を持っております。患者さんの主な症状は、慢性的な統合失調症が中心で、最近は認知症の方も増加中です。当院では早期の社会復帰を目標に掲げており、入院期間を短くして社会復帰を後押しするのが、精神保健福祉士というPSWと呼ばれるスタッフたち。166床の規模で7人配置しているのは珍しいかもしれませんね。彼らが、患者さんを社会復帰させるために奔走するわけです。老人ホームや認知症施設であるグループホームなど、退院後に生活を送る場所を探したり、経済的に問題があれば、自立支援医療の適用を受けられるよう尽力したりしています。

多くの協力によって治療やケアが行われているのですね。

2

精神疾患は、医師だけでなく、家族や周りにいる人たちが見守って相談に乗ることが不可欠です。それが患者さんの社会復帰につながるので、患者家族同士で悩みを分かち合う家族会や、体験談を語り合う会の開催などのシステムづくりを行ってきました。また、地域住民の方々のご理解を得るためには、開かれた環境が大切です。例えば、夏に駐車場で盆踊りを開催するのですが、町内会などを通じて地域の方たちをご招待しているんです。地域の方も入院患者さんも一緒になって踊られていたり、病室までは案内できませんが、作業療法室などを見学していただいたりと、閉鎖的なイメージの払拭につなげています。医療連携という意味では、外部の内科の医師に入院患者さんの定期的な診療をお願いしています。アルコール依存症は発がんリスクが高いため、食道の内視鏡を専門とする先生に協力いただくことも。大学病院や総合病院との連携も密に行っています。

手島先生が理事長に就任されるまでの経緯を教えてください。

3

私が医師になった1970年代頃は、まだまだ精神科というものに対しての偏見が根強い時代でした。精神科のクリニックは、世間から患者さんを隔離させるための施設のような位置づけでしかなかったのです。そんな中、私は「精神疾患が特別なことではなくなる時代が来る」と予想していました。こうした考えから、専門家が密度の濃い専門知識で患者さんを援助するべく、当時珍しかった精神科のクリニックを開業したのです。その後は、最初のクリニックを含め、3ヵ所でクリニックを展開。世間で「うつ病」がクローズアップされてきたのも、この頃からですね。当院から声がかかったのは、3つ目のクリニックを横浜の関内に開いた1993年のこと。着任当初から、当時の社会問題でもあったアルコール依存症の専用病棟をつくり、保健所の嘱託医としてアルコール依存症の相談も担当してきました。現在も、3つのクリニックとは連携した動きを取っています。

アルコール依存症の治療について教えてください。

4

当院では入院の際、必ずご家族と患者さんに、お酒をやめることを約束してもらっています。「今のままではご家族と一緒に生活できない」という現実を突きつけ、治療への動機づけを行うことを入院の条件にしているんです。精神疾患に「入院すれば治る」という幻想はあり得ません。どの病気もほぼ慢性化しますから、ご家族もそれなりの知識を得て協力してもらうことが不可欠です。一般的に病気の対応には、原因を究明し、取り除く「治癒」と、原因が不明なまま症状だけを取り除く「寛解」があります。精神疾患には、性格や気質による個人差や、遺伝による影響、育ってきた環境や経験も加わるため、その治療の多くはこの「寛解」に留まっているんです。そうした中で、たとえ原因の究明や治癒は難しくとも、患者さんが社会生活を営めるよう、できる限りサポートしていくのがわれわれの役目です。

最後に、一般社会と精神疾患の関わりについてお聞かせください。

5

新型うつ病については、個人のパーソナリティーによる部分が大きいかと思われますが、一般に、うつ病になりやすいと言われるタイプは、真面目で几帳面で責任感の強い人。要領の悪いところがある、と言われる人たちです。そうした方と話す時、私は「仕事に命をかけることはないんだよ。本音と建前を使い分けなさい」と伝えています。私自身、30年以上、ある大手電機メーカーの産業医を務めていて、企業の中での文化の移り変わりも肌で感じてきました。最近ではメンタルヘルスが重要視されるようになり、2015年12月からは、常時50人以上の労働者を使用する事業所を対象に、年に一度のストレスチェックも義務化されました。ただ、チェックしたデータをどう使っていくのかが肝心で、引き続き社会全体で考えていかねばなりませんね。

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手島 正大 理事長

1973年に東京慈恵会医科大学卒業。国立久里浜病院(現・久里浜医療センター)に勤務後、大規模病院の副院長を務める。各地の精神科クリニックの立ち上げに関わった後、1993年より前院長の後を受け継ぎ現職。早期からアルコール依存症の治療を重視し、外部の医療機関とも連携した専門的な治療を提供する。患者本人はもちろん、家族や地域とも協力して行う精神疾患のケアに注力。

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