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医療法人財団明理会 鶴川サナトリウム病院

(東京都 町田市)

林 重光 院長

最終更新日:2022/11/09

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認知症患者と家族に寄り添う

町田市真光寺町の緑に囲まれた場所で、1973年の開院当初から認知症医療に専門的に取り組んできたのが「鶴川サナトリウム病院」だ。現在は、主に認知症を診る精神科・老年精神科に加え、内科・老年内科の診療を行っている。認知症カフェや、認知症進行を予防するためのMCI(軽度認知障害)トレーニングスタジオなど、独自の取り組みにも力を入れている。また、地域連携型認知症疾患医療センターとして、地域で認知症患者を支えることも担っている。2022年4月、同院の院長に就任し、熱のこもった口調で「認知症の方々がありのまま安心して過ごせる病院にしたい」と話す林重光先生に、同院のことや地域の高齢者医療に対する意気込みなどを聞いた。(取材日2022年7月5日)

こちらの病院の特徴を教えてください。

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当院は、地域連携型の認知症疾患医療センターとして、物忘れ専門の外来を開設、認知症の鑑別診断、合併症・行動・心理症状が進んできた際の対応、町田市の委託による認知症電話相談などを行っています。その他にも認知症初期集中支援事業、認知症カフェ、新設したMCI(軽度認知障害)トレーニングスタジオ等、個別性の高いプランを多職種にて対応し、認知症の患者さんやそのご家族が安心してこの地域において生活できるよう、切れ目のない医療支援体制と地域連携体制を整えております。また、すべての病棟では入院患者さまに対しての「二科主治医制」をとっております。高齢の方は複数の併存疾患を有する場合が多いことから、認知症や精神疾患を診る精神科、全身を管理する内科の医師がダブルで主治医となり、より安全な医療が提供できるように体制を整えております。

認知症の診療に対する考え方を教えていただけますか?

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私は認知症を顔のしわと同様に、その人の特徴の一つだと捉えています。なぜなら、原因がわかっているにもかかわらず、根本的に治すことができないのであれば、その変わりゆく姿も受け入れていくほうが自然だと思うからです。年を重ねれば誰でも認知症に向き合っていく可能性がある中で、年を重ねた時の個性の一つに“認知症”という症状があるのだとしたら、その人がその人らしく過ごし、生活をしていくために適した環境を作っていかなければなりません。「あれができないこれができない」と制限されるような病院というくくりの中で患者さまを診るのではなく、一人の生活人の方が「これができる」と満たされる温かい環境の中で、さまざまな専門職が密接に関わり、患者さまとそのご家族にとって望ましい認知症治療の提供を行いたいと考えています。

認知症カフェなど、ユニークな取り組みもされていますね。

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認知症の当事者やご家族、専門職、地域の方々が集まるのが「認知症カフェ」です。同じ状況、立場の方々が苦しみや痛み、喜びを分かち合う時間を共有しています。当院の一番の自慢であるスタッフたちが“その人らしい生き方”を追求するために多様なアイデアを出し合い、月に一度開催しています。また、2022年春にMCI(軽度認知障害)トレーニングスタジオ「ASMO(あすも)」を開設しました。MCIは軽度認知障害のことで、認知症の一歩手前の状態を指します。MCIの方に向けたサービスは少ないため、作業療法士を中心とした多職種が専門性を生かし、体を動かすことや頭を使うプログラムの提供、その人が持つ生きがいや目標を持ち続けるためのコミュニケーションを通して、認知症の進行予防をめざします。認知症の早期診断・治療・多職種連携による「共生」の土台が整い、次なる課題の「予防」に私たちも動き出したといえる取り組みです。

今後の抱負を教えてください。

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着任直後に、親御さんの入院が決まったご家族が「本当にこれで良かったのかな」と話していました。経緯はわかりませんが、大切なご家族の人生の終盤に「これで良かったのかな」ではなく、「良いところに来たね、これで安心だね」と思っていただける病院でありたいと強く感じました。当院では認知症の患者さまに専門的ケアや多くの工夫を行ってきましたが、対話を通じてその人の“物語”に注目する「ナラティブ・アプローチ」の推進もしていきたいです。安全上の理由で精神科病棟に鍵がかかっていても、病棟内は心地良くカラフルな場所で過ごしていただきたい。そのために、患者さまのこれまでの人生の多様性を受け入れ、私たち医療者自身が柔軟な考え方で、「その人らしく過ごすための環境」に近づける必要があります。安全管理はもちろん、自分たちが受けたいと思う医療、看護を徹底し、今を彩るための“物語”をともに紡げる病院をめざしていきたいですね。

最後にメッセージをお願いします。

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日本は超高齢社会となり、少子高齢化が進んでいます。そのような背景の中で、高齢者に対する医療は世界でもあまり見本がないため、今後、高齢化が進む国々にとって日本がモデルケースになっていく必要があると思っています。認知症の方が生活人として過ごせる環境を、この病院の中に作る努力を惜しまず、安心して家族を入院させられる病院として選んでいただけるよう努めてまいります。そして、当院が高齢者医療、認知症のモデルホスピタル、ひいては日本でナンバーワンと思ってもらえるような、温かく、喜びがある病院をめざし、スタッフ一同努力してまいります。

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林 重光 院長

1993年帝京大学卒業後、東京医科大学血液内科に入局。狭山神経内科病院副院長、明理会中央総合病院副院長、イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院院長、明理会東京大和病院院長などを経て、2022年より現職。専門は血液内科と神経内科。医学博士。

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