医療法人社団 蒼紫会 森下記念病院
(神奈川県 相模原市南区)
森下 将充 病院長
最終更新日:2025/05/14


慢性腎臓病の患者の支えになれる病院へ
小田急江ノ島線の東林間駅から徒歩5分の好立地にある「森下記念病院」は、1970年代から血液透析を開始し、現在は腎臓病の早期発見と治療、血液透析や腹膜透析に注力する専門的な病院となっている。森下将充病院長は日本腎臓学会腎臓専門医および日本透析医学会透析専門医で、病院運営と同時に専門診療の一翼を担っている。「まずは腎臓病にならないこと、なっても早期発見で病気の進行を早く抑えることが重要ですが、透析になった患者さんにも当院では『その人らしい人生を送っていただく』ことを大切に診療を行っています」と森下病院長。異なる診療科や職種が協力し、治療、運動、食事など多方面から患者を支えるチーム医療を重視し、自宅でできる透析、腹膜透析にも注力している点も特徴だ。「基本的に週3回の通院が必要な血液透析に比べ、自分のために使える時間が確保しやすいメリットがあります。さらに当院では通院が難しい腎臓病の患者さんへの訪問診療も行い、自宅で最期まで過ごせるようサポートしていきます」と語る森下病院長に、同院がめざす腎臓病治療の在り方や患者へのメリットなどを詳しく聞いた。(取材日2025年2月25日)
腎臓病を中心に診療されていますが、どんな特徴がありますか?

腎臓内科と透析血管外科が一体となって診療する腎センターを設け、私も含め日本腎臓学会腎臓専門医が5人、日本透析医学会透析専門医が6人、常勤医師として在籍するなど、腎臓病の診断・治療に高い専門性を持つ病院であることが強みの一つです。CKD(慢性腎臓病)は消化器、泌尿器、循環器、視力・視野など多様な部位に合併症が起きやすく、体全体を診る経験を積んだ腎臓専門医による診療が重要になります。さらに当院では医療機関に通院して受ける血液透析以外に、患者さんが自宅で行える腹膜透析に力を入れている点も特徴です。一般の患者さんと同様、CKDの患者さんも高齢化が進み、通院が難しくなる方も増える時代に、自宅でできる腹膜透析の選択肢が必要と考えています。また、通院可能な若い患者さんでも腹膜透析なら週3回の通院が必要がなく、自分のことに使う時間をもっと増やせると思います。
どんな方が受診されているのでしょうか?

当院では腎臓病の初期から終末期まで包括的に診療しており、最近は健康診断で腎臓の数値が悪くて受診されたり、かかりつけの先生から腎臓病の疑いで紹介されたりするケースも多くなっています。受診された患者さんには、まず腎臓病の原因を検索し、慢性腎臓病が進行しないよう、食事や運動など、薬を用いて進行を抑制するための治療を行います。腎臓は腎炎や日本人に多いIgA腎症などの病気で悪化する以外に、生活習慣病や加齢による動脈硬化を原因とする腎硬化症になりCKDに至るケースも増えている印象です。このため生活習慣病の治療でも腎臓に保護的に働く薬を選ぶ、腎臓に影響を及ぼす薬を回避する、脱水や過剰に血圧が下がることから腎障害を防ぐことなどは腎臓専門医の観点から留意しています。さらに2024年から腎臓専門医による訪問診療も開始し、患者さんが自宅でも専門的な医療が受けられ、腹膜透析もサポートできる体制を整えました。
腹膜透析について詳しく教えてください。

日本は医療機関に週3回ほど通院して行う血液透析が主流ですが、当院では患者さんが自宅で行う腹膜透析も併せてご案内しています。腹膜透析は腹部に挿入したカテーテルを通して透析液を注入し、老廃物や余分な水分を取り除く仕組みで、血液透析に比べて体への負担が少なく、腎臓の働きを維持しやすいとされています。日中に3〜4回交換を行うタイプ、夜間に機械で自動で交換を行うタイプなど、オーダーメイドのような治療スタイルが提供可能です。患者さんやご家族が操作する不安を軽減するため、腹膜透析導入で入院された際には、手順をスタッフが丁寧に指導します。腹膜透析はCKDとうまく付き合いながら、その人らしい人生を送っていただく方法の一つと考えています。通院も基本的に月1回でよく、一人では通院が難しい高齢の患者さんのほか、仕事や家庭のことなどに自分の時間を確保したい方にも向いていると思います。
CKDを診るにはどのような診療体制が必要でしょうか?

当院の場合、腎臓専門医を含め多様な診療科、職種が協力して患者さんを診ています。患者さんに関わる職種が参加するCKD会議を月1回行うほか、各職種や部署でも患者さんの状態を共有して治療にあたっています。透析血管外科ではバスキュラーアクセスと呼ばれる血液透析の命綱の手術や治療を行い、透析開始後のトラブル対応にも対応し、当院の規模を生かした小回りの利く迅速な対応に努めています。さらに専門知識を学んだ看護師も多く、理学療法士は透析中や自宅で行える筋力維持の運動、初期段階のCKDを進行させないための運動なども指導しています。管理栄養士もCKDの患者さんに向いた食事指導を行います。私は病院長就任時に「圧倒的なチーム力で患者さまに温かい医療を提供します」との理念を掲げ、初期段階から終末期まで長期にわたり、患者さんの人生が少しでも明るく、楽しめるものであるよう全スタッフでサポートしていく考えです。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。

腎臓病はかなり進行しないと自覚症状が出にくく、気づいたときには透析の一歩手前というケースも珍しくありません。日頃からバランスの取れた食事や適切な運動で生活習慣病からCKDに至るリスクを減らし、定期的に健康診断を受けることが、腎臓病の予防や早期発見につながると思います。当院ではどなたでもご参加いただける公開講座「腎臓病教室」を定期的に開催し、皆さまに腎臓について学んでいただく機会を提供しております。透析が必要になった患者さんには、腎移植、血液透析、腹膜透析の選択肢の情報提供を時間をかけて行っています。移植をご希望方には関連施設をご紹介し、血液透析/腹膜透析は当院で始めることが可能です。また、災害などでの万一の停電や断水に備えて自家発電装置と2系統の透析用水を確保しています。関連大学病院など専門的な医療機関とも連携し、地域の皆様やクリニックの先生方が安心してご紹介いただける体制を整えています。

森下 将充 病院長
2007年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学病院腎臓・高血圧内科に入局。大学病院や関連病院で研究や診療に携わる。病院経営を学ぶためアメリカに留学し、MBA(経営学修士)取得。2018年医療法人社団蒼紫会森下記念病院の副院長・血液透析部門長に就任。2019年6月より現職。日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本内科学会総合内科専門医。医学博士。現在は趣味の釣りより子育てに熱中している。