医療法人誠医会 宮川病院
(神奈川県 川崎市川崎区)
宮川 政久 理事長
最終更新日:2024/09/25
患者を第一に考えた医療の実践が目標
地域医療への貢献をめざして1909年に開設された「宮川病院」は、内科・外科・整形外科等を主として、幅広く診療すると同時に、内視鏡による検査・治療を得意とする消化器領域、心臓CTのほか各種検査で心臓病の早期発見を目標とする循環器領域をはじめ多様な専門性も併せ持つ。さらに24時間対応の救急医療を行い、緩和ケア病棟や地域包括ケア病棟を開設するなど、さまざまな患者を受け入れる体制を整えてきたのは、「それが地域の患者さんに必要と考えたからです」と宮川政久理事長兼院長は言う。「当院のモットーは患者さんのことを第一に考えた医療の実践。公益財団法人日本医療機能評価機構の病院機能評価を受けるなど、客観的な評価も参考に改善を続けています」。祖父、父、そして現在の宮川院長へと続く「患者第一主義」の診療方針と専門領域ごとの強み、緩和ケア病棟や地域包括ケア病棟の目的など、同院の特徴について宮川院長に聞いた。(取材日2024年7月23日)
力を入れている診療分野についてお聞かせください。
患者さんのことを考えた診療をモットーに、内科・外科・整形外科等を中心として全般にわたり地域のニーズに広く応えるとともに、更に重症で当院での対応困難な患者さんにはより適した病院をご紹介するのが当院の役割です。その中でも高齢化に伴う心臓や血管の病気を診る循環器領域、がんなどの早期発見に努める消化器領域、整形外科とリハビリテーションなどは特に重要と考えています。循環器ではCTによる冠動脈の検査、心臓超音波検査をはじめ各種の検査で心臓の病気を見つけ、心臓リハビリテーションによる機能回復をめざしています。消化器は内視鏡による早期がんの発見に力を入れ、胃や大腸以外に肝臓・胆道・膵臓でも内視鏡を用いた検査・治療を行っています。整形外科は痛みを和らげるための薬物療法や運動療法はもちろん、内視鏡下での関節手術、人工関節置換術などにも対応し、充実したリハビリテーションで体力や機能の回復をサポートしています。
救急医療や在宅医療などの取り組みはいかがでしょうか?
高齢化が進む地域では救急医療が非常に重要なため、当院では24時間対応で救急の患者さんの治療にあたる体制を整えています。入院治療が必要と考えられる症例を診る二次救急までに対応し、当院での対処が難しい患者さんは三次救急の病院に迅速に移送するなど、救急隊と協力して救急医療の適正化を図っています。また、在宅医療は年齢や病気の進行で病院に通院することが困難になった患者さんが主な対象で、内科の医師が定期的に訪問診療を行っています。基本的に患者さんごとに担当の医師がつき、患者さんの病状の推移をしっかりと把握して、状態により入院診療を行う等適切な治療を行いますし、毎回同じ医師が訪問するので患者さんやご家族も安心されるのではないでしょうか。さらに、当院では訪問看護ステーションも併設しており、連携することで患者さんやご家族の多様なニーズに応えられる体制を整えております。
緩和ケア病棟、地域包括ケア病棟も開設されていますね。
開院当初は一般病棟のみでしたが「患者さんのために何ができるか」を考え、緩和ケア病棟と地域包括ケア病棟を開設。緩和ケア病棟は主に末期がんの患者さんが対象で、痛みや心の悩みでご自宅での療養が難しい方、病院で治療方法がなく残りの生活を安らかに過ごされる方などが入院されます。当院では痛みの緩和だけでなく、日本看護協会緩和ケア認定看護師を中心に、看護師が患者さんの体と心のさまざまな「つらさ」にも十分配慮したケアを提供しています。また地域包括ケア病棟は、症状は安定したものの、通院はできない患者さんや在宅療養中などで入院が必要になった患者さんに適切な治療やリハビリテーションを行い、自宅や施設にお戻しする役割を担っています。これは高齢者の健康を地域全体でサポートする地域包括ケアシステムの一環といえ、当院では行政、高齢者施設などと月1回の連絡会議を設け、地域にお住まいの方の健康状態を定期的に確認しています。
病院機能評価を6度連続して受けられた理由は何でしょうか?
病院機能評価を通して、公益財団法人 日本医療機能評価機構から日頃の病院の運営管理や医療の質などについて客観的な評価を受けることができます。評価が良好なら、病院機能評価の基準に沿った病院運営や医療を行っていると自分たちもわかりますし、問題点があれば改善に向けた努力ができ、当院がめざす「患者さんのための医療」の実現に役立つのです。当院では、前述のごとく公益財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価が創設された1999年に「日本医療機能評価認定病院」の認定を受け、その後5年ごとの再評価を受け、2024年には第6回目の認定を受けています。また申請業務では病院経営や診療内容についてその根拠となる膨大な書類をまとめ、訪問審査を受ける必要があるのですが、定期的にこうした作業に取り組むことは当院職員のモチベーションアップにもつながっていると思います。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。
私の祖父と父が出た大学では「病気を診ずして病人を診よ」、私が卒業した順天堂大学では「名医たらずとも良医たれ」という教えがあります。病気を治すことに終始せず、患者さんを一人の人間として診ること。患者さんが納得する医療を行う良医であること。どちらも患者さんの身になって、患者さんの心をつかんで診療する医師の姿勢を示した言葉で、当院でもそれにならい「誠の医療に徹し地域医療に貢献します」の理念に基づき、患者さん第一の診療をめざしています。そのためには患者さんの話を十分に伺い、しっかりと診療することが大切で、ときには診療に時間がかかることも考えられます。その点は何とぞご了解ください。当院には幅広く診療できる力に加え、消化器や循環器・整形外科などの専門性を備えた医師が多く在籍し、多職種のスタッフと連携したチーム医療を行っています。さまざまな症状に対応可能ですから、気軽に受診していただければと思います。
宮川 政久 理事長
1964年順天堂大学医学部卒業。同大学医学部附属順天堂医院で経験を積み、アメリカのスタンフォード大学で心臓移植や冠動脈造影などを学ぶ。帰国後、大学病院に戻り循環器内科に従事した後、1980年に父の後を継いで宮川病院の院長に就任。患者のことを考えて診療する医師だった祖父と父親の影響から、自身も「患者第一主義」を掲げ地域医療の充実に尽力する。日本循環器学会循環器専門医。