早期治療が大切
大腸・肛門疾患を専門とする病院での痔の治療
医療法人恵仁会 松島病院
(神奈川県 横浜市西区)
最終更新日:2025/03/10


- 保険診療
お尻からの出血や痛み、違和感があるものの、恥ずかしさなどから病院の受診を躊躇している人も少なくないかもしれない。しかし、「痔も早期治療ができれば、手術に至らないことも少なくありません」と話すのが、大腸肛門疾患を専門とする松島病院の宮島伸宜院長。痔は生活習慣に強く関係していることから、その是正を図ることが大切だと話す。加えて、肛門からの出血などの症状は、痔ではなく、大腸がんや炎症性腸疾患など重大な病気が原因なこともあることから、何かしらの症状がある場合には一度、肛門疾患を専門とする医療機関の受診が大切だと言う。そこで宮島院長に、痔の基本的なことや治療法、気をつけるべきことなどを教えてもらった。(取材日2024年12月19日)
目次
痔の治療の第一歩は、生活習慣の是正。それで改善が不十分な場合には、手術で改善をめざす
- Q痔について教えてください。
- A
院長の宮島先生。予防を含めた診療に力を注いでいる
痔は、いわゆるいぼ痔と呼ばれる痔核、切れ痔といわれる裂肛、あな痔とも呼ばれる痔ろうの3種類があります。いぼ痔は、肛門から少し奥の腸から発生します。腸には痛みを感じる神経はありませんので、基本的に初期は痛みがなく、出血やちょっとした出っ張りが症状です。便秘や下痢、アルコールなどが原因で出っ張りが大きくなり、肛門の外に出っ放しになると、痛みが出てきます。切れ痔は肛門のけがで、肛門の皮膚が裂けて痛みや出血があります。痔ろうは、肛門から少し中に入ったところにある皮膚と腸の境目に便のばい菌が感染して化膿し、肛門内から外の皮膚側まで膿が通るトンネルができてしまう病気で、腫れたり、痛みが出たりします。
- Qどのような治療法があるのでしょうか。
- A
再発を防ぐには生活習慣の是正が重要
いぼ痔と切れ痔は、生活習慣が強く関係しています。そのため、便秘をしないようにすることや、トイレの時間を短くすることが重要です。それには、食事や水分の管理が大切で、それをすることを前提に軟膏や便をコントールするための薬などを使います。いくら薬や手術で治療したとしても、生活習慣が改善されない限りは再発する可能性が高いですから、まずは生活習慣の改善が大切になります。そして、いぼ痔の場合はそれらの治療をしても出血が治らなかったり、出っ張りが非常に大きくなったりした場合。切れ痔は、慢性化して肛門の皮膚が硬くなり、狭くなってしまった場合に手術を検討します。痔ろうは、基本的に手術が必要です。
- Q痔の手術について詳しく教えてください。
- A
松島病院のイメージカラー「松島ブルー」を意識した手術室
いぼ痔は、痔核の根元の血管を糸で縛り痔核の切除を図る結紮切除術が基本で、他に注射薬で痔核の硬化を図り治療するALTA療法もあります。ALTA療法は短期入院で行える一方で、再発率の高さや治療後の合併症が報告されるなど、それぞれにメリットやデメリットがあります。それを説明した上で、病状や患者さんの希望により方法を選択します。切れ痔の場合は、狭くなった肛門を広げるための手術を行います。痔ろうは、膿のトンネルを切開し縫合する切開開放術と、肛門を閉める括約筋の温存を図りながら行う手術があり、病変部の深さや長さを検査した上で手術方法を決めます。直腸脱では、再発率の低減をめざした腹腔鏡下手術を行っています。
- Q手術後に気をつけることはありますか。
- A
温水洗浄便座の使用には注意点も
患者さんに常に伝えているのは、排便に注意することです。便座に座っているだけで肛門に負担がかかりますので、トイレの時間を短くすること。温水洗浄便座の水は意外と清潔ではありませんし、使いすぎると肛門の周りの皮膚の脂が取れて乾燥してしまい、かぶれの原因となります。さらに、温水洗浄便座を使用すると、その水は必ず肛門の中に入ります。つまり、常に浣腸をしているのと同じようになります。そうすると温水洗浄便座を使用しないと便が出なくなってしまうようなことが起こります。温水洗浄便座を使用してはいけないとは言いませんが、できるだけ短時間にすること。ほかに、水分や食物繊維を多く取り、便を固くしないことが大切です。
- Q女性の患者さんも多いと聞きました。
- A
女性医師も在籍し、相談しやすい環境を整える
痔ろうは男性が多いですが、いぼ痔や切れ痔は女性の患者さんも多くいます。女性は、外でトイレに行くのが嫌で我慢してしまうことなどで便が硬くなって便秘になり、それで切れ痔になるケースも少なくありません。そのようなことから、以前は女性のほうが痔が多いといわれていました。しかし、近年ではリモートワークも増えて座っていることが多くなったこともあり、男性の患者さんも増えています。女性で男性にお尻を見られるのが嫌という患者さんもいると思いますが、当院では初診に限ってですが、肛門疾患が専門の女性医師による女性の外来も週に2日開設しています。妊娠中でも診察は可能ですので、希望する方はご利用いただきたいと思います。

宮島 伸宜 院長
1982年慶應義塾大学卒業。藤田保健衛生大学医学部外科学講師、帝京大学医学部附属溝口病院外科助教授、聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科教授、同大学東横病院病院長などを経て2023年4月より恵仁会松島病院副院長。同年6月より現職。日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医、日本外科学会外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。医学博士。