社会医療法人財団石心会 川崎幸病院
(神奈川県 川崎市幸区)
石井 耕士 院長
最終更新日:2026/08/18


質の高い医療で地域のセーフティーネットへ
川崎駅西口から徒歩10分。国道140号沿いの柳町交差点近くに立つ「川崎幸病院」は、1973年に開設され、2012年に現在地へと移転。石心会グループの理念「断らない医療」「患者主体の医療」「地域に根ざし、地域に貢献する医療」を重視し、救急医療に加え、地域ニーズに応える診療に力を入れる。大動脈瘤・大動脈解離を専門とする川崎大動脈センターを開設し、心臓病、脳血管などの専門的な治療を行うほか、がん診療にも幅広く対応。さらに「この地域の医療は当院だけでは完結しません。医療機関や介護施設、行政と密接に連携して、患者さんを地域全体で支えることが今後ますます重要になります」と石井耕士院長。「何かあった時、困った時に患者さんを引き受け、しかも質の高い医療を提供できる。当院は地域のセーフティーネットの役割を果たせるようになりたいと思います」。そう語る石井院長に同院の特色や地域医療への熱い思いを聞いた。(取材日2026年6月24日)
24時間365日対応する救急医療の強みをお聞かせください。

当院は断らない救急医療をめざし、救急車応需率を100%に近づけるよう尽力しています。同時に質の高い救急医療を提供するために、救急科では複数在籍する日本救急医学会救急科専門医または当直の医師を中心に患者さんのファーストタッチを担い、状況に応じて各科の医師に引き継ぐなど、専門的な医療への移行も迅速です。また独自にドクターカーを配備し、川崎大動脈センターは川崎市内はもちろん他県でもお迎えに伺うのも特徴の一つ。しかも救急救命士が院内の救急コーディネーターとして、救急の患者さんの電話対応、受け入れ準備、当院のドクターカーの手配および同乗、他院への搬送手配などを一貫して担うので、救急時の対応が非常にスムーズです。救急救命士は独自のEMT科に所属し、医師の指示のもとで搬送時や救急科の外来で特定の救急救命処置を担うなど、看護師とも密接に協力して当院の救急医療を支えています。
川崎大動脈センターにはどんな特色がありますか?

同センターは大動脈瘤や大動脈解離の治療を専門としています。専用フロアに専用病棟を備え、医師、看護師、臨床工学技士、理学療法士など、治療・回復に携わるスタッフが大動脈治療に精通しているのも強みです。緊急手術が多い大動脈解離にも24時間365日対応可能で、救急車の受け入れ以外に、当院のドクターカーで患者さんをお迎えに伺うこともよくあります。90歳以上の超高齢者、あるいは臓器合併症などのハイリスクの患者さんであっても、これまでの経験に基づく安全性と正確性を重視した手術を行うことで、良好な治療成績につなげられるよう全力を尽くしています。一方で大動脈瘤は予定手術が多く、開胸・開腹による人工血管置換術のほか、血管内に器具を入れる低侵襲なステントグラフトの両方に対応し、患者さんに適した治療を選択できるのも特色です。
脳神経外科や心臓病の治療についても教えてください。

脳神経外科では医師の数が増え、東京慈恵会医科大学の協力も得て診療体制の充実を図っています。脳血管障害、脊椎脊髄手術では豊富な治療実績があり、脳卒中など緊急治療が必要な脳血管障害には救急科と連携して24時間365日対応します。薬で脳に詰まった血栓を溶かすための血栓溶解療法、カテーテルで血栓を除去するための血栓回収療法のいずれも可能で、患者さんの病状により開頭手術も行えます。心臓病は循環器内科と心臓外科、各スタッフのチームが緊急の治療に24時間365日対応。心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対し、カテーテルによる血管内治療または開胸での冠動脈バイパス術での治療が可能で、不整脈を起こす部分を除去するためのカテーテルアブレーション治療も行っています。脳や心臓は対応が遅れれば患者さんの生命予後、機能予後への影響も避けられません。そうした分野での緊急対応で、地域医療へのさらなる貢献をめざします。
患者さんのご紹介などでは地域とどのように連携されていますか?

当院は外来診療を同じ医療法人のクリニックと連携して行っており、そこからの入院紹介がありますが、もっと広く患者さんをご紹介いただき、地域のお役に立ちたいと考えています。そのため私が院長に就任して以来、近隣にお住まいの皆さん、医療機関、行政、救急搬送を行う消防隊との連携窓口となる地域医療連携課を新設して、機能を強化させました。この課には事務職、医師、ソーシャルワーカーを配置し、患者さんの受け入れ調整のほか、当院での治療を終えて別の医療機関への転院、施設への入所、ご自宅への復帰など、患者さんの容体やご希望をもとにした退院サポートも担う予定です。同じ医療法人のクリニックとは医師や看護師、各専門職の人的な交流を活発にして、外来と入院とをシームレスにつなぐ体制づくりも進めます。
病院の今後の展望などをお聞かせください。

これまでご紹介した特色ある診療を支える土台となる、総合的な診療や集中治療に厚みを持たせることです。高齢になると複数の病気がある患者さんも多く、当院で専門的な治療を受けられる際に、他の病気との関連など全身を診ることは欠かせません。また救急医療を経て入院した重症の患者さんは、ICUで全身管理を行うなど集中治療が回復に大きく影響します。こうした部分の強化は医療の質の向上につながり、患者さんにより安心して利用していただける病院づくりへの近道となるでしょう。何かあった時、困った時に患者さんをお引き受けできて、しかも質の高い医療を提供できる。当院が地域のセーフティーネットの役割を果たせるようになりたいと思います。

石井 耕士 院長
2001年北里大学医学部卒業。2001~2003年湘南鎌倉総合病院での初期研修を経て、2004年横浜市立大学整形外科入局。2012年川崎幸病院整形外科入職、2015年同院救急・総合診療科兼務。2017年埼玉石心会病院副院長に就任後、ER総合診療センター長を兼任。2021年6月より病院長を務め、2026年5月から現職。日本整形外科学会整形外科専門医。





