全国土木建築国民健康保険組合 総合病院 厚生中央病院
(東京都 目黒区)
河島 尚志 病院長
最終更新日:2022/09/15


救急、急性期、回復支援で地域医療に貢献
「総合病院 厚生中央病院」は全国土木建築国民健康保険組合の直営病院で、同組合被保険者とその家族、さらに地域住民の健康と福祉への貢献を目的としている。河島尚志病院長は、「地域のニーズに応える多様な診療科を開設し、主に急性期の患者さんを診る一般病床と、地域包括ケア病棟を併せ持つ多機能型総合病院であることも特徴です」と語る。診療面では、内科にさまざまな専門性を持つ医師が在籍し、幅広さと奥行きのある診療が可能なほか、脳神経外科、消化器病センター、人工関節センターなどにも強みがある。さらに「地域医療への必要性という点では、在宅医療の後方支援やリハビリテーションを担う地域包括ケア病棟も重要です」と河島病院長。「退院後にご自宅や施設で不自由なく暮らせるよう退院支援にも注力し、専任の退院調整ナースが退院時期の説明、介護保険の手続き、ケアマネジャーさんとの相談などきめ細かく援助します」。「コロナ禍の、そして新型コロナウイルス感染症流行収束後の理想の病院」を模索し、今後も医療による地域貢献をめざすと話す河島病院長に、診療の特徴や病院長就任時の思いなどを詳しく聞いた。(取材日2022年6月10日)
こちらの病院の地域での位置づけなどを教えてください。

当院は全国土木建築国民健康保険組合の直営病院で、同組合の組合員とその家族の健康をお預かりすると同時に、目黒区域の基幹病院として、地域のニーズに応える医療を広くご提供する点が大きな特徴です。当院の健康管理センターで行う各種の健診も多くの方に利用いただき、中には健診での来院時に併せて翌年の健診を予約される方もいるほど。当院の理念は「心の通った温もりを感じる医療をめざす」、「組合被保険者ならびに地域の人々の健康と福祉に貢献する」、「病院機能の充実を図り、サービス向上のための研鑽を積む」で、健全な経営と安全で質の高い急性期の地域中核病院を創造することを基本方針とし、その機能充実に努めています。多様な診療科を持ち、救急医療や高度医療も提供できる一般病床に加え、在宅医療の後方支援や退院後の生活を考えたリハビリテーションを目的とした地域包括ケア病棟を備えている点もその表れといえます。
診療面ではどのような特徴があるのでしょうか?

内科は一般的な病気を診ると同時に、呼吸器、神経、血液、腎臓、糖尿病、リウマチ、膠原病など、近隣にあまりない分野も含め専門的な診療も行います。特に複数の病気がある高齢の患者さんは、主治医と内科の医師全員が定期的に話し合い、他の診療科とも連携して総合的に治療します。脳神経外科では良性から悪性の脳腫瘍まで治療し、24時間体制で脳卒中や脳神経外傷などの緊急治療に対応。パーキンソン病など神経難病の改善を図る機能的脳神経外科手術にも強みがあります。また、消化器病センターは消化器内科と消化器外科が一体となり、消化器がんなどを連携して診ています。内科は上部および下部消化管の内視鏡検査と治療、EUS(超音波内視鏡)検査、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)治療、外科では腹腔鏡下での手術も得意とします。整形外科では人工関節センターを持ち、股関節・膝関節の人工関節置換術とリハビリテーションを多数行っています。
地域との連携や地域医療ではどんな点を重視されますか?

地域に必要な医療の充実を重視しています。例えば当院は目黒区内では少ないお産ができる病院で、2023年には陣痛、分娩、回復まで同室で行えるよう整備し、小児科と併せて周産期医療にも力を入れています。さらに地域の病院同士で各院の得意分野に合う患者さんを相互にご紹介するなど、地域で適切な医療を提供するための連携も盛んで、目黒区を中心に医師会や近隣のクリニックとも定期的に交流しています。また、当院は地域包括ケア病棟を45床持ち、在宅医療の患者さんの一時入院などにも対応。院内に設けた高齢者医療支援委員会に、認知症サポート、緩和サポート、嚥下・栄養サポート、低侵襲性手術サポート、骨粗しょう症サポート、皮膚・排泄ケアサポートチームを設置し、チーム力で地域の患者さんに寄り添う医療をめざします。そして専従の退院調整ナースが退院後の生活も見据え、患者さんとご家族をこまやかに援助して在宅復帰率を高めています。
病院長になられた感想、ご専門の分野などをお聞かせください。

私が病院長に就任したのは2022年4月で、歴史があり地域医療に尽力する当院の運営に携わるやりがいを感じています。以前に在籍した大学で常務理事として医療安全や働き方改革、ガバナンスを担当した経験を生かし、良質で安心できる医療の提供と医療の質の向上をめざす考えです。また、当院は看護師や各専門職が優しく患者さんに接し、それが病院全体の温かさも生んでいると感じています。そうした良さを一歩進め、患者さんへのより積極的な声がけで、診療の疑問や不安を解消できるような対応も考えていきたいですね。私の専門は小児の感染症や免疫疾患などで、小児科全般を診るゼネラリストとして長く診療してきました。当院でもお子さんの自己免疫疾患、自己炎症性疾患、炎症性腸炎、肝臓疾患、川崎病、便秘症などを主に診ています。そのほか小児科ではアレルギーや、慢性的な頭痛に悩むお子さんを専門の医師が診療を行うなどの特徴を持っています。
これからの目標などをお聞かせください。

目黒区は少子高齢化という社会的な流れにあって、高齢者だけでなく20代から50代の人口も増える傾向が見られます。地域の基幹病院として、そうした多様な患者さん一人ひとりに寄り添う医療の提供をめざし、地域に不足する診療科についても可能な限り充実を図りたいと考えます。また、当院は新型コロナウイルス感染症の患者さんを数多く受け入れ、大変な時期を職員が一丸となって乗り切ってきました。この状況が落ち着いても、病院運営がそれ以前と同じに戻ることはないでしょう。今後は「コロナ禍の、そして新型コロナウイルス感染症流行収束後の理想の病院」を模索し、感染症の患者さんを受け入れることを念頭に、ゾーニングをはじめ各種の感染症対策をとりつつ、以前のような病院の機能をフルに発揮できる体制づくりに努めます。患者さんに満足いただけ、職員全員が働きやすさを感じられる病院をめざしますので、多くの方にご利用いただければと思います。

河島 尚志 病院長
1981年東京医科大学卒業。1985年同大学大学院修了。北里研究所ウイルス部、アメリカのフィラデルフィア小児病院で研鑽を積み、東京医科大学で講師、准教授、主任教授を歴任。専門は感染症だが、消化器全般、肝臓病、神経感染症、リウマチなどの免疫疾患、乳幼児突然死症候群などの救急医学、川崎病にも詳しく、小児疾患全般を診るゼネラリスト。東京医科大学で副院長、副学長、常務理事を務めマネジメントの経験も豊富。