全国土木建築国民健康保険組合 総合病院 厚生中央病院
(東京都 目黒区)
河島 尚志 病院長
最終更新日:2024/09/05
救急・急性期、多様な診療、健康増進を柱に
60年以上の歴史を持ち、地域密着の診療を行ってきた「総合病院 厚生中央病院」は全国土木建築国民健康保険組合の直営病院。同組合被保険者とその家族だけでなく、地域住民の健康と福祉への貢献を目的とし、地域のニーズに応える多様な診療科を開設している。河島尚志病院長は、「主に急性期の患者さんを診る一般病床と、地域包括ケア病棟を併せ持つ多機能型総合病院であることが特徴です」と語る。特に地域包括ケア病棟では、急性期治療後に必要なリハビリテーションを行い、容体が急変した患者を受け入れる在宅医療の後方支援の役割も担う。さらに河島病院長は、「退院後にご自宅や施設で不自由なく暮らせるよう退院支援にも注力し、専任の退院調整看護師が退院時期の説明、介護保険の手続き、ケアマネジャーさんとの相談などきめ細かく援助します」と地域連携を重視する。診療面では、内科にさまざまな専門性を持つ医師が在籍し、幅広さと奥行きのある診療が可能で、脳神経外科、消化器病センター、人工関節センターなどにも強みがある。今後も医療による地域貢献をめざすと話す河島病院長に、診療の特徴や近年の動きなどを聞いた。(取材日2024年6月28日)
病院の地域での位置づけや理念などをお聞かせください。
当院は全国土木建築国民健康保険組合の直営病院で、同組合の組合員とその家族の健康をお預かりすると同時に、目黒区域の基幹病院として、地域のニーズに応える医療を広くご提供する役割を担っています。多様な診療科を持ち、救急医療や高度医療も提供できる一般病床に加え、在宅医療の後方支援や退院後の生活を考えたリハビリテーションを目的とする地域包括ケア病棟を備えているのもそのためです。さらに少子高齢化の中で、無痛分娩も行うなど周産期医療の充実を図るとともに、当院独自の高齢者医療をめざした取り組みにも積極的です。当院の理念は「心のかよったぬくもりを感じる医療をめざす」、「組合被保険者ならびに地域の人々の健康と福祉に貢献する」、「病院機能の充実を図り、サービス向上のための研鑽を積む」で、健全な経営と安全で質の高い急性期の地域中核病院を創造することを基本方針とし、その機能充実に努めています。
診療面での最近の動きなどはいかがでしょうか?
整形外科では以前から人工関節センターを開設し、股関節・膝関節の人工関節置換術とリハビリテーションを数多く行ってきましたが、人工関節を得意とする医師が増えて体制が一層充実しました。一部の手術では精度と安全性の向上をめざしナビゲーションシステムも導入しています。脳神経外科では24時間体制で脳卒中や脳神経外傷などの緊急治療に対応し、カテーテルを用いた脳血管内治療を行う医師も加わりました。さらに良性から悪性までの脳腫瘍の治療、パーキンソン病など神経難病の改善を図る機能的脳神経外科手術などにも強みがあります。また、消化器病センターは消化器内科と消化器外科が一体となり、消化器がんなどを連携して診ている点が特徴です。内科は上部および下部消化管の内視鏡検査と治療、EUS(超音波内視鏡)検査、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)治療、外科では腹腔鏡下での手術も得意としています。
そのほか診療面や設備面での特徴を教えてください。
救急医療は24時間365日対応で、脳神経外科、消化器外科、循環器内科、麻酔科の医師が診療可能なほか、多くの診療科で電話連絡で医師が駆けつけるオンコール体制をとっています。さらに血管撮影装置も新たな機器に更新し、脳梗塞や心筋梗塞に対する血管内治療がよりスムーズに行えるよう環境を整備しました。また、当院は目黒区内では少ないお産ができる病院で、2023年には陣痛、分娩、回復まで同室で行えるよう整備し、計画分娩では麻酔科の医師が麻酔を担当する無痛分娩も行えるなど、周産期医療にも力を入れています、私の専門でもある小児科では、お子さんの自己免疫疾患、自己炎症性疾患、各種遺伝性疾患などを診るほか、アレルギーや慢性的な頭痛に悩むお子さんを専門の医師が診療します。内科は一般的な病気を診ると同時に、呼吸器、神経、血液、腎臓、糖尿病、リウマチ、膠原病など、近隣にあまりない分野も含め専門的な診療も行います。
地域医療や地域連携ではどんな点を重視されますか?
超高齢社会に必要な医療を提供するため、院内に設けた高齢者医療支援委員会に、認知症サポート、緩和サポート、嚥下・栄養サポート、低侵襲性手術サポート、骨粗しょう症サポート、皮膚・排泄ケアサポートチームを設置し、チーム力で地域の患者さんに寄り添う医療をめざします。さらに、総合病院の強みを生かし、高齢で複数の病気がある患者さんは主治医と内科の医師全員が定期的に話し合い、他の診療科とも連携した総合的な治療を心がけています。地域連携では、地域の病院同士で各院の得意分野に合う患者さんを相互にご紹介するなど、地域で適切な医療の提供をめざす連携も盛ん。目黒区を中心に医師会や近隣のクリニックとも定期的に交流しています。また、当院は地域包括ケア病棟を45床持ち、在宅医療の患者さんの一時入院も可能です。加えて専従の退院調整看護師が退院後の生活も見据え、患者さんとご家族をこまやかに援助して在宅復帰率を高めています。
これからの目標などをお聞かせください。
当院は「救急医療・急性期医療」、「総合病院の強みを生かした多様なニーズに応える医療」、「全国土木建築国民健康保険組合の直営病院として働く人の健康を守る取り組み」を今後の大きな柱と考えています。働く人の健康については、当院の健康管理センターで行う各種の健診も多くの方に利用いただいています。加えて、女性に多い乳がん、女性特有の子宮頸がんの検査も含む女性向けの人間ドックやがん検診も行い、組合に加入している建築会社では女性向けの健康講座も開催しています。目黒区は少子高齢化という社会的な流れにあって、高齢者だけでなく20代から50代の人口も増える傾向が見られます。地域の基幹病院として、周産期医療や高齢者医療の充実をはじめ、多様な患者さん一人ひとりに寄り添う医療の提供をめざし、地域に不足する診療科についても可能な限り充実を図りたいと考えます。
河島 尚志 病院長
1981年東京医科大学卒業。1985年同大学大学院修了。北里研究所ウイルス部、アメリカのフィラデルフィア小児病院で研鑽を積み、東京医科大学で講師、准教授、主任教授を務める。専門は感染症だが、消化器全般、肝臓病、神経感染症、リウマチなどの免疫疾患、乳幼児突然死症候群などの救急医学、川崎病にも詳しく、小児疾患全般を診るゼネラリスト。東京医科大学で副院長、副学長、常務理事を務めマネジメントの経験も豊富。
自由診療費用の目安
自由診療とは女性向けの人間ドック(日帰り)全国土木建築国民健康保険組合に加入の方/2万7500円、一般の方/6万9300円、レディースがん検診(午後)/1万7600円