国家公務員共済組合連合会 三宿病院
(東京都 目黒区)
城谷 寿樹 院長
最終更新日:2025/03/18


地域と連携して今後も必要となる医療を提供
目黒区の西端、世田谷区と隣接するエリアで1959年から診療を行う「三宿病院」は、地域の医療機関と協力して必要とされる医療を広く提供してきた。「当院は24時間365日対応する二次救急医療機関でもあり、脳卒中、心筋梗塞をはじめとした循環器疾患は専門の医師が迅速に治療を開始できるのも強みです」と城谷寿樹院長は言う。「救急以外はご紹介の患者さんが中心のため、地域の先生方とは緊密に連携して互いに得意な領域を生かした診療を行っています」。その際も緊急なら電話で患者の紹介を受けるなど柔軟に対応。認知症疾患医療センターにも指定されて地域の認知症治療に貢献するほか、糖尿病や脂質異常症、家族性高コレステロール血症(FH)などを専門の医師が診療して、症状の改善をサポートする。さらに乳がん検診の強化、完全予約制の婦人科の外来診療、白血病、悪性リンパ腫など患者をフォローアップをする血液内科なども開設している。「何よりも患者さんのために、時代に合わせて変わり続ける病院をめざす」と語る城谷院長に、地域医療への想いを聞いた。(取材日2025年2月6日)
この病院の特徴や地域での役割をお聞かせください。

当院は国家公務員共済組合連合会により国家公務員とその家族、地域の皆さんの病院をめざして1959年に開設されました。現在、豊富な診療科と244床の病床を備える中規模病院となり、近隣のクリニックおよび高度急性期を担う病院などと密接に連携して、互いの得意な領域を生かして地域に必要な医療を広く提供しています。さらに二次救急医療機関として救急の患者さんに24時間365日対応し、特に脳神経外科、循環器内科の医師が常駐しているため、脳卒中、心筋梗塞をはじめとした循環器疾患は迅速に治療を開始できるのが強みの一つでしょう。また、隣接する自衛隊中央病院の協力を得て、放射線治療も含むがんの標準治療を提供できる体制となっています。今後も各医療機関と協力して地域の皆さんが安心して暮らせるよう医療体制を一層充実させたいと考えています。
地域連携ではどんな点を重視されていますか?

患者さんにとっては、紹介により当院を受診し、治療後はかかりつけの先生に診ていただき、定期的にあるいは容体が変化したら当院を受診するといった「W主治医制」になるメリットがあると思います。地域の先生方に対しては、当院主催や近くにある同法人の東京共済病院との共催で連絡会を定期的に行ったり、当院のスタッフや医師がクリニックを訪問したりと連携を深めています。さらに地域との連絡窓口となる医療福祉相談室のソーシャルワーカーと病棟の看護師が協力し、ご紹介の患者さんのスムーズな入院から退院に向けた準備までサポートします。先生方が「ちょっと困った」というときは、医療連携室に電話をいただければ救急対応も可能で、脳神経外科や循環器内科は緊急なら医師にダイレクトにつながる電話も開設。当院退院後は体力や身体機能の回復のため回復期リハビリテーション病院に移られるケースも多く、退院先との連携も強化しています。
あらためて診療面での強みなどをお聞かせください。

当院では脳神経外科と神経内科が協力した脳卒中センターが脳卒中の患者さんの専門診療にあたり、脳神経外科は24時間対応で薬剤による血栓溶解療法、カテーテルによる血栓回収療法が提供可能な体制です。神経内科では将来の再発予防のため内科的な病気やパーキンソン病などの診療もカバーしています。さらに両科の医師、リハビリテーションスタッフ、看護師、管理栄養士など多職種で毎朝カンファレンスを実施し、入院患者さんの状況を共有して適切な治療をめざします。このほか脳神経外科では慢性硬膜下血腫、脊椎・脊髄などの治療も行います。また、当院は東京都CCUネットワーク参画医療機関で急性心筋梗塞のほか緊急性の高い循環器疾患の患者さんの救急医療に対応。循環器内科がカテーテルによる治療を24時間実施できる体制です。加えてペースメーカー植込み術、末梢血管カテーテル治療、自衛隊中央病院と連携した不整脈診療などに対応します。
そのほかの診療科にはどんな特徴がありますか?

東京都から認知症疾患医療センターに指定された当院では、認知症を専門とする神経内科の医師が診療にあたります。認知症疑いで紹介された患者さんには、医師の診察、心理士による心理検査、MRI・CTなどの画像診断を総合して認知症の鑑別診断を行っています。診断後は紹介元の先生が主治医となって当院も協力しながら適切な治療を行い、さらに地域からの認知症相談には当院のソーシャルワーカーを中心に対応するなど、認知症診療への貢献をめざしています。また、内分泌・代謝内科は糖尿病や脂質異常症、家族性高コレステロール血症(FH)などを専門の医師が担当。病気の早期発見と治療に力を入れています。がん診療では自衛隊中央病院との密接に連携し、乳がん検診に一層積極的に取り組む考えです。完全予約制ですが婦人科の外来診療もスタートさせ、白血病、悪性リンパ腫などの患者さんのフォローアップをする血液内科も開設しています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

地域の人口構成、病気の種類や治療の方法など、日本の社会も医療を取り巻く状況も以前とは大きく変わってきました。病院もそうした動きを敏感に捉えて変化し続ける必要があるでしょう。当院でも「具体的な目標を持って常に成長し続けること」を全員の意識として共有し、患者さんやご家族のために新たな取り組みを進めたいと考えています。例えば、当院の地域包括ケア病棟では、在宅療養で容体が悪化した患者さんだけでなく、介護されているご家族のために一時的に患者さんを受け入れる「レスパイト入院」も検討中です。当院は中規模の病院で院内の風通しが良く、部署同士の協力体制も非常に良好です。ご紹介の患者さんに適した医療が提供できるよう多職種が連携してサポートしますので、どうぞ気軽にご紹介ください。それに全体にアットホームな雰囲気ですから、治療される患者さんも安心して過ごしていただけると思います。

城谷 寿樹 院長
1983年防衛医科大学校医学科卒業。自衛隊中央病院をはじめ各地の自衛隊病院で診療にあたる。自衛隊中央病院在籍時は三宿病院との共同診療も経験し、2016年から三宿病院脳神経外科に勤務。2023年4月から現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。患者の目線での診療を心がけ、「何よりも患者のために、時代に合わせて変わり続ける病院」をめざす。