医療法人社団下田緑眞会 世田谷北部病院
(東京都 世田谷区)
馬場 裕之 院長
最終更新日:2024/01/24
地域における総合的な医療の提供をめざす
世田谷区南烏山の閑静な住宅街にあるのが「医療法人下田緑眞会 世田谷北部病院」だ。80年以上にわたって人々の健康を支え、地域とともに歩んできた同院。現在は、外科を含めた総合的な診療を提供することで、地域の医療ニーズに応えることをめざしている。そんな同院の院長に2023年10月に就任した馬場裕之先生は、これまで大学病院や基幹病院に勤務してきたベテラン医師。同院でもその豊富な経験や知識を生かしながら、地域の人々に安心で安全な医療を提供することをめざしている。「とにかく患者さんを自分の家族だと思って診療することを大切にしています」と優しい笑顔で話す馬場院長に、同院のことや地域医療にかける意気込みなどを聞いた。(取材日2023年10月16日)
院長就任の経緯をお話しください。
少し時代はさかのぼりますが、小学生の頃から三鷹、調布、世田谷が隣接するこの地域で育ちました。医療法人下田緑眞会の理事長とは小学生の頃からの知り合いで、小中高と一緒に過ごしています。大学入学後はしばらく会っていませんでしたが、医師になって約10年経過した頃に外科診療を手伝ってくれないかという連絡を受けました。まずは非常勤医師としてお手伝いすることにしよう、となったのが同法人との関わり合いを持った最初のきっかけです。その後、私は大学病院や基幹病院で外科診療のみならず救命救急や緩和医療、周術期栄養管理活動などのチーム医療を数多く経験する機会に恵まれました。いい年にもなり、外科診療を含めた総合的診療をフットワーク良く実践したいなと考えていたところ、タイミング良く同法人から院長就任のお話をいただきました。
院長のめざしている医療について教えてください。
世田谷区の北部に位置する当院は、規模は小さいながらも、内科を中心として幅広い診療を提供するとともに、2次救急医療機関として地域貢献してきました。それはとりもなおさず、地域住民の皆さま誰もが安心して利用できる医療機関であり続けてきたからです。しかし、時代の流れで医師・看護師不足が顕在化し、地域の皆さまに満足していただける診療を提供できているのか、厳しく自問自答する時期に来ていると感じています。この点も踏まえ、「人を診る」診療を提供したいと思っています。患者さんを自分の家族と思って診療する。さらに各医師がそれぞれ得意とする診療領域に力を発揮し、それをもってさらに地域医療に貢献したいと考えています。入院できる施設として近隣のクリニックの先生方、また在宅診療や訪問看護をしている医療機関の方々と連携を深めて地域全体で病院を利用していただき、地域で完結できる医療体制構築の一翼を担えればと考えています。
今後力を入れたい取り組みはありますか?
診療面では地域の実情に合致した総合的な医療を展開することが何よりも重要であると考えています。患者さんの大規模病院志向が続く中、当院でも十分に初療対応ができることを示していきたいです。その中でも体制不十分で提供できていなかった外科診療をぜひ軌道に乗せたいと思います。当院での大きな手術の提供は難しいですが、一般的・標準的な外科治療の提供は可能です。緊急手術にも対応できるように連携する医療機関とともに十分な体制を構築しています。女性専門の外来についても力を入れたい項目の一つです。先駆けとなるのが乳腺外科で、乳がんの対応に限らず、授乳期の乳房のトラブルなど、乳房やその周辺疾患、乳がん検診に広く対応いたします。運営面では職員が心身ともに健やかに働くことのできる環境の整備を最重要課題と考えています。職員全員が当事者意識をもって、One Teamで働けるように配慮していきたいと考えています。
診療や病院を運営するにあたって、心がけていることは何ですか?
常に患者さんを自分の家族だと思って「温かい医療を提供すること」が大事であると考えています。そこには打算もなければ冒険もない。自分の親だったらどうするのか考えて診療することができるならば、小さな医療機関ではありますが、皆さまに納得のいただける医療を提供できるのではないかと思っています。病院は社会的インフラとして皆さまに期待される部分が大きいですが、その期待に笑顔で応えられるように職員一同心がけています。医療職は全員がそれぞれの領域のプロフェッショナルであり、それを尊重したいと常に思っています。それだけに、建設的な意見交換を進めることができる関係を構築して、チームワーク良く日々の困難を乗りきりたいです。診療面も運営面も、心がけていることのキーワードは「家族」であり、家族を大切にする思いを具体的な行動で示すことによって、これまで以上に地域の皆さまに頼りにされる病院になれると考えています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
医療の再編成が進み、地域一体となって患者さんに対応していく状況の構築が求められています。そうした中で当院は、小規模ながらも機能的で地域医療の中心的役割を担うことが求められます。診療の専門性も充実させていく所存ですが、一般的な医療を必要十分に提供することも地域医療の中では重要です。凡事徹底にこだわった病院運営に徹し、地域に求められる医療を、アクセス良く適切に提供できる施設をめざしてまいります。地域の皆さまに信頼していただき、安心して利用していただきたいですし、地域の先生方にも気軽にご相談、ご利用いただきたいと思っています。これからも世田谷烏山地区の医療を守るために、職員一同、地域の医療機関とともに、One Teamで頑張っていきたいと思います。
馬場 裕之 院長
1991年東京医科歯科大学卒業後、同大学第1外科に入局。同大学医学部附属病院、太田西ノ内病院、東京都立駒込病院病理科・肝胆膵外科医長、秀和総合病院外科医長、埼玉医科大学総合医療センター消化管・一般外科講師、横浜市立みなと赤十字病院救急外科部長などを経て、2023年より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。