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地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立松沢病院

(東京都 世田谷区)

布村 明彦 院長

最終更新日:2025/08/29

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「誰一人取り残さない精神科医療」を追求

八幡山駅から徒歩約1分の緑あふれる広大な敷地の中にあるのが、「東京都立松沢病院」だ。精神科を専門とする病院として140年以上の歴史を持つ同院。以前から担ってきた精神科救急医療を含む精神疾患の急性期医療に加え、アルコールや薬物などの依存症、認知症、思春期や青年期の心の問題、摂食障害といった幅広い精神疾患に専門的な医療を提供している。さらには、内科や外科、整形外科、脳神経外科、リハビリテーション科、歯科なども備え、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の治療にも積極的に取り組んでいる。そんな同院の院長に2025年4月に就任し、「誰一人取り残さない精神科医療の提供をめざしています」と話す布村明彦院長に、診療の取り組みや精神科医療にかける思いなどを聞いた。(取材日2025年6月19日)

最初に病院を紹介していただけますか?

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地方独立行政法人東京都立病院機構の一員として当院がめざすのは、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの中核を担う東京都における精神科医療の拠点的な役割です。精神科救急医療を含む急性期医療に加え、アルコールや薬物などの依存症、認知症、思春期や青年期の心の問題、摂食障害をはじめとしたさまざまな精神疾患に対して、デイケアや地域の患者さんのサポートに至るまで、幅広く専門的な医療サービスを提供しています。加えて、精神疾患の患者さんの身体症状の治療も、当院の重要な役割の一つ。精神症状のために一般の病院の受診が難しい患者さんに対して、内科や外科、整形外科、脳神経外科、リハビリテーション科、歯科などの医療を提供しています。さらには、災害拠点精神科病院でもあり、災害時に精神疾患をお持ちの患者さんや、被災して精神的な不調をきたした方が、必要な医療を継続して受けられる体制づくりに励んでいます。

どのような診療に力を入れていますか?

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精神科の超急性期の疾患に対応する精神科救急医療です。これは一般の精神科病院では対応が難しく、公の病院としてまさに担うべき重要な部分です。精神疾患では比較的急性の発症や増悪もあり得ますので、一見元気に過ごしていた方が突然、幻覚や妄想状態、あるいは精神運動興奮状態に陥り、自分自身、あるいは他人を傷つけてしまうことが起こり得ます。このような状態のときには、警察などから通報があり、保護された患者さんの治療を行う措置入院が必要になります。これを夜間や休日に緊急で行うのが緊急措置入院で、当院はこれらを大きく担っています。また、身体疾患を合併している患者さんの場合、精神科単科の病院では対応しきれないこともあります。そのようなときに患者さんが行き場を失わないようにするのも当院の重要な役割の一つと考えています。

治療はどのように行うのですか?

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治療の主体は薬物療法で、精神疾患に対する薬での治療は、近年ますます進歩しています。また、脳の刺激療法である電気けいれん療法もかつては誤解を受けることもありましたが、現在では非常に進歩しており、麻酔科の医師と協力しながら、特に、自殺の危険が切迫しているような重症のうつ状態の患者さんに対して行っています。こうした治療を積極的に行っている当院ですが、精神科医療では単に病気の治療だけではなく、退院後に地域や家庭に戻り、安心して日常生活を送れるよう全人的な支援を行うことが重要です。また、精神症状の裏に隠れた身体的疾患が発見されることも少なくありません。一見、精神疾患のように見えても、実際には体の病気が原因だったというケースもあります。当院には精神科だけでなく、身体科の医師がそろい、そのようなケースの診断と治療ができることも、特徴の一つです。

ほかにも特徴的な診療を行っていますね。

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思春期・青年期のゲームやスマートフォン依存、不登校、引きこもり、うつ、不安、発達障害、摂食障害、アルコールや薬物の依存症などの専門分野にも力を入れており、摂食障害やアルコール依存、認知症などでは、東京都の拠点的な役割を果たしていきたいと思っています。また、デイケアにも注力しています。精神疾患をお持ちの患者さんの退院後の生活をどのように支えるのかが非常に重要で、当院でも大切にしている分野です。また、認知症の前段階であるMCI(軽度認知機能障害)への対応も、新薬の登場で関心が高まっています。当院では薬物療法だけに頼らず、メモリートレーニングなどの心理的介入や、フレイル予防としての身体活動にも力を入れています。認知症への対応には体が本来持っている力を引き出すことはとても重要だと考えています。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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まず、公的な病院として求められる行政的医療を堅持していくことが、最も重要だと考えています。それをわかりやすく伝えるために考えた言葉が「誰一人取り残さない精神科医療の提供」であり、言い換えるなら「精神科医療の最後の砦」です。これは、当院にとって非常に崇高な使命であり、この思いを全職員で共有していきたいと考えています。また、当院は東京ドームが4つ入るほどの広大な敷地をもつ公園のような環境にあります。イベントなどを通じて、地域の皆さまにも親しんでいただきたいと思っています。さらに、当院は専門性の高い精神疾患の診療だけを行っているわけではありません。例えば、うつ病や不眠症などでも、どこに相談すれば良いのか悩んでいる方もいると思います。予約センターに電話いただければ、どなたでも受診できるようになっていますので、ぜひご相談いただきたいと思います。

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布村 明彦 院長

1986年旭川医科大学卒業。1991年同大学大学院医学研究科修了。同大学精神医学講座助手、文部省在外研究員として米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学留学、旭川医科大学精神医学講座講師、助教授、山梨大学精神神経医学講座准教授。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授、同教授を経て2025年4月より現職。日本精神神経学会精神科専門医。医学博士。

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