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地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立松沢病院

(東京都 世田谷区)

水野 雅文 院長

最終更新日:2022/11/15

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急性期から社会復帰まで対応する精神科病院

京王線・八幡山駅から徒歩1分。緑あふれる広大な敷地に立つ「東京都立松沢病院」は、1879年に上野公園内に開設された精神科病院を起源とし、140年以上の歴史を持つ。現在は、依存症などアルコール・薬物に関連した疾患、認知症、思春期特有の心の病といった精神科専門医療はもちろん、内科・外科・整形外科・脳神経外科・リハビリテーション科・歯科・婦人科など複数の身体診療科を併設し、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の治療にも対応している。2022年7月より地方独立法人化されたが、第19代院長を務める水野雅文先生は「当院のミッションや診療に変わりはなく、これからも精神疾患を持つ患者さんの急性期医療や社会復帰医療に力を尽くしていきます」と語る。独立法人化を機に入院治療中心の医療から地域ケア中心へと進む近年の精神科医療の流れを受け、「患者・地域サポートセンター」を開設。これまでの同院の歴史と役割、サービスを守りながら時代に即した多様なニーズに応える病院づくりに注力する水野院長に話を聞いた。(取材日2022年9月15日)

こちらの病院が地域で担う役割を教えてください。

1

当院は2022年7月に独立法人化され、地方独立行政法人東京都立病院機構の一員となりました。とはいえ、病院の理念や診療方針に変わりはありません。これからも精神科救急・急性期医療を提供する病院として、夜間休日の精神科救急や、一般の精神科病院では対応困難な専門性を要する急性期精神疾患に対応してまいります。また、地域災害拠点病院および災害拠点精神科病院として、災害時には被災した精神疾患を持つ患者さんを受け入れる体制を整えています。さらに、精神疾患を持つ患者さんの身体合併症診療は当院の重要な責務の一つです。当院には精神科だけでなく、内科や外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、リハビリテーション科、歯科、耳鼻咽喉科、眼科、婦人科などが併設されており、精神症状のために一般病院での診療が難しい患者さんにも対応しています。

特色のある診療科や部門について教えてください。

2

当院では13~25歳くらいの方を対象とした思春期・青年期の精神科医療に力を入れており、ゲーム・スマートフォン依存、不登校、ひきこもり、うつ、不安、発達障害などへの専門的なケアを行うとともに、若い方を対象にしたデイケアを実施し、患者さんの気持ちが少しでも楽になるようサポートしています。また、摂食障害は精神科のほか内科や栄養科、場合によっては婦人科などの関与が必要な病気であり、複数の診療科がそろう当院の強みを発揮して多職種で対応しています。それから、アルコールや薬物などの依存症医療にも注力しています。特にアルコール使用障害に関しては、従来の「断酒」だけでなく、飲酒量を減らす「節酒」という新たな選択肢が加わり、治療へのハードルが低くなったのではないかと思います。飲酒の問題で悩んでいる方はぜひ一度ご相談いただければと思います。

地域のニーズに対しては、どのような取り組みをされていますか?

3

心の病気について専門の医療機関に相談したいと思っても、受診の方法がわからない、初診までの待ち期間が長いといった問題があると思います。こうした課題に対して、当院では紹介状がなくても、予約センターに電話をして予約を取っていただければ、誰でも受診できる体制を整えています。また、外来予約の待ち期間を短縮するため初診枠を3倍に拡大したところ、待機期間の短縮のほか、比較的軽い状態で受診する方が増えてきました。これからもアクセスしやすい環境づくりに取り組み、心の病気の早期発見・早期支援につなげていければと思っています。さらに、独立法人化を機に「患者・地域サポートセンター」を開設いたしました。精神科医療の流れは、入院治療中心の医療から地域ケア中心へと進んでいます。精神疾患を持つ方が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、地域の医療機関のほか行政・教育・福祉機関などとの連携も強化してまいります。

その他、力を入れている取り組みについて教えてください。

4

当院では都の指定を受け認知症疾患医療センターを開設するなど、これまでも認知症医療に取り組んできましたが、新たに運動を通じた認知症の予防を主な目標に、長寿者を対象とした外来を開設しました。WHOのガイドラインなどでは、認知機能の低下を予防する有効な手段は身体活動を高めることだと示されています。加齢とともに低下していく認知・運動機能の維持が長寿者のハピネスにつながっていくと考えており、当外来ではセラピストの指導のもと、運動機能を高めるリハビリテーションを行っています。また、障害者雇用にも力を入れており、現在は当院の元患者さんや通院中の患者さんが非常勤職員として勤務し、総合案内業務などで活躍してくれています。民間にも障害者を対象とした就労支援サービスがありますが、精神障害は見た目ではわかりにくく、医療機関が積極的にコミットしていくことで就労の継続に貢献できればと考えています。

今後の抱負とメッセージをお願いします。

5

精神疾患と脳神経内科疾患の境界である「神経精神医学」という領域を診療する外来を立ち上げました。脳神経内科と精神科の両領域に精通した医師を中心に、パーキンソン病やその関連疾患、高次脳機能障害の評価や治療、リハビリテーションにも取り組んでいきたいと考えています。当院には「精神疾患が重い患者さんの、最後の砦」というイメージがあるかもしれません。もちろん一般の精神科病院では対応が難しい重症の精神疾患患者さんの診療は当院の使命ですが、その一方で、生きづらさを感じるなど心の健康に悩んでいる方に気軽に受診していただいて、早期のうちに医療や支援につなげていくことも大切だと思っています。精神科医療がすべての国民にとって身近な存在になることが理想であり、当院がその理想を現実に変えていく姿を地域の皆さまにお見せできるよう、職員一同、力を尽くしてまいります。

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水野 雅文 院長

1986年慶應義塾大学医学部卒業。1992年同大学大学院医学研究科博士課程修了後、1993年から1995年までイタリアのパドヴァ大学心理学科に留学、同大学客員教授。帰国後、慶應義塾大学医学部精神神経科学教室講師、助教授を経て2006年東邦大学医学部精神神経医学講座主任教授に就任。2021年4月より現職。日本精神神経学会副理事長、日本社会精神医学会理事長、日本森田療法学会理事長など。

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