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宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション 淀川キリスト教病院

(大阪府 大阪市東淀川区)

笹子 三津留 理事長

最終更新日:2023/11/27

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医の原点は愛。「全人医療」で地域を救う

阪急千里線柴島駅、阪急京都本線崇禅寺駅の両駅より徒歩3分。アクセスの良い場所に位置する「淀川キリスト教病院」。1955年の創立時より「全人医療」の理念を掲げ、東淀川区のみならず大阪北東部からも患者が来院。「淀キリ」の愛称で広く親しまれる地域の中核病院である。早期から周産期医療やホスピスに取り組み、血液型不適合児に対する交換輸血を行うなど先進的な医療へも積極的に取り組んできた。そんな中、2018年から外科特別顧問として関わってきた笹子三津留先生が、2023年7月に理事長に就任。胃がん手術が専門で、「狭い範囲」と語るながらも自らの仕事を高度に行うことをめざしてきたと同時にがんの外科手術を職人の世界から解放し、EBM(Evidence-Based Medicine、根拠に基づく医療)に則った標準治療の開発法を確立してきた。同院の理事長として何をめざし、患者に何を提供するのか。さらにその豊富な経験に裏打ちされた「スピリチュアルケア」の信念を今後、どのように展開していくのかまで、じっくりと聞いた。(取材日2023年9月27日)

まず病院の成り立ちと基本方針から伺います。

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当院は1955年、米国長老教会によって医療宣教のために開所された診療所が始まりです。その後、病院に昇格し、時代とともにだんだんと大きくなり、2012年には現在の場所に移転新築し、約600床の急性期総合病院となりました。もともとこの地が選ばれたのは、第二次世界大戦で焼け野原となり、医療環境が悪い場所だったからと聞いています。そうした経緯で、設立以来「全人医療」が基本方針です。「病気を診ずして、人を診よ」という言葉が日本にもありますが、それに近いとも言えますね。人間は肉体的存在でありつつ、社会的存在でもあり、スピリチュアルな霊的な存在でもあります。それらすべてをケアする病院として使命を全うしていこうと「からだとこころとたましいが一体である人間(全人)に、キリストの愛をもって仕える医療」を理念に掲げ、毎朝は礼拝で始まります。私は2018年に外科特別顧問として入職し、この夏に理事長を拝命しました。

これから「全人医療」をどのように実践していかれるのでしょう?

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当院の理事長でいらした柏木哲夫先生も提唱されましたが、職員に再認識してもらいたいことはスピリチュアルケアです。人間の持つ痛みには肉体的痛み、心理的痛み、社会的痛み、そしてスピリチュアル、霊的な痛みの4つのファクターがあります。霊的と言うと幽霊のようなものを想像しがちですが、そうではありません。人が最期の時間を心穏やかに過ごせるようホスピスという場所があります。そこでのケアをスピリチュアルケアだと理解している人が大勢いますが、実はそれだけではなく、死に直結せずともけがや病気が人生の一大事であることは少なくありません。そうした患者さんの多くがスピリチュアルペインを持っており、にこやかに話している目の前の人もスピリチュアルペインを抱えているかもしれないと心に留めて寄り添い、力になれる医療を行うことが私のビジョンです。一朝一夕に成すことは難しいですが、当院は土台がありますから変化を期待しています。

では注力している医療について、伺ってまいります。

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2019年に関節外科・人工関節部門を開設し、人工関節置換手術を積極的に行っています。高齢化が進む今の日本においては、膝や股関節が悪くなる人が大勢いらっしゃいます。再生医療の分野も研究が進んでいますが、差し当たって一番良い選択肢が関節の置換であるという患者さんはたくさんいらっしゃいますので、進めてきました。通常ですと、医師が患者さんのCTなどの画像データをもとに関節の状態を把握し、どういう角度でどのように人工関節を入れるかを計算しますが、当院では手術用ロボットを、2022年12月に導入しました。これにより術前準備が数分で整う上に、人の手では不可能だった精度での骨切角度、ミリ単位での骨切り量での人工関節の設置も図れるようになり、患者さんの負担軽減につながっています。運動機能、特に歩くことが衰えてしまうと体の機能全体が落ちるといわれますから、そこをしっかり支える医療として注力しています。

2023年11月には歯科口腔外科が新設されるそうですね。

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歯科口腔外科の開設をもって、大学病院クラスの診療体制が完成します。同科部長の歯科医師は顎の手術に非常に長けた方です。すでに来年の手術予約も入っている状態です。さらに歯科口腔ケア部門も同時に立ち上がりますから、誤嚥性肺炎の予防にも期待しています。誤嚥性肺炎は数年前から普通の肺炎とは別にデータを取るなど、注目すべき疾患の一つです。消化器系や肺のがん手術後に合併症として誤嚥性肺炎を起こすと、患者さんの身体的負担が増えますし、入院の長期化で歩く機会が減って、足腰が衰えていくという悪循環にもなりかねません。そういう点からも、歯科口腔外科でのケアは大切な要素だと考えています。また頸部より上方の舌や扁桃部のがんにおいては、耳鼻咽喉科との密な連携も可能となります。これまで診療科が欠けていたことで制限していた部分が解消されて、複数科をまたいだ診療がより強固になることで、患者さんの安心にもつながると思います。

では最後に今後の展望について教えてください。

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さらに、地域のクリニックとの連携をめざしていきます。手術後の患者さんには、再発予防のための治療が必要となりますが、その一部を地域の先生方とシェアすることも考えています。患者さんも近くの医院と、大きな検査も行える当院の両方に主治医がいることは、安心感が増すと思います。そのためには地域医師会ともしっかりと連携した、併診システムの構築を考えています。先端の医療を行う病院というのは、それぞれに特徴や役割を持って機能しています。その中において当院は、生命の始まりから終わりまで、その人の人生すべてに寄り添い、支える医療を提供させていただける場所です。誰も断ることなく、「何かあっても、ここだったら受け入れてくれる。診てくれる」という安心感をこの東淀川区だけでなく、もう少し広い地域の皆さんに感じていただける病院に。皆さんのスピリチュアルな痛みともしっかりと向き合った、愛のある医療を提供してまいります。

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笹子 三津留 理事長

胃がん治療の専門家。1976年東京大学医学部卒業。1984年にフランス政府給費留学でパリ大学へ留学。1987年から国立がんセンター中央病院(現・国立がん研究センター)勤務。同副院長から下野して2007年7月に出身地の兵庫県に戻り、兵庫医科大学外科教授として12年勤務。2018年から淀川キリスト教病院外科特別顧問となり、2023年7月理事長に就任。患者の「スピリチュアルな痛み」にチームで向き合う。

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