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医療法人社団青葉会 狭山神経内科病院

(埼玉県 狭山市)

沼山 貴也 院長

最終更新日:2020/11/25

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神経難病患者を長期受け入れる体制を構築

西武新宿線の新狭山駅から南へ歩いて約10分、宅地と畑が混在するのどかな環境の中に「狭山神経内科病院」はある。首都圏で数多くの医療施設を展開する「戸田中央医科グループ」に属し、1985年の開院以来、神経難病をはじめとする重度神経障害の患者に長期療養の場を提供してきた。ALS(筋萎縮性側索硬化症)に関しても同院で療養する患者が多いという。スタッフは進行性の病気と常に向き合い、患者と家族が1日でも長く充実した生活が送れるように支えている。珍しい形態を採っている同院の沼山貴也院長に、病院の概要と運営方針、現在の取り組みと今後の展望などを聞いた。(取材日2016年9月14日)

神経難病の患者を受け入れる病院なのですね。

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脳や脊髄の神経細胞が徐々に失われていく「神経変性疾患」で、重度の患者さんの長期入院を専門に受け入れています。それまでは人工呼吸器を着けた患者さんが長期入院できる病院がなく、短期間で転院を繰り返すことが多かったので、当院が設立されたという経緯があります。開設から30年以上を経た現在でも、当院は貴重な存在だと思っています。147床あるベッドは、常時ほぼ満床という状態が続いています。在宅療養を支えるご家族に休養いただく目的で、患者さんを1~3ヵ月間受け入れる「一時入院」もありますが、こうした例外を除けば、基本的に年単位、場合によっては10年近い療養期間を想定した体制です。当院の入院患者さんの約6割はALS(筋萎縮性側索硬化症)で療養されています。パーキンソン病や脊髄小脳変性症で呼吸障害を合併した方、脳卒中の後遺障害や低酸素脳症で人工呼吸器を使用している方も受け入れています。

2年前にALSの「アイス・バケツ・チャレンジ」がありました。

Cs3

指名を受けたら、アメリカALS協会に寄付するか、氷水をかぶるか、両方やるかというものでしたね。ALSは10万人に1人程度という比較的まれな病気ですが、広く関心を持ってもらうきっかけ作りとして意義のある試みだったと思います。現場の医師としてもっとお伝えしたいのは、ALSの患者さんやご家族が置かれた現状、そして医療スタッフは根治させる方法がまだ見つからない中、進行性の病にいつも向き合っているという実情です。私たちは投薬で病気の進行を遅らせつつリハビリなどを行い、患者さんが1日でも長く、少しでも充実した生活を送れるよう日々努めています。病状を「改善」するのが難しい場面でも、「それ以上悪化させない」ことに全力を尽くせる当院のスタッフを、院長としてたいへん心強く思っているところです。

入院生活を充実させるため、どんな工夫をされていますか?

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院内のイベントに力を入れています。地元在住のボランティアの方にもご協力をいただきながら、看護師が中心となって季節ごとにイベントを企画しています。呼吸器を着けたまま参加できるアトラクションにはリハビリテーションの要素を加えていて、楽しみながら体を動かしてもらおうという趣向です。特に夏のフラダンスは定番になりましたし、冬のクリスマス会は盛大に行っています。お越しいただいた患者さんのご家族にも毎回好評で、療養中長いお付き合いとなる当院を身近に感じていただくよい機会となっているようです。またイベント時だけでなく、毎日を少しでも楽しんで過ごしていただけるよう、患者さんの外出や外泊のお手伝いも積極的に行っています。

リハビリではどのような取り組みをしていますか?

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通常、リハビリと言えば、運動を通じて身体機能の回復・改善をめざすものですが、神経変性疾患の場合は進行性であることから、むしろ機能の低下を食い止めたり、低下した機能をサポートしたりといった内容が中心となります。具体的には、PT(理学療法士)が人工呼吸器の使用で生じやすい合併症を防ぐための呼吸リハビリテーションなどを含めた、全身の運動療法を担当。OT(作業療法士)が手工芸や園芸を通じた身体・精神両面へのケアをしています。また、ST(言語聴覚士)が発声できない患者さんの意思疎通を支援する装置の操作や症状に応じた機器の選定、評価などを行っています。在宅療養中のパーキンソン病患者の方などにお越しいただく外来リハビリも行っています。外来診療は少数の方に限定させていただいていますが、外来リハビリは可能な限りお受けしているので、埼玉県だけでなく東京の病院からも紹介で来院されます。

将来の展望をお聞かせください。

Cs4

ゆくゆくは、地域の住民の方々のしびれやめまいなど身近な症状の外来診療も行って地域貢献を果たしたいと思います。また、とりわけ急務となっているのが在宅の神経難病患者さんへの支援です。2014年から訪問リハビリを開始していますが、さらに神経難病への対応ができる訪問看護や、神経内科が分かる医師による往診へのニーズも年々高まる一方です。増員を図りながら、できる範囲で少しずつ取り組んでいくつもりです。神経内科の一医師としては、iPS細胞を使った再生医療などが実現し、神経変性疾患が完治するようになるのを1日も早く見届けたいですが、その日が来るまでは、当院が心安らかに長期療養できる場を提供し続ける使命があると考えています。神経難病の在宅医療については、神経内科を持つ他の病院との情報共有をさらに進めつつ、地域のクリニック、訪問看護ステーションなどとの連携も視野に入れて対応を広げていきたいと思います。

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沼山 貴也 院長

1991年弘前大学医学部卒業。国立障害者リハビリテーションセンター病院神経内科医長などを経て、2014年医療法人社団青葉会狭山神経内科病院院長に就任。ALSなどの神経難病患者が心安らかに長期に入院できる病院づくりを推進。在宅療養する神経難病患者に向けて、地域の医療機関と連携した在宅医療の仕組みづくりにも力を入れている。

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