清水 暢裕 理事長

埼玉県熊谷市の「関東脳神経外科病院」はその名のとおり脳神経外科の単科病院だ。脳神経外科という診療科自体は大学病院や総合病院にもあるものの、「関東脳神経外科病院」では単科病院ならではの治療実績を特徴とし、シンプルで迅速な検査・診断体制、救急車受け入れから1分1秒を削る診療体制を常に考え実行し、機動力の良さを発揮しながら独自の存在感を放っている。またスタッフが生き生きと働いていなければ患者に対してより良い対応ができないと、勤務体制や環境など労働環境の整備にも尽力。スタッフも患者も満足いく医療が提供・受けられるような雰囲気になっている。自らも脳神経外科の医師として現場で腕を振るい、後進の育成に熱心な清水暢裕理事長兼院長に話を聞いた。（取材日2023年6月1日）

1983年に開院し、数度の増床や新棟建築、機器の導入や更新を行いながら、現在の一般病棟95 床、脳卒中ケアユニット6床、回復期リハビリテーション病棟48床、合計149床の規模となりました。脳神経外科領域に特化した単科病院として脳卒中などの緊急性の高い治療からリハビリテーションまで切れ目のない医療のご提供をめざしてまいりました。また脳腫瘍や三叉神経痛、顔面けいれん、頭痛、めまい、頭部外傷、脊柱脊髄疾患など幅広い脳や神経の疾患において豊富な治療実績を有しており、日々たくさんの患者さんが来院されております。なかには脳腫瘍など、このエリアでは対応している病院が比較的少ない疾患にも積極的に取り組んでおり、脳や神経の疾患ならば「関東脳外科病院」、と地域の方々や救命救急に携わる方々に真っ先に思い浮かべていただけるような存在になりたいと思っております。

私達の使命は、脳卒中などの脳神経疾患の緊急事態にいつでも対応するということですから、満床や医師が対応できないなど物理的に困難な時以外は基本的にすべて受け入れられるようにしています。また一刻を争う事態が大半であるため、常日頃からこういう患者さんが運ばれてきたらこういうルートで、など診断・治療が迅速に最短ルートで行えるように準備しています。まさに1分1秒を縮めるために不要な部分をそぎ落とし、事前に準備をしておくなど創意工夫を重ねているのです。これも単科病院ならではの利点であると思います。また緊急事態に少しでも知っている病院に運ばれる方が患者さんご自身もご家族も安心でしょうから、最近はラグビーチームをスポンサードするなど地域の方々に私たちの存在を知っていただくための工夫もしています。関東脳外科病院に運ばれるなら安心できる、と思っていただけたら幸いです。

現在は常勤の脳神経外科の医師が6人、歯科医師1人で、常勤の脳神経外科の医師は女性や年齢の若い医師も多く、意欲が高く指導するこちらも身の引き締まる思いです。近年は糖尿病と心臓内科の医師も非常勤で来ていただいています。高齢の患者さんで複数の疾患を患っている方は多く、私たちも勉強をして並行して診療できるようにしていますが、やはり専門家の先生方にチェックしていただけると病状のコントロールもうまくいくと思いますし、患者さんも私たちも助かります。また脳と心臓は密接に関わっていて、心臓にもともとの原因があり脳梗塞になるようなケースもあります。今後もさらに連携を強化していきたいと考えています。また、全スタッフにはプライベートを大切にするよう話しています。効率よく業務するための工夫は大歓迎。そのための投資なら惜しみません。プライベートが充実してこそ、患者さんのことを考え、笑顔になれると思っています。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といった脳血管障害は治療する医療機関は比較的多くあります。しかし脳腫瘍は手術が複雑になるケースも多く、手術に対応できる機器を導入している当院で処置を行うべく広域から患者さんが集まってこられます。また、非侵襲性の医療機器で治療する腫瘍治療電場療法にも対応しています。さらに、一般的には整形外科で治療を受ける方が多いと思いますが、脊髄疾患治療も行っています。私たちは神経のプロですから、髄内の腫瘍の治療という難易度の高い症状にも対処できますし、脊髄の中の神経まで考慮して治療にあたります。お悩みが深刻であることも多い三叉神経痛、顔面けいれんなどには頭蓋内微小血管減圧術なども行いながら治療をしています。また手術後などのリハビリテーションはできる限り早期から始められるようにして、切れ目のない医療の提供を意識しています。

はい。空きがあればいつでも予約なしで脳健診が受けられる取り組みです。まずご自分がどういう状態なのかを知っておくことが大切だと思いますし、何かあればすぐ治療や定期的な経過観察体制に入ることができます。この脳健診をきっかけにご自身の健康について考えたり、食生活に気を配ってみたり、軽い運動を始めるきっかけになればうれしいですね。私は決して独り善がりにならないよう、押しつけるような医療はしないと決めています。医療は基本的に患者さんのものです。私たちがご提案しても患者さんが納得しなければ無理強いはできません。ですからできる限り治療方法は複数ご提案するようにし、患者さんとコミュニケーションを取るようにしています。今後も患者さんから選んでいただける病院、スタッフが働きたくなるような病院をめざして精進してまいります。