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脳卒中と関連する冠動脈疾患
全身の血管の状態から総合的な治療を

地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立荏原病院

(東京都 大田区)

最終更新日:2023/04/10

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  • 保険診療
  • 脳梗塞
  • 脳卒中

脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血、そしてくも膜下出血の総称である脳卒中。発症から時間がたてばたつほど脳の機能が失われるといわれ、発症してからの迅速な検査・診断・治療と、後遺症を最小限にとどめるためのリハビリテーションが重要とされている。地域に密着した病院として、地域の脳卒中患者を24時間体制で積極的に受け入れている「東京都立荏原病院」の総合脳卒中センターでは、脳卒中と心臓の疾患との密接な関係性に着目。脳卒中を脳血管単体の疾患ではなく全身の疾患ととらえ、脳神経外科、神経内科とともに循環器内科が連携し、全身の血管の状態を含む総合的な治療を行っている。そこで同院の松本浩明脳神経外科部長と戸田幹人循環器内科部長に、総合脳卒中センターでの取り組みについて聞いた。(取材日2023年2月8日)

脳梗塞や脳出血と深く関わる心臓の疾患。脳神経外科と循環器内科が協力し総合的な治療を実践

Q総合脳卒中センターの取り組みについて教えてください。

A

血管撮影検査で使用する造影室

【松本脳神経外科部長】脳梗塞、脳出血といった脳卒中は脳血管の疾患ですが、循環器の疾患と深い関わりがあります。当院では、脳神経外科はほぼ全脳卒中患者に対し入院加療中に検査を行った後、ABI(血圧脈波検査)や心臓エコー、24時間ホルター心電図、頸動脈エコーなどを実施し脳卒中以外にも今後顕在化してくる血管性病変がないかを循環器内科と協力して精査しています。
【戸田循環器内科部長】当科では動脈硬化性疾患を疑うときには、頭部、心臓、足の血管の状態を調べていきます。脳神経外科の診療に併せて、全身を診るという観点からその他の治療が必要な動脈硬化性病変を洗い出し、必要な治療を行います。

Q脳卒中の超急性期治療の流れを教えてください。

A

脳神経外科部長の松本浩明先生

【松本脳神経外科部長】MRI2台、CT1台を設置し早期の検査、診断、治療に努めています。神経症状のある場合はすぐにMRIを撮り、出血があれば降圧による保存療法、出血量に応じて緊急手術を行うこともあります。また、原因に血管性病変がないかを速やかに精査します。脳梗塞はラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心源性といった梗塞のタイプで治療法が変わるため、病状とタイプを瞬時に判断し、tPA静注療法や機械的血栓回収術などを行います。主幹動脈閉塞症の場合はMRAで頸部の血管の状態も一緒に確認し、必要に応じて血管撮影室へと移動します。来院から画像検査までが30分以内、治療までが1時間を切る迅速さも強みです。

Q超急性期治療の後はどのような流れになりますか。

A

【松本脳神経外科部長】リハビリテーション科には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士が在籍し、早期から運動機能回復や嚥下、失語症のリハビリを行ったり、高次機能低下の有無を入院中はもちろん退院後の外来でも評価したりしています。高次機能障害は症状に気づきにくく、現状何ができて何ができないかを知ることは今後どのように元の生活に戻していくかを考える際に非常に重要です。高次機能障害の程度によってはいろいろな社会福祉サービスの介入や退院後の生活スタイルの変更の必要があります。早期の社会復帰を目標に、適切なリハビリを受けていただき、社会復帰後は脳卒中再発予防に取り組んでいただくお手伝いをしています。

Q循環器内科ではどのような治療を行いますか。

A

循環器内科部長の戸田幹人先生

【戸田循環器内科部長】循環器内科では循環器疾患を持っている患者さんが脳卒中を発症した際の心臓リハビリに力を入れています。脳卒中が起こる背景には虚血性心疾患が隠れていることも多く、心臓の機能の低下や下肢の抹消血管の血流の低下があると脳卒中後のリハビリの妨げとなってしまいます。そこで当科では、虚血性心疾患に対するPCI(経皮的冠動脈インターベンション)や下肢末梢動脈疾患に対する末梢血管治療のほか、脳虚血性疾患に影響を及ぼす不整脈の検査からペースメーカー植え込み術や薬物治療まで対応しています。また、栄養指導も含めて実生活における患者さん目線のフォローアップも内科的な見地から積極的に行っています。

Qその他、貴院の総合脳卒中センターの特徴を教えてください。

A

【松本脳神経外科部長】脳神経外科と神経内科、循環器内科に加え、リハビリテーション科、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士のチームで24時間365日患者さんを受け入れています。ICUとSCU(脳卒中ケアユニット)を重症度に合わせて利用し、専門の看護師による一貫したケアやリハビリ介入を行いやすい環境を整えています。
【戸田循環器内科部長】動脈硬化系疾患はご高齢の人の運動能力にも影響するため、血管を治療してもその後心不全になり再入院ということもあり得ます。当科では、診療の柱である不整脈、虚血性心疾患、心不全の検査・治療を必要に応じて速やかに行えるようセンター内での連携を大事にしています。

Q脳梗塞の一般的な症状や予防についても知りたいです。

A

【松本脳神経外科部長】脳梗塞の主な症状は、手足の動きが悪い、呂律が回らない、顔が歪んでいる、急に目の前が真っ黒になるなどです。症状が軽度だったり、良くなったり悪くなったりするほうが治療すべき病気が隠れていることがあり、放置すると重症化することもあるため、一過性のものであっても時間を置かずに受診してください。【戸田循環器内科部長】発症した脳梗塞は総合脳卒中センターで責任を持って治療するのはもちろんですが、今後は発症させないように予防することにも力を入れています。内科的な予防として、心臓の疾患の治療はもとより、食事・運動療法、リハビリの体制、生活習慣のとらえ方など総合的にカバーできればと思います。

患者さんへのメッセージ

松本 浩明 脳神経外科部長

1994年昭和大学医学部卒業。1998年昭和大学大学院卒業。2022年より現職。専門は脳神経外科一般、脳血管内手術。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医。

戸田 幹人 循環器内科部長

1993年東邦大学医学部卒業。2020年より現職。専門は循環器内科一般、PCI、心血管インターベンション、下肢インターベンション。日本循環器学会循環器専門医。医学博士。

【松本脳神経外科部長】手足の片方の麻痺、動きが悪い、呂律が回らない、急に真っ暗になるなどの症状が出たら、そのままにせず受診してください。病気を早く発見できれば、その後の後遺症を軽減することにつながります。ご自身の体がどういう状況なのかを知るためにも遠慮なくご相談ください。
【戸田循環器内科部長】動脈硬化系疾患は現代病の1つで、全身の血管の健康状態を知るのはとても大切なことです。ぜひ一度、当院の松本先生もしくは私まで、健康診断を受ける気持ちで来ていただければ、全身の動脈硬化の状態をチェックしフィードバックをさせていただきます。ぜひ気楽にお越しください。

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