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消化器がんの早期発見は定期的な検診が鍵
積極的な内視鏡検査を

独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院

(神奈川県 横浜市港北区)

最終更新日:2023/12/08

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  • 保険診療
  • 胃がん
  • 膵臓がん(膵がん)
  • 大腸がん

かつては不治の病というイメージの強かった「がん」は、今やさまざまな治療法や先端機器の開発によって、治せる病気へ期待できるものとなりつつある。中でも、胃がんや大腸がんは内視鏡検査で早期に見つけることができれば、体の負担が少ない内視鏡治療で根治をめざすこともできる。一方で、膵臓がんは早期の診断が難しく、病気が発見されたときにはすでに治療ができない状態であることも少なくない。横浜労災病院の消化器内科では、消化管および肝胆膵領域のエキスパートががんの早期発見に心血を注ぎ、先端の検査や治療を提供している。そこで、同院の永瀬肇副院長、関野雄典消化器内科部長、内山詩織内視鏡部長に、胃がん、大腸がん、膵臓がんの治療や同院の取り組みについて聞いた。(取材日2023年10月24日)

胃がん・大腸がんの早期がんは内視鏡治療で根治をめざす。膵臓がんはリスクを知り早期診断につなげる

Q胃がん・大腸がんは内視鏡で根治もめざせると聞きました。

A

早期の胃・大腸がんは内視鏡の治療も可能と内視鏡部長の内山先生

【内山先生】基本的には粘膜の中にがんが留まっていてCT検査で周囲のリンパ節に腫れがないことが確認できれば、内視鏡治療で根治をめざすことができます。がんが大きくても浅い場所であれば切除が図れる可能性もあります。加えて、粘膜のもう少し下の層までであればリンパ節転移のリスクは少なくなるため、がんが粘膜内にあるのかその下なのかという見極めがポイントになります。内視鏡治療ができるかどうかは、通常の内視鏡でもある程度は診ることはできますが、詳しい検査が必要な場合は、拡大できる特殊なカメラで病変の中の血管の構造を調べたり、超音波内視鏡で深い所まで検査をすることで、粘膜の下の状態を診て判断していきます。

Q胃がんや大腸がんにならないために気をつけることはありますか?

A

【内山先生】胃がんは、ヘリコバクターピロリ菌が関与していることが多いため、ピロリ菌の検査で陽性だった人は除菌を図ることが胃がんのリスク低減につながります。ただ、ピロリ菌感染による胃炎は除菌できたとしても残ってしまい、その胃炎自体ががんのリスクになるため、除菌後も定期的に検査をすることをお勧めします。あとは、塩分の取りすぎや、喫煙、飲酒などにも気をつけていただきたいです。大腸に関しては予防が難しいため、便潜血検査で陽性だったときは必ず再検査で大腸カメラを受けてください。ポリープは便潜血検査ではわからないこともあるので、ある程度の年齢になったら、一度大腸カメラを受けていただきたいと思います。

Q一方で、膵臓がんは生存率が低いと聞きました。

A

膵臓がんの厳しい生存率の要因は検査機会の少なさだと関野先生

【関野先生】膵臓がんは、5年生存率が10%にも満たない厳しい病気と言われています。ですが、1期のなかでも腫瘍が2cm以内の場合には5年生存率が50%と言われており、他のがんと同じように長生きしている人もいます。にもかかわらず全体を見ると10%を切っているのは、ほとんどの人が診断が遅れて、治療が難しい段階である3期4期へと進んだ状態で病気が見つかっているからです。早期診断が難しいのは、多くの自治体で膵臓がん検診が組み込まれておらず、他のがんと比べて検査を受ける人の数が少ないためです。

Q膵臓がんも早期発見が重要なのですね。

A

【関野先生】早期発見をしないと厳しいというのが現状です。発見が遅れると手術をすることが難しくなるため、長生きのためには早期発見しかないというのが他のがんとの違いです。治療法は日進月歩で、新しい標準治療では膵臓がんと診断された人に対して、術前の抗がん剤治療、手術、術後の抗がん剤治療の三段階で進めることで、膵臓がんの術後再発に対するカバーを図っていきます。膵臓がんは遺伝的要素が強く、特に親兄弟に膵臓がんの人がいるとリスクは高くなるため注意が必要です。さらに膵臓はインスリンを作っていることから糖尿病とも密接に関わっていて、糖尿病はがんのリスクであると同時に膵臓がんの症状としての要素もあります。

Q横浜労災病院ならではの特徴について教えてください。

A

早期診断の推進のために地域との連携に力ぞ注ぐ永瀬先生

【永瀬先生】早期診断のためには症状がない時期に病気を見つけなくてはなりません。そこで当院では2019年4月から「膵臓がん早期発見プロジェクト」を始動し、地域のクリニックや検診センターの先生に膵臓がんのリスクを知っていただき、かかりつけの患者さんに膵臓がんを疑うサインがあれば、当院で精密検査を受けていただくというシステムを構築しました。地域の膵臓がんの早期診断に努めています。横浜市では、横浜市立大学附属病院をはじめさまざまな病院でこのプロジェクトが広がっており、行政も介入し、横浜市全体で膵臓がんに対する意識を上げて取り組んでいます。

患者さんへのメッセージ

永瀬 肇 副院長

1986年横浜市立大学医学部卒業、1990年3月同大学院医学研究科卒業。横浜市立大学医学部病院第三内科に入局後、藤沢市民病院消化器内科、ルイジアナ州立大学付属ペニントン生物医学研究所留学を経て、横浜市立大学医学部附属浦舟病院中央内視鏡室助手、横浜市立大学医学部第三内科学教室講師を務める。2002年横浜労災病院消化器内科部長に。2017年より現職。

関野 雄典 消化器内科部長

2005年山梨医科大学医学部医学科(現・山梨大学医学部)卒業。2013年横浜市立大学大学院医学研究科博士課程卒業。横浜市立大学附属市民医療センターで研修後、都立広尾病院、NTT関東病院で勤務、横浜市立大学附属病院消化器内科指導診療医、助教を経て、2015年横浜労災病院消化器内科医長、2016年同副部長を歴任し、2021年より現職。専門は消化器全般、胆膵系内視鏡診断・治療、超音波内視鏡診断・治療。

内山 詩織 内視鏡部長

2007年横浜市立大学医学部卒業。2016年横浜市立大学大学院医学研究科博士課程卒業。横浜労災病院、横浜市立大学附属病院での勤務を経て、2016年に再び横浜労災病院へ。2023年より現職。専門は消化器全般、消化管治療内視鏡。内視鏡部長に就任以来、地域のクリニックに直接、足を運ぶことで顔の見える関係性づくりに努め、より円滑な地域連携を図る。

【永瀬先生・関野先生・内山先生】胃がんや大腸がんは内視鏡検査で早期発見ができ、発見できれば治療もできるのでぜひ検査を受けてください。膵臓がんについては、家族歴がなくても、なんとなくおなかが痛い、食欲がない、すぐにおなかがいっぱいになるといった症状があるのにエコー検査や胃カメラで異常がないという場合は、膵臓に何かあるかもしれません。所見があったときは受診を先延ばしにせず、当院または膵臓の検査や治療を得意とする病院を受診してください。膵臓の早期診断の鍵になるEUS(超音波内視鏡)は、医師によって診断力に大きく差が出るため、検査をたくさん行っている病院を選んでいただければと思います。

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