医療法人ユーカリ さがみ林間病院
(神奈川県 相模原市南区)
清水 直史 院長
最終更新日:2024/07/01
医療の質や診療体制を維持しながら再始動
小田急線東林間駅近くにある「さがみ林間病院」。前身は、東芝健康保険組合が設立した「東芝林間病院」で、公的病院として相模原市の地域医療を支えてきた病院だ。東芝林間病院から院長を務めてきた清水直史院長は、時代の変化に合わせながら地域の医療ニーズに応える病院機能を維持し、また病院職員の雇用を守るために、経営母体の移行に踏み切ったという。「さがみ林間病院」としてのスタート後も診療内容や診療体制は変わらず、急性期病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟を備えて、急性期から亜急性期までの医療に対応する同院。予防医療から、在宅医療、社会復帰までを引き受け、地域に包括的な医療サービスを提供する役割を果たしている。清水院長は「高齢者医療や子育て世代の医療は、当院の得意分野。強みを生かしてより頼りにされる病院をめざしたい」と語る。リニア新幹線の開通も控え、高齢者だけでなく、子育て世代の人口増加も見込まれる相模原市にあって、市民の健康を支える病院となる同院について、清水院長に取材した。(取材日2023年7月10日)
まずこちらの病院の成り立ちについて教えてください。
当院は、急性期医療を中心に予防医療から、在宅医療、社会復帰までを引き受け、地域に包括的な医療サービスを提供する病院です。前身は、1953年に東芝健康保険組合が設立した公的病院「東芝林間病院」で、2023年5月に現法人に事業継承して「さがみ林間病院」となりました。70年にわたって地域を支えてきた病院機能はそのまま維持し、医師や看護師、コメディカルをはじめとする職員、診療内容や診療体制など大きな変更はありません。急性期病棟129床、地域包括ケア病棟30床、回復期リハビリテーション40床を備えて、急性期から亜急性期までの医療に対応しています。外来部門には21の診療科があり、駅からの至近性を生かして日常的な傷病の治療から、高性能な医療検査機器を利用した精密検査や、専門性の高い治療にも対応しています。総合検診、内視鏡、透析などの専門部門を設置して、さらに訪問看護ステーションも併設しています。
特色ある診療や強みについて教えてください。
得意分野としては、心臓血管カテーテル、レーザー内視鏡も導入する消化器内視鏡治療、糖尿病、腎臓病、人工透析、神経難病疾患、腹腔鏡手術、白内障手術、口腔外科悪性腫瘍、尿路結石、前立腺疾患、スポーツ外傷、膝関節鏡手術、人工関節置換術などがあげられます。多くの診療科に大学病院の医局との協力体制があり、先進の知見や診療技術も積極的に導入しており、この規模の病院としてはレベルの高い医療を提供できていると考えています。リハビリテーションに注力してきたのも特徴で、回復期リハビリテーション病棟も市内でも早くから導入して、脳血管疾患や、運動器のリハビリテーションを提供しています。また地域包括ケア病床では、準急性期治療やレスパイト入院にも対応しています。医師だけでなく看護部も教育に積極的で、糖尿病、感染対策などに高い専門性を持つ看護師が活躍してくれています。
地域で果たしている役割についても聞かせてください。
当院は急性期病棟と回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟を備えたケアミックスの病院です。急性期では得意分野に加え、相模原市の二次救急協力医療機関としての積極的な受入れや、感染対策向上加算1の病院として新興感染症対応を行っています。そして急性期治療後のリハビリ、在宅復帰の支援、介護サービスの相談など幅広く対応しています。患者さんやご家族に寄り添いきめ細かくトータルな医療やケアを提供し、安心して地域に帰っていただけることをめざしています。また訪問看護や訪問リハビリにも対応しており、退院後もシームレスに医療やケアを提供しています。大学病院などとの病病連携、開業医の先生方との病診連携はもとより、相模原市には高齢者施設が多いことから、介護福祉関係とも連携体制を整えてきました。今後は地域の開業医や専門職の皆さんとの顔の見える連携づくりにも力を入れ、市民講演会や、各種イベントも開催していきます。
今後に向けて、どのような展望がありますか。
当院は、駅にも近く、歴史も長いことから、公的病院として地域に親しまれてきた病院です。医療安全と感染対策を重視しながら、職員同士、地域医療への思いを共有して、よくコミュニケーションをとり、地域での信頼や実績を積み重ねていきたいと考えています。地域医療を支える病院として存続していくためには、経営面での安定も重要ですから、現法人の経営支援チームと経営改善に取り組んでおり、救急搬送の受け入れを増やすなどの実践を始めています。当院は、地域包括ケア病棟や在宅医療での経験も豊富で高齢者医療に強みがあり、また多くの診療科を設置して現役世代のニーズの高い診療にも積極的に取り組んできました。相模原市は、リニア新幹線の開通に伴い住宅開発も進み、高齢者もファミリー層も増えていくことが予想されています。当院の強みを生かし、地域の医療ニーズに応えていけるように、より充実した体制にしていきたいと考えています。
地域の皆さんへのメッセージをお願いします。
地域に根差した病院として、診療科と診療科の谷間、医療福祉サービスの谷間などで困られている、いわばグレーゾーンの方も積極的に受け入れ、断らない医療を実践していきたいと考えています。「何科にかかってよいかわからない」「どこに相談したらよいかわからない」というような場合も気軽にご相談ください。また最近は、高齢になっても今までと同じように生活や趣味を続けたいという方が増えていますから、体や運動の機能を維持して生活の質を高め、元気に地域で暮らしていただけるような治療やリハビリテーションに力を入れていきたいと考えています。当院は公的病院の歴史が長いため、この規模の病院にしては診療体制が整い、職員の意識も高く、質の高い医療が提供できているのも特徴だと思います。専門的な医療から在宅医療まで手がけ、トータルに地域医療が学べる環境ですから、若い先生方の研鑽の場としても選んでいただきたいと願っています。
清水 直史 院長
1981年新潟大学医学部卒業後、東京大学医学部整形外科に入局。東京警察病院や都立台東病院、JR東京総合病院など関連病院勤務を経て東芝林間病院に入職。2016年院長に就任。2023年5月より現職。専門は整形外科・膝関節。趣味は、スキーやゴルフ、家族との食べ歩き。大学時代は自らワンダーフォーゲル部を立ち上げたとのこと。