医療法人セントポーリア 操レディスホスピタル
(岐阜県 岐阜市)
高野 恭平 病院長
最終更新日:2024/05/31
24時間対応の無痛分娩や不妊治療に注力
岐阜市中心部から長良川を渡ったのどかな住宅地に「操レディスホスピタル」は建つ。約半世紀前から「操(みさお)さん」と親しまれてきた病院で、高野恭平病院長は3代目。「先々代、先代からの歴史を大切に引き継ぎたい」と控えめに話す穏やかな印象だが、地域医療や、母子の健康を守ることに対する情熱にあふれた頼れるドクターだ。自然分娩と帝王切開に加え、ニーズの高まりに応えて2022年から無痛分娩を導入。自然分娩同様に24時間対応する体制を整えた。「無痛分娩は痛みの軽減が期待できるので、立ち会いの上のお子さんのことも気にかけつつ、家族で喜びの瞬間を迎えやすくなることが見込めるのもいいですね」とにっこり。一方、同院では従来、不妊治療にも積極的に取り組んでおり、その選択肢が豊富にあることも強み。生殖医療専門の医師が2人在籍し、新鋭の設備もそろい、複数の先進医療が行える医療機関となっている。不妊の原因は多種多様で、最初のカウンセリングから丁寧に相談に乗る。婦人科疾患診療と不妊治療、そして妊娠、出産。女性の人生に寄り添う同院の現在や今後について詳しく聞いた。(取材日2024年3月22日)
病院の成り立ちや特徴について教えてください。
当院は先代院長である操良先生のお父さまが約50年前に開院されました。操先生と奥さまの操暁子先生が後を継がれ、私が3代目となります。建物は2016年に新築されたものです。診療対象は婦人科疾患、妊娠から分娩、不妊治療など。現在、常勤・非常勤合わせて10人の医師が在籍しており、うち産婦人科が8人、男性不妊治療専門の泌尿器科の医師が1人、小児科の医師が1人という構成です。365日24時間、緊急対応もしています。不妊治療については、岐阜大学で不妊治療をリードされてきた操先生と、経験豊富な松原寛和先生の2人の専門家がおり、先進医療を含む治療法の選択肢が多くあることが特徴です。助産師、看護師をはじめスタッフが皆、仲が良いことも自慢の一つで、院内は和気あいあいとした雰囲気。専属のシェフがおり、おいしいご飯や、産後のエステを提供していることも特徴ですね。退院後も育児相談などお母さんとのつながりがあります。
不妊症についてはどのような治療が受けられますか?
治療は原則、タイミング療法、人工授精法、体外受精・顕微鏡受精の生殖補助療法といったステップアップ治療になります。検査は、クラミジア検査、経膣超音波検査、精液検査、子宮卵管造影検査、ホルモンの検査など多種あり、当院の大きな強みとしては、卵子、精子培養技術の専門性の高さ、先進機器の充実が挙げられます。先進医療として、タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養、ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術、子宮内細菌叢検査、子宮内膜刺激術、子宮内膜受容能検査、二段階胚移植術などが実施可能で、県内でもこれだけ先進医療が行える医療機関は少ないでしょう。こうした方法は、妊娠がなかなか難しい方々にとっても着床率、妊娠率を上げるための選択肢が増えることにつながります。また月1回男性不妊の外来があり、生殖医療と泌尿器科が専門の医師による精索静脈瘤手術などが可能です。不育症の診断、治療も行っています。
自然分娩、無痛分娩、帝王切開、すべて対応されていますね。
はい。新生児蘇生に関して専門的に研鑽を積んだスタッフを配備し、安全性に配慮した体制を整えていることはもちろん、岐阜県総合医療センターや大学病院と密に連携しており、万が一の際の搬送システムも用意しています。無痛分娩については、出産日を決める分娩も自然な陣痛を待つ分娩もいずれも対応します。無痛分娩のメリットは痛みの緩和が期待できることのほか、ご家族が立ち会う際上のお子さんに気配りするなどの余裕もできて、みんなで赤ちゃん誕生の喜びを味わえることが見込めるのも大きいですね。ただ、麻酔を使用しますのでリスクはゼロではありません。当院では無痛分娩について、また不妊治療についても、教室開催とSNSでのライブ配信を行っており、どなたに対しても満遍なく情報提供しています。また、胎児の病気のリスクや異常がないかの精密な検査をし、安心につなげる取り組みも行っていますので、何でも気軽にご質問ください。
医師をめざされたきっかけやご経歴について教えてください。
きっかけは、高校生の頃、開発途上国で活動する産婦人科医師の記事を読んで、衝撃を受けたことでしょうか。それ以来、人の助けになる医師になりたいと考えるようになりました。中でも医療資源の少ない国における病気の予防や健康、母子保健に興味を持ち、岐阜大学卒業後、ロンドンの大学院で、死産をどう防ぐかをテーマに研究しました。また、開発途上国への医療的な支援に関わる仕事にも従事しました。やりがいはありましたが、実際にお産に携わりたいとの思いもあって、帰国し、東京の病院に勤務。そのうち地域コミュニティーの中で産科医療を実践したいと考え始めて開業を模索していた頃、操先生とのご縁があり、当院に入職した次第です。公衆衛生学は体や心の健康を保つための学門であり、病院としてそうした知識を情報発信していくことは重要だと思っています。
今後の展望をお聞かせください。
何よりも先々代から50年もの間、地域の方々と築いてきた信頼関係を大切に、当院の精神を引き継ぎ、真摯に患者さんに向き合っていきたいと思います。特に不妊治療は、操先生が専門的に取り組んできた分野です。2023年7月からは名古屋市立大学病院や一宮市の病院での治療経験が豊富な松原寛和先生が来られましたので、より難しい症例にも対応できるよう体制を拡充させていきたいです。この地域で、生殖医療の専門家が2人いる医療機関は少ないでしょうし、妊娠についてお悩みの方はぜひご相談していただければと思います。そして当院は、カウンセリングを大事にしていることも特徴です。初診の前には、培養士あるいは専門の知識を持った看護師がお一人お一人に丁寧にお話を伺い、ご希望をくみ取ります。また、妊娠、出産についてはお一人お一人のバースプランを尊重し、喜びのある、良いお産となるよう全力でお手伝いさせていただきます。
高野 恭平 病院長
2010年岐阜大学医学部卒業。イギリスの大学院にて主に開発途上国における公衆衛生学と母子保健についての研究に従事。国立国際医療研究センター病院、岩手県立磐井病院、東京衛生病院などに勤務。医療分野の開発に関するアドバイザーを務めた経験も。2022年操レディスホスピタルへ。2023年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とはタイムラプス撮像法による受精卵・胚培養/3万3000円、ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術/2万2000円、子宮内膜刺激術(SEET法)/2万7500円、子宮内膜受容能検査(ERA)/13万6950円、二段階胚移植術/12万1000円