兵庫県立尼崎総合医療センター
(兵庫県 尼崎市)
平家 俊男 院長
最終更新日:2022/09/12
高度急性期と専門的医療を担う中核病院
尼崎市東難波町にある「兵庫県立尼崎総合医療センター」は、尼崎市を中心とした阪神医療圏と大阪市西部地域の医療を支える地域の中核病院だ。高度急性期医療・専門的医療・先端医療・政策医療の部分を担うことをめざす同院は、地域の医療・介護全体との連携・協調を行いながら、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、救命救急センター、総合周産期母子医療センター、災害拠点病院としての役目も担う。また、新型コロナウイルス感染拡大時には、猛威を振るう感染症から地域住民の命を守るべく、積極的に重症患者を受け入れ奮闘した。「病気に悩み、苦しむ人、医療を必要とする人に、必要な医療を届けることがわれわれの役目。どんな状況下でも必要な人に救急医療、専門的医療を届けられる体制を整えるべく奮闘しています」と話してくれたのは、2018年に就任した平家俊男院長。その瞳は地域医療の未来とともに、地域住民の心もしっかりと見つめる。今回は、地域の頼れる医療機関として成長を続ける同院の特徴や思いについて、平家院長に詳しく話を聞かせてもらった。(取材日2022年8月1日)
初めに、こちらの病院の成り立ちについてお聞かせください。
当院は、阪神南圏域の中核病院として専門的医療を中心とした医療を提供してきた「尼崎病院」と、阪神地域における周産期医療と小児救急医療の中核的な役割を担ってきた「塚口病院」が統合再編成したことで、2015年に誕生しました。この統合は阪神地域全体の懸念となっている医療課題の解決をめざしたもので、高齢化していく社会の中で必要とされる救急医療、専門的医療に対応する病院としての役割を果たすべく行われたものです。加えて、建物の老朽化・狭隘化といった課題解決のためにも新病院を建設し、730の病床に加え18の手術室など、設備的にも大きくパワーアップしました。これまで2つの病院が持っていた診療機能の特徴はそのままに、さらに発展したかたちで、阪神地域の総合的な基幹病院として地域の皆さまの安全と安心の確保に貢献するべく奮闘しています。
病院の特徴を教えてください。
高度な救急医療・周産期医療・専門医療機能を存分に発揮するための環境を備えていることに尽きるのではないかと思います。現在、当院は新型コロナウイルス感染症重症者の受け入れを積極的に行っておりますが、病気は新型コロナウイルス感染症だけではありません。今回のように感染症がはやっているときでも、さまざまな病気で医療を必要とする方がいなくなるわけではありません。どのような状況においても「必要な人に必要な医療を届ける」ために、緊急時でも質の高い高度医療を提供できる医療機関をめざして歩みを進めています。また、病院を訪れる患者さんやご家族、そして働く人にとっても心地良い病院であるように、マネジメント・サービスの向上をめざしているところも特徴の一つです。今後は「患者サポートセンター」の発足を準備しており、より快適な病院へと成長していけるのではないかと考えています。
各種がんに対する診療体制が充実しているそうですね。
がん診療にはさまざまな領域がありますが、当院では肺がん、消化器がん、乳がん、頭頸部がん、成人・子どもを含めた血液がんに対して、専門的な治療を行っています。また、手術から化学療法、放射線治療、緩和ケアまで、そのすべてをワントップで対応する体制を整えているのも当院の特徴です。また子どもたちが治療をしながら学ぶことができるよう院内学級も整備するとともに、働きながら治療を受ける成人の患者さまへのサポートとして30床の外来化学療法専用ベッドも設置しております。さらに、2023年1月にはがん診療部門のアップグレードを予定していますので、今後ますますがん治療を日常のものにしていただけるようなサポート体制が整備され、地域や介護との連携も含めより適切で迅速な対応が可能になっていくことと思います。
循環器内科では、先進のカテーテル治療に取り組んでいるとか。
当院の循環器内科では豊富なマンパワーと、他職種に及ぶコメディカルスタッフを交えたチームで、患者さまに応じた丁寧な医療を提供しております。また、小児循環器内科を専門とする医師も多数在籍していますので、先天性の心疾患を抱えたお子さんの誕生から成長に合わせた治療対応が可能です。本人にとってもご両親にとっても、気心の知れた主治医がいることは大きな安心につながるはずだと思います。高水準の医療の提供することはもちろんですが、それだけではなく患者さまの心の部分にも寄り添うことも忘れてはいけません。これは循環器内科に限らず、すべての診療科にいえることですが、流れ作業ではなく、お一人お一人に合わせた懇切丁寧な対応で、地域の皆さまに安心と信頼を感じていただけるように引き続き努力してまいります。
最後に、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?
われわれがめざすべき4つの柱「高度専門・救急医療」「地域との連携」「安心・信頼いただけるマネジメント・サービス」「職員にとって働きたい・働きやすい病院」は変わりません。しかし、時代の変化や技術の進歩をしっかりと見つめ、より一層社会と地域の皆さまにとっても、働いている私たちにとっても、満足できる病院をめざし「治療を受けて良かった」「働いて良かった」と思える病院へとステップアップしていきたいと思います。また、技術の進歩は目覚ましく、私が医師になった頃では考えられないようなさまざまな技術が登場しています。これらの技術をどのように生かしていくのか。テクニカルな面だけでなく、心の面でも大切なものを見逃さないように心がけ、地域の中で確かな役割を果たしていく所存です。
平家 俊男 院長
1979年京都大学医学部卒業後、1986年に同大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学医学部附属病院小児科助手を務め、2010年に同大学大学院医学研究科発達小児科学教授に就任。2014年に同大学医学部附属病院副院長を経て2018年兵庫県立尼崎総合医療センター院長に就任。小児を含めた高度急性期医療と専門的な医療に力を入れると同時に、地域への愛ある目線で地域の信頼を得られる病院づくりにまい進している。