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埼玉県立がんセンター

(埼玉県 北足立郡伊奈町)

横田 治重 病院長

最終更新日:2020/08/21

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患者支援に力を入れる県がん治療の拠点病院

「埼玉県立がんセンター」は、「がんで苦しむ人をなくす」ことを使命として1975年に開院した、埼玉県におけるがん治療の中心的役割を担う病院だ。2013年の移転リニューアルで503床に増床。精密な画像診断を可能にするPET-CTや内視鏡手術支援ロボットなども導入し、希少がんから一般的なものまで幅広いがんに対応して治療を行っている。同院の特徴の一つは、手術、放射線、化学療法による治療に加え、初診の時点など早い段階から緩和ケアを積極的に行うこと。痛みなどの症状をコントロールすることが生活の質を上げることにつながり、より良い状態でのがん治療に臨むことができる。また積極的治療が行えなくなった時にも、スムーズに緩和中心の医療へと移行することができる。また、患者サポートの充実にも力を入れており、退院後の生活を見据えた就労支援や生活支援も積極的に展開。高齢患者の増加に対応するため、近年は合併症を持つ患者の治療体制強化にも力を尽くしている。 地域連携・相談支援センターのセンター長でもある横田治重病院長に、同院のさまざまな取り組みについて聞いた。(取材日2020年6月30日)

埼玉県のがん治療の中核を担っておられるのですね。

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主な診療エリアとしては県中央~北部が中心ですが、国が指定する都道府県がん診療連携拠点病院ですし、埼玉県のがん治療拠点という役割を担っているとは思います。埼玉県立小児医療センターの領域である小児がん以外は、どんな悪性腫瘍もほぼカバーしていますね。がん治療は通常、手術、放射線治療、化学療法が三本柱ですが、当センターではこれに加え、「4番目の治療としての緩和ケア」を積極的に行っています。早くから痛みをコントロールしたり、呼吸困難に薬で対処したりすることで、生活がしやすくなりますし、体力を温存することも期待できます。また、初回治療時から緩和ケアを行い、「まだがんをやっつけてはいないけれど、体調がよくなってきた」と経験しておいてもらうことで、もしがんがうまく治療できなくて、積極的治療法がなくなってきた場合でも、症状緩和に専念して頑張る方向へとスムーズに移っていきやすいと思います。

患者の包括的な支援に力を入れていると聞きました。

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そうですね。常勤のソーシャルワーカー5人、看護師10数人が「地域連携・相談支援センター」を担当し、患者さんの受け入れから治療費や仕事の相談、退院後の地域の施設や訪問介護サービス利用の調整まで、がん治療に関わる包括的な支援を行っています。がん患者さんの3割が職を失ってしまうのが現状といわれますので、仕事と治療の両立をめざした就労支援・退院後の生活支援は特に重視しているところです。毎月3回、院内にハローワークが出張してきての就労相談も行っています。2018年の数字では、すぐに仕事に就きたい人のうち約7割の人は就業が決定しました。また、「がんと暮らしを考える会」というNPO法人と共同での社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーへの無料個人相談も比較的早くから行っており、退院後の生活設計をサポートしています。

診療方針や診療の特徴について教えてください。

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昔からよく言われていることですが、病気だけを診るのではなく患者さんの人生を診る、患者さんの人生を想像する重要性は、折にふれてスタッフに伝えています。当センターの理念は「唯惜命~ただ命を惜しむ~」。この「命」は、ただの生物学的な命に止まらず、人生や生活まで含んだ「Life」を意味すると捉えて、患者さんの生活や人生を大事にする医療を診療の柱としています。そして、これはどの病院でも同じだと思いますが、よい医療を提供するためには、多職種・複数のスタッフがうまく協同してチーム医療を行えることが大切です。その点、当センターは、病棟医療の中核を担う看護師がベテラン、中堅、若手で協同しながら病棟チームとしてうまく動いているところが強みでしょうか。またがん専門病院として、がん患者さんがどういうところに困るのか、どう反応しがちなのかという経験を豊富に持っているところも、当センターならではの特徴かと思います。

臨床だけでなく、研究も行っているのですね。

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ええ。当センターは「臨床腫瘍研究所」という組織も抱えていて、研究専門のスタッフが基礎から臨床との関わりが深いものまで、さまざまな研究を行っています。その結果は、治療にすぐに生かせるものばかりではありませんが、将来のがん医療に役立つような知識・知見を蓄えられること、必要に応じて研究所の先生たちに助言をもらえることなどは、研究所がある強みでしょうか。がんゲノム医療に関しても、がんゲノム医療拠点病院となっており、一部の分野では遺伝子パネル検査を取り入れています。がんゲノム医療は、今のところはまだ従来の標準治療と肩を並べるには至っていませんが、検査を受けてくれる患者さんのデータが蓄積されていくことで、将来はさらに活用できる可能性があるものです。また、臓器別で薬を決めるのではなく、特定の遺伝子異常があれば特定の薬を使うという治療法自体は、すでに一部標準治療の中に取り入れられています。

最後に、今後の展望と患者さんへのメッセージをお願いします。

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今後力を入れていきたいのは、一つは、合併症のある患者さんをしっかり診られる体制を整えることです。高齢の患者さんが増えている今、がん以外の病気を抱えている人の割合も上昇しているので、早急に対応するのが今の一番の課題です。2020年度から来てもらった循環器内科の先生を中心に、体制整備を進めています。またもう一つ、 現在の地域連携・相談支援センターに、手術前の相談などを担当している周術期センターも統合し、入院から手術前後の管理、退院、社会復帰まですべてのサポートを行う、総合的な患者サポートセンターをつくりたいです。患者さんへのメッセージとしては、がんの治療はなかなか難しい時もあり、新しい治療を求めてしまいがちですが、今までのがん患者さんと医療者のがんとの格闘の中で積み上げられてきたものが標準治療であることを理解し、私たちとともにがんと闘い、がんとともにに生きる道を探っていただけたらうれしいです。

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横田 治重 病院長

1982年東京大学医学部卒業。専門は、婦人科悪性腫瘍の診断と治療及び婦人科手術学で、日本産科婦人科学会認定の産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会認定の婦人科腫瘍専門医。埼玉県立がんセンター副病院長を経て、2020年4月に病院長就任。副病院長時代より地域連携・相談支援センター長も兼任しており、入退院時から手術前の生活、社会復帰まで一貫してサポートできる、総合的な患者支援体制の確立に力を入れる。

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