医療法人社団永生会 みなみ野病院
(東京都 八王子市)
田中 譲 院長
最終更新日:2022/05/02


地域に根差したハートフルな病院をめざす
八王子みなみ野駅から病院の無料シャトルバスで約5分。緑あふれる丘の上に建つ美術館のような建物が「みなみ野病院」だ。回復期リハビリテーション病棟と医療療養病棟、緩和ケア病棟を備え、慢性期の医療やがんの終末期の緩和ケア、回復期の入院と通所のリハビリテーションの3本柱で、医療と介護を通じて地域を支えることをめざしている。田中譲院長は、これまで同院の副院長や同医療法人のクリニック院長などを務め、訪問診療や緩和ケアなどに携わってきた地域医療のエキスパート。これまでの経験や知識を生かしながら、「地域に根差したハートフルな病院をつくりたい」と話す田中院長に、病院の取り組みや展望について語ってもらった。(取材日2022年1月14日)
病院の概要を紹介していただけますか?

当院は、2018年に地域の回復期と慢性期の医療を担う病院として開院しました。南多摩医療圏は、リハビリテーションや長期療養の病院はある程度充足していましたが、八王子市東部には入院施設がなく、また八王子市内では緩和ケアを持つ病院はありませんでした。そこで、地域の皆さんに必要な医療がさらに充実するものとなるよう、まずは開院初期から回復期リハビリテーション病棟と医療療養病棟を開設、2019年に緩和ケア病棟の受け入れを開始しました。また、外来機能を持たない当院の地域とのつながりとして、通所リハビリテーションも開設しました。当院はこの地域で求められていることを常に考えながら、中長期的な医療やリハビリテーション、緩和医療の提供を通じて、患者さんやその家族が住み慣れた地域で安心して生活できるよう支援すること、そして家族のように寄り添う医療を職員一同で実践し、地域に根差したハートフルな病院をめざしています。
力を入れていることは何ですか?

緩和ケア医療です。私ども永生会での慢性期医療やリハビリテーションの歴史は長く、その経験をもとに医療を展開しておりますが、緩和ケア医療は初めての取り組みです。がんになっても最後まで人間らしく、自分らしく生きていくための緩和ケアは非常に大切です。例えば、このコロナ禍では院内感染の防止のために、面会制限をする病院は多く、ご家族との憩いの時間である面会を実施することは非常に難しい状況です。しかしそれは患者さん本人やご家族からすれば悲しい出来事にほかなりません。そんな思いもあり、当院では緩和ケア病棟に関しては、感染対策を徹底の上、一定のルールを決めて面会を継続しています。また、僧侶の資格を有する看護師に、精神的な支えになるよう定期的にケアをお願いしています。何より療養生活が患者さんにとって穏やかであり、苦痛の緩和となるよう嗜好を重視し、患者さんの望むことをできる限り実現させてあげたいと考えています。
ほかに特徴はありますか?

永生会の強みでもあるリハビリテーションです。患者さん一人ひとりの退院後を想定したオーダーメイドのリハビリテーションを行っていますが、当院のリハビリテーションスタッフはおよそ50人在籍しており、設備も充実しています。患者さんへ提供する医療サービスも、さらなるレベルアップを図りたいと考えています。また、療養病棟でも当院独自の特色を持っていると考えています。通常、療養病棟は急性期の病院から転院してきた方の長期療養や、中心静脈や胃ろうによって栄養を摂取している方などを対象に医療を提供しますが、患者さんを診ているうちに治療方針によりご自宅などにお戻りになれる患者さんが多いことに気づきました。八王子東部は入院施設がなく、救急病院ではなくとも一時的な治療を提供でき、ご自宅へお帰りになる「時々入院、ほぼ在宅」という地域包括ケアシステムの一翼を担える病院になること。それが当院の方針であり、強みだと思います。
今後、力を入れていきたいことはありますか?

私はできるだけ患者さんを家で過ごさせてあげたいなと思っています。私は義理の父を病院ではなく家で看取っているんです。義父は大工でしたので、自分で作った庭を見ながら亡くなりました。送り出した家族としても満足しています。ですから、当院でも在宅医療との連携を強めて行って、例えば当院から医師を出して、訪問看護ステーションとも連携して週に何回か在宅の患者さんを診て、具合が悪くなってきたら当院に入院するというようなことができれば、非常に良いなと思っています。地域の開業の先生も訪問診療を専門にしている人がたくさんいますから、ご自宅で過ごすことが可能な患者さんはできるだけ訪問診療の先生方にお願いして、患者さんには住み慣れた家で過ごしてもらい、必要なときは当院がサポートする。今後の目標としてはそういうところにも力を入れていきたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は、医師をはじめスタッフの人数が急性期病院に比べれば多くありません。その分、和気あいあいと気心の知れた関係をつくり、チーム医療で取り組んでいくことを大切にしています。また当院は、外来診療をしておらず、まだ開院して日が浅く、地域の開業医の先生方の中には、どんな医師がいるのだろう、どういう流れで紹介をすれば良いのだろうと思っている方もいらっしゃるかもしれません。お気軽に相談をしていただきたいですし、できる限りタイムリーかつスムーズなお受け入れをしていく考えです。また地域の皆さまにとって、親御さんやご家族などでリハビリテーションや長期的な入院、緩和医療のことなどでお悩みの方もおられるかもしれません。当院では医療相談を行っていますので、医療全般についてお困りのときは、お電話でも構いませんのでぜひご連絡ください。「寄り添う医療」を職員一同実践しサポートさせていただきます。

田中 譲 院長
日本大学卒業。1985年東京女子医科大学消化器外科学教室に入局。同大学講師、城東社会保険病院(現・JCHO東京城東病院)放射線科部長兼外科部長を経て2004年より医療法人社団永生会に勤務。南多摩病院副院長、みなみ野病院副院長兼診療部長、クリニックグリーングラス院長などを経て2020年より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。医学博士。